権力(パワー)と言えばパワハラ、と即連想される今の時代、権力は極めて否定的なイメージで捉えられることが多い。しかし、現実には、権力に対する先入観や偏見、誤解が、ビジネスパーソンの選択肢を狭めたり、ダークサイドに堕ちる行動を生んだりする原因となっている。そしてそのことは当人にも自覚されていないことが多いのだ。
 権力がタブー視されることの多い今の時代、心の底でどう権力を捉えているか、が分かれ目になる。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

権力は「悪いもの」なのか?

 権力(パワー)と言えばパワハラ、と連想される今の時代では、権力は極めて否定的に捉えられることが多くなっています。

 しかし、実は、多くのビジネスパーソンの選択肢を狭めているのが、この「権力」に関するネガティブなとらえ方です。

 一面的に権力をただ「悪いもの」ととらえ、ポジティブな価値や活用方法を知らないと、シニカルな不活動に陥ってしまいます。もし活動するとしても、逆に、「ゴマすり、忖度、権謀術数」などのダークサイドに陥りがちです。もともと政治や権力にまつわることを悪いものとしとしか捉えていないと、そういうダークなことしか思いつかないわけです。

 しかし、権力は、リーダーシップに不可欠な構成要素です。

 権力をポジティブにとらえることができる人だけが、主体的に人を巻き込み、インパクトのあることを、多くの人の力を借りて実行に移すことができます。ポジティブに行使する権力は価値のあるものであり、そうした正しい権力行使をすることができるリーダーが、今求められているのです。

 一方、「権力は悪いもの」と距離を置き、自分の選択肢を勝手に狭めてしまうと、大局観を失ってしまい、小さなソリューションスペースの中で、インパクトの小さなことだけにエネルギーを投入してしまうことにもなりかねません。そういう人はわざわざ選択肢を自ら狭く設定したうえで、仕事をしていると言えます。

 狭い選択肢の中で仕事をしている人は、何事もしょせんは他人事と捉えているため、仕事に没頭しているようでも実はうわの空であったりします。社畜予備軍となりやすいのは、こうして自ら選択肢を狭めている人たちです。

自分が権力をどう捉えているか自覚することが第一歩

 このように、権力を否定的に捉えることで自ら選択肢を狭め、言われたことをきちんとやり、書類や記録を固め、手続きを完璧にすることだけに自分の役割を限定してしまう人たちがいます。

 その反対に、未来の社長になれる人とは、権力のポジティブな価値を認めている人です。

 ソリューションスペースを拡大し、言われたことをやる以上のインパクトを出すには、権力行使についての正しい認識と、能動的な行動への志向が必要になります。

 筆者は、権力の捉え方によって生じる行動様式の違いをタイプ分けしてみました。それが下の「マキャベリ脳診断テスト」です。

マキャベリ脳診断テスト(ジョエル・デルーカによるフレームワークを基に筆者作成)


(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52505)

 横軸の「価値観」とは、権力を本質的に否定的なものと考えているか、あるいはポジティブな可能性のあるものと考えているかということです。

 縦軸の「行動への志向」とは、権力に関わることについて、主体的に決断し行動するか、あるいは受け身になるかということです。

 それではいくつかのタイプについて詳しく見ていきましょう。今回は、9つのタイプのうち、社畜予備軍に相当する3つのタイプについて紹介します。

・「シニカル」タイプ

 一番左下に位置するこのタイプの人は、自分のことを、現実がよく分かっているリアリストだと信じています。

 権力に関連することに対して非常に否定的で、組織内のゴタゴタや混乱から超然と距離を置こうとします。 

 イエスマンが昇進し、見かけだけ業績を上げるように見える人間がちやほやされることには本心では不満を抱いているものの、「それが現実」とある意味、悟りを開くことで自分のプライドを守っているタイプです。悟りを開いているので自分でイニシアティブをとって何か新しいことをやることは意味がない、と感じています。

 このタイプの人は会社ではできるだけ目立たずエネルギーを温存し、趣味や家庭に命をかけていることが多いです。こういう人が増えると、クリエイティブなエネルギーはすべて組織の外の活動に向かうような活力の無い会社になりがちです。

 このタイプの人は、組織内の権力闘争や政治抗争はマイナスな価値しかないと捉え、自分は「そういうダークなことと関わらない」として自分を保っているのです。

・「傍観者」タイプ 

 診断テストの表では一番下の真ん中、シニカルタイプの右側に位置します。完全に受け身だという意味ではシニカルタイプの人と同じですが、対立や混乱はどの組織でも人間の集まりである以上当然のもの、と考えており、必ずしもネガティブに捉えてはいません。

 ゴタゴタは、「しょうがない」と受け入れる一方、自分にとって面白くない事態が起こっても、耐えてやり過ごすことができます。このため、組織で長持ちするタイプです。「まあ、そんなこともあるさ、何事も時の運」ケセラセラというわけで、ストレスも少なく、思い詰めてすぐ辞めたりはしません。

 変化をやり過ごすのは得意で、ストレスに強い一方で、自分から主体的に何かをしようとすることはありません。「自分の仕事だけをきっちりやって、あとは運が悪ければしょうがない」というスタンスです。

 もともと能動的なタイプだったのに、昔、若いときに頑張ろうとして組織の中で理不尽に却下・無視され、それがトラウマとなって、このタイプになっていることもあります。

 エネルギーも積極性もある優秀な人を多く採用する大企業では、もともと優秀な人が組織内での「不成功体験」を積むに従い丸くなり、このタイプの人として歳をとっていくケースをよく見ます。

・「守りの人」タイプ

 診断テストの表ではシニカルタイプの上に位置します。権力に関する事柄について、極めて否定的に捉えているのはシニカルタイプと同じです。

 権力と積極的に関わることは拒否しますが、ゴタゴタの結果がどうなるかは一応気にして予測し、自分の不利にならないように工夫しようとします。この点、完全に超然としているシニカルタイプとは異なります。

 政治的な意向によって左右されるのを嫌がるため、手続きを完璧にし、だれからも文句をつけられないようにすることに精を出します。

 手続きを最重要視し、書類を大量に作り客観性を持たせようとする一方、たくさんのハンコをもらうなど、多くの関係者から合意してもらうことでも、安心感を得ようとします。

 長年、安定的な業績を上げてきた歴史ある大企業に多いタイプです。新しいアイデアに対しては基本、否定的な反応を示しますが、変化がやむを得ない方向と確信すると、一転、無批判なイエスマンとして受容する傾向があります。

*  *  *

 自分の行動パターンが以上3つタイプのどれかに当てはまるなら、社畜予備軍となるので要注意です。そして、その根っこには権力に対する偏見、先入観、誤った思い込みがあるはずです。

 そこから脱却するためにはまず、「権力に対する自分の心の奥底での否定的な考え方」「自分と権力との立ち位置についての根本的な誤解」についての「気づき」が第一歩になるでしょう。

 次回に続きます。

(*)ビジネスパーソンにとっての権力の正しい捉え方をより詳しく知りたい方は、筆者の最新刊『新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をご一読ください。自分の取るべき道が、はっきり理解できるようになるはずです。

『』(木谷哲夫著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)


筆者:木谷 哲夫