首都高を走るLEXUX LS(写真:©1995-2017 TOYOTA MOTOR CORPORATION)

昨年10月にフルモデルチェンジした、レクサスのフラッグシップセダン「LS」シリーズ。当初は導入プランの関係からハイブリッドモデルの「LS500h」を見掛けることが多かったが、半年近く経った今、ターボモデルの「LS500」も市場に出回り始めている。

初代「LS400」から受け継がれてきたレクサス伝統

LSを名乗ってから5代目となる新型は新生レクサスを象徴する流麗なスタイルだけでなく、世界屈指の「先進安全技術」と、将来の運転の自動化レベルを高める要素技術である「高度運転支援技術」を搭載したことでも話題を呼んだ。こうした時代ごとの最先端技術をふんだんに採り入れていくという開発スタンスは、1989年に誕生した初代「LS400」から受け継がれてきたレクサス伝統のひとつだ。また、当時のLS400は国内市場においては「セルシオ」を名乗り、トヨタ自動車における個人向け最上級モデル(法人向けは「センチュリー」)として同年に導入されていた。

その初代が導入された当時から現代にかけ、世界中の自動車メーカーがLSに注目する理由のひとつに、卓越した先進安全技術と高度運転支援技術がある。


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2014年11月にトヨタが発表した先進安全技術に関する普及プログラムにのっとり、レクサス/トヨタでは実際の道路環境で発生件数の多い、…鋲融故、∧盥埃圓箸了故、A路逸脱事故の3点について車載センサーと車両制御技術で可能なかぎり抑制、または被害軽減を試みる先進安全技術を実用化している。この名称がレクサスでは「Lexus Safety System+」、トヨタでは「Toyota Safety Sense P」および「Toyota Safety Sense C」である。

普及の勢いは昨今の先進安全技術に対する自動車ユーザーの高い意識を追い風に、2017年7月末現在で国内におけるトヨタ(Toyota Safety Sense)とレクサス(Lexus Safety System +)を合わせ33車種にまで展開が進んでいて、2017年末には日米欧すべての地域の車両への展開が完了(累計500万台)している。

さらに新型LSでは、先のLexus Safety System +に対して、ー転車事故、¬覺嵎盥埃垰故、➂出合い頭事故、は外逸脱事故、ゥ疋薀ぅ弌式枉鏤検出の5点を加えた合計8種類の事故形態に対応する「Lexus Safety System+A」を搭載し、より多くの状況下で事故被害の軽減を狙う。


衝突回避あるいは衝突被害の軽減を支援する「Lexus Safety System+A」(図:© 2005-2018 LEXUS)

トヨタは2017年11月に「Toyota Safety Sense 第2世代版」を発表し従来のToyota Safety Senseを進化させている。このようにトヨタ/レクサスでは先進安全技術の普及だけでなく性能向上を目的に開発を継続的に進めることで世界のあらゆる地域で効果的な事故抑制技術の確立を目指す。その最先端モデルのひとつに新型LSが位置付けられているのだ。

新型LSに搭載された先進安全技術や高度運転支援技術を体験する試乗会の場で、トヨタ自動車の先進技術開発カンパニー常務理事であり先進安全先行開発部の部長である鯉渕健氏はトヨタ・レクサスにおける安全の考え方について、「人・クルマ・交通環境という三位一体の取り組みと、事故の調査・解析およびシミュレーション開発・評価という実安全の追求の2点をもとに交通事故死亡者ゼロを目指していく」と述べている。

続けて鯉渕氏は、「交通事故死亡者ゼロ社会の実現には、市場で被害軽減効果の高い安全システムをより早く開発し、そして多くのクルマに普及させていくことが重要であり、世界トップの先進安全技術を開発するとともに、それを小型化しさらにコストダウンを進めたうえで普及させていくことがなによりも大切です」と述べた。

「先進技術」と「普及技術」開発を同時並行

こうした鯉渕氏の発言はすでに現在のトヨタ・レクサス陣営において現実のプランとして稼働中だ。具体的には、ひときわ高度なものを「先進技術」として開発しながら、広く一般化させるものを「普及技術」として位置付け、それぞれの領域における技術開発を同時並行的に進めることで、最終的な目標である交通事故死亡者ゼロ社会の早期実現を目指している。


人中心の安全技術(写真:©1995-2017 TOYOTA MOTOR CORPORATION)

さて、新型LSの車両としての詳細はどうか。2017年3月から市場導入されているレクサスの上級クーペモデル「LC」に続き、新型LSにもレクサス版TNGA(Toyota New Global Architecture)を具現化した「GA-Lプラットフォーム」(レクサス版TNGAの一例)を採用。これによりクルマの基本性能である「走る、曲がる、止まる」の領域が高められた。

流麗なスタイルを決定づける4つのタイヤとボディのすき間(ホイールハウス)が極端に少ないボディ設計の実現もGA-Lプラットフォームの効果だ。

筆者は、その新型LSのステアリングをクローズドコースと一般道路でそれぞれ試乗した。どの運転シチュエーションでも「しっとりで、がっちり」という印象を強くもったのだが、とりわけ新開発のターボエンジンを搭載するLS500でその印象を強く抱いた。

ハイブリッドモデル、ターボモデルともにドライバーの意図を忠実に読み取るスムースな走りを見せるなかで、ターボモデルは加速力を決めるエンジントルクの特性に優れていることから重量級ボディ(2150〜2350kg)でも人の感覚に合致する気持ちの良い加速を体感できる。

ハイパワーエンジンモデルにありがちな運転の難しさはなく、人が歩くようなゆっくりとした微速域からのアクセルコントロールも柔軟に受け付けてくれるので、信号からの発進時に同乗者の頭が勢いよく後ろへもっていかれることがない。おしなべて滑らかさが先に立つ。


低速域から高速域まで終始一貫したスポーツ性能がセールスポイントだ(写真:©1995-2017 TOYOTA MOTOR CORPORATION)

一方、ハイブリッドモデルはLCから導入されている「THS 供廚4速ATを組み合わせた新しいハイブリッドシステムである「マルチステージハイブリッド」によって、低速域から高速域まで終始一貫したスポーツ性能がセールスポイントだ。LSが属するセグメントでは、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」が直接のライバルとなるが、LSのハイブリッドモデルはそれらと比較してドライバーズカー的な要素、つまり積極的に走りを楽しむところに開発の中心が置かれている。

現時点での課題

歴代LSの威信を懸け開発が進められたLSだが、現時点では課題もみられる。それはドライバーズカーとしての高い走行性能の実現と、後席にVIPを乗せて送迎するショーファードリブン的な使い方にも対応する快適な居住空間の両立だ。

ドライバーズカーとしての課題は、スポーツ走行を行った場合の車両挙動が大きく、加えて車両の走行性能を制御する「LDH/Lexus Dynamic Handling system」や、後輪を操舵する「DRS/Dynamic Rear Steering」の介入度合いにしても過剰と感じる部分があるところ。ショーファー的な課題はハイブリッドモデルの後席における乗り心地に荒さを感じる点である。

このあたりをズバリ開発者に聞いてみた。

「やりきれてないところがあることは認識しています。ただ、たとえば後席の乗り味では、ランフラットタイヤ(パンク状態でも一定条件下で走行可能)から一般的なノーマルタイヤへ変更すればほぼ解決することもわかっています。しかしランフラットタイヤには、運動性能の向上や万が一の際でも交換スポットまで自力でたどり着けるという安全性が担保されることから採用に踏み切りました。近い将来、ノーマルタイヤを超える乗り味をランフラットタイヤで実現すべく開発を継続しています」

クルマの土台となるGA-Lプラットフォーム、ボディ設計、そしてエンジンをはじめとしたパワートレーンに至るまですべてを新規で作り上げたLS。この先は、トヨタの得意とする技術の「手の内化」とともに半年も待たずして熟成が図られていくはずだ。ここは技術の昇華に期待したい。