お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は、徳富わか子さん(仮名・37歳  建設会社勤務)からの質問です。

「37歳、既婚の会社員です。2年前、35年ローンでマンションを購入しました。ローンを組んだのは夫です。

ネットなどを見ると繰り上げ返済したほうが得、逆に繰り上げしないで長く借りたほうが得とか、変えないほうがいいとか、いろいろな情報がでてきます。実際のところはどうなのでしょうか。

私は、手持ちのお金があったほうがいいと思うので、繰り上げ返済せず、少しずつ返したほうがいいと思うのですが、夫はローンを抱えている状況から一刻も早く抜けたいと言って、ボーナスなども返済にあてているようです。

そこで質問です。すでにローンを組んでいる状況のなかで、どうするのが金銭的に得ですか?」

とくに大きな買い物の場合、利子が大きくなります。「手の届く範囲」で購入したつもりが、利子分を足したら莫大でびっくり!ということもあります。そうなると、できるだけ「払う額をコンパクトにしたい」と考えるもの。では、本当に繰り上げ返済したら、得になるんでしょうか。森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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住宅ローンの利息ってどのくらい?

現在、多くの住宅ローンの返済は「元利均等返済方式」を採用しています。これは、返済期間中ずっと一定額を返済していく方法です。この返済額は、元金部分と利息部分の合計です。

様々なタイプの金利がありますが、長期のローンでは、どれくらいの利息になるのでしょうか。

たとえば、3000万円を35年固定金利2%で借りたとします。ざっくりとですが、毎月の返済額は約10万円で35年間420か月返済していくことになります。実際に返済する金額の合計は、4200万円弱です。つまり単純計算で、借入額と返済額合計の差額1200万円弱が、この借入の利息部分です。3000万円を借りているという実感しかなくても、実際に支払うのは4200万円ということになります。

どうでしょうか?案外大きいな、と感じるでしょうか?  

「利息がもったいないから繰り上げ返済」は正解?

利息負担を「もったいない」と感じる人が注目するのが、繰り上げ返済です。相談者さんのご主人もそのようですね。

繰り上げ返済とは、ローンの元金返済分を前倒して(繰り上げて)返済していくこと。前倒しして元金を減らすことで、その分、利息を減らすことができる効果があります。

確かに、利息は小さければ小さいほどいいでしょう。一方で、現在すでにローンを組んでいる相談者さんご家族にとっては、考えるべきは利息負担だけではありません。

現在の手持ちと支出額はどれくらい?

相談者さんも手持ちのお金があった方がいいと感じているようですが、その通りです。生活資金などに必要な現金や預金まで全てを繰り上げ返済してしまうのは、高いリスクになります。なぜなら、急な出費に対応できなくなることもありうるからです。病気やケガでお金が必要になる可能性や、リストラやお勤めの会社が倒産してしまうことだってあるかもしれません。

もちろん人それぞれ状況は異なります。しかし、あまり必要性を感じない場合で生活費半年分、保守的に考えるのであれば、生活費1年分程度を現金、もしくは預金として取っておくべきだと考えます。

相談者さんも、ご家族の支出やリスクに対する姿勢を振り返ってみて下さい。

金利と住宅ローン控除を考慮すべし

潤沢な手持ちがある場合に、どれくらい繰り上げ返済をするのがいいのかについては、金利と住宅ローン控除を合わせて考える必要があります。

金利はローンの利息計算のレートです。金利が高ければ高いほど、利息負担が大きくなります。

しかし、繰り上げ返済するかどうかの判断要素は金利だけではありません。具体的な繰り上げ返済の検討には、ご自身の利用できる住宅ローン控除について、しっかり確認する必要があります。

住宅ローン控除とは、一定の要件を満たす住宅を取得するために住宅ローン等を利用した場合、税金面で優遇を受けられるという制度です。簡単に言えば、10年間にわたり年末のローン残高の1%が所得税から控除されるという仕組みです。

ここで、住宅ローン控除1%という数字がポイントになります。ざっくり言えば、1%未満の金利で借りる事ができていれば、利息負担よりも減税の効果の方が大きくなるのです。

ローンを組むことで税金が安くなるメリットと、それにより増えるコストとを比較してみましょう。

この住宅ローン控除には住宅の種類などにより異なる上限があります。たとえば、長期優良住宅・低炭素住宅なら50万円まで、一般住宅なら40万円、個人から中古住宅を購入した場合等には20万円です。

言い換えれば、住宅ローンを最大限利用することを考えた場合には、長期優良住宅や低炭素住宅では5000万、一般で4000万円、個人からの取得では2000万円の年末ローン残高が必要になります。

まず、これらの残高を超える部分の繰り上げ返済を検討していくのが原則でしょう。

住宅ローン控除の大事なチェックポイントとは

一方で、住宅ローン控除を受ける方の所得や納税額にも注意が必要です。住宅ローン控除は「納めるべき税金が安くなる制度」です。そのため、所得が低いなどの理由で税負担がない方は、控除を受けることができません。

所得税から控除しきれなかった場合には、住民税から控除されますが、そこにも上限があるため注意が必要です。

相談者さんのケースでは、現在住宅ローン控除を利用しているのか、しているのであれば所得税・住民税合わせて、どの程度の控除を受けているのか現状をしっかり確認してみて下さい。

手持ちのお金があった方がいいという相談者さんの気持ちも、ローンを抱えている状況から一刻も早く抜けたいという旦那様の気持ちも分かります。しかし、感情だけではどこまでも平行線です。

ここはまず、現状生活費がどれくらいかかっているのか、そして手持ちにいくら持っておきたいのかを数字として出してみて、繰り上げ返済に充てることのできる資金があるか確認しましょう。

そして、金利や住宅ローン控除の利用状況をしっかり確認し、具体的にどのくらい繰り上げ返済をするとよいのかを考えてみましょう。

大きな買い物なだけに「損した!」ということにだけはしたくないですよね。



■賢人のまとめ
「利息がもったいないから繰り上げ返済」と安易に考えてしまうと、逆に損をしてしまうことも。住宅ローン控除を利用することで、利息負担よりも、減税の効果の方が大きくなる場合もあります。また、手持ちの現金や預金が十分でなければ、万が一に備えることができません。まず、「今」の現状をきちんと把握し、その上で検討してみてください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。