2018年2月の障害者アルペンスキーのジャパンパラ大会。男子回転座位で優勝した森井大輝選手(トヨタ自動車)(写真:SportsPressJP/アフロ)

2018年平昌五輪では日本人選手の活躍で多くの感動を与えてくれました。そして3月9日からは障害者スポーツの祭典であるパラリンピックが開幕します。障害者スポーツ研究の第一人者で『パラリンピックの楽しみ方』の著書もある藤田紀昭氏に見どころをききました。

2018年2月9日から韓国・平昌(ピョンチャン)で開催された冬季五輪では、フィギュアスケートの羽生結弦選手の活躍など、日本でも大きな盛り上がりを見せた。

しかし、オリンピック終了後の3月9日から開催されるパラリンピックにも、少し目を向けてみたい。実は近年、パラリンピックに対する人々の関心が、今までになく高まってきているのだ。自身が負った障害を乗り越えて、アスリートとしての限界に挑戦する姿に、多くの人々が心動かされるようになったからだろう。

パラリンピックと聞くと、障害者のスポーツで、健常者のレベルには当然及ばないと考える向きも多いと思うが、実は、種目によっては、健常者以上の記録を出すパラリンピアン(パラリンピック選手)すらいる、想像以上にすごい世界でもある。

今回は、平昌パラリンピックを目前に控えたいま、その見どころと、観戦のポイントについて、紹介したい。平昌パラリンピックでメダルを獲る可能性がある日本人選手についても、探ってみよう。

日本は「パラリンピック弱小国」?

オリンピック同様、パラリンピックにおいても、どれだけメダルを獲得できるかに、その国の威信がかかっているといってよい。ところが、残念ながら日本は、これまでのパラリンピックで、それほど多くのメダルを獲得することはできなかった。

45カ国が参加した前回のソチ大会(2014年)でのメダル獲得数を見ると、1位はロシア80個、2位はドイツ15個と続き、日本は7位で、それほど順位が低いとも言えないが、メダル獲得数は6個にすぎない。また、夏季パラリンピックを見ると、2016年に開催されたリオデジャネイロ大会(159の国と地域が参加)では、日本は金メダルをひとつも獲得できなかったこともあり、64位に終わっている。

では、なぜ日本はこれまで、パラリンピックでメダルを多く獲得することができなかったのか? 

まず、他の国々が障害者スポーツの強化に取り組んでいる時期、日本は厚生労働省管轄だったため、本格的なスポーツとしての強化予算がつかなかったことが、その大きな要因である。人々の最低限度の生活を保障して社会参加を促すことを主たる目的とする厚生労働省では、スポーツの強化に回す予算についてはその大義がなく、その結果、日本は障害者スポーツの強化に後れをとってしまったのだ。ちなみに、現在では障害者スポーツはスポーツ庁の管轄となっている。

また、日本は世界でもまれな平和な国だが、そのため戦争による負傷者はいない。さらに、交通事故も年々減っていて、労働災害も減少中。つまり、障害者スポーツの選手になるような人が少なくなっているのだ。それ自体はすばらしいことではあるが、競技に出る人が少なくなれば、メダル獲得数が減ってしまうこともまた、やむをえないだろう。

障害者スポーツに対するこれまでの予算の少なさと、競技人口の少なさが、日本がパラリンピックでたくさんのメダルを獲得できなかった、ふたつの大きな理由といえる。

メダル獲得数だけではない、パラリンピックの楽しみ方

先に述べたとおり、パラリンピックで日本人選手のメダルラッシュが実現することは難しく、それは平昌大会でも同じだろうと予想されている。

必ずしも日本人選手のメダルラッシュが期待できないとしても、何か他に、楽しみ方はないだろうか?

パラリンピックの一種目であるチェアスキーでは、日本のメーカー製のフレームが大きなシェアを占めている。そこで、たとえば日本人選手であるかどうかには関係なく、日本のメーカー製のチェアスキーを使用した選手が、どれだけメダルを獲ることができるかなど、違った視点での楽しみ方もあると考えている。日本の技術力が、世界でどれだけ通用するのか、パラリンピックの世界でも、それを追求する楽しみ方もあると思うのだ。

そうはいっても、やはり日本人選手の活躍は気になるところ。日本人選手のメダル獲得の可能性についても探ってみよう。

平昌大会にあたっては、前回のソチ大会のときと比べて、日本人選手に対する資金面や人材面などのサポート体制が、格段によくなっている。たとえば、これまでは選手が海外で合宿をおこなうことは、資金面から難しい面もあったが、国の手厚い支援や多くのスポンサーがつくことによって、それが容易になったのだ。これは、選手の技術力向上に大きく貢献することになった。また、公式競技で活躍するワックスの専門家が、スキー板の手入れに協力するなどの、人的なサポートも予定されている。これらの充実したサポート体制が、どれだけ結果に結びつくかにも注目したい。

パラリンピックはメダル獲得数だけがすべてではないといっても、それでもメダルの数が気になるところ。充実したサポート体制のもと、今大会で日本がどれだけ飛躍を遂げられるか、それを見極めるのも、楽しみ方のひとつといえそうだ。

平昌大会でメダルを獲る可能性がある選手とは?

最後に、日本勢がメダルを獲る可能性があるパラリンピックの種目とその選手について、見ていこう。 

まず、金メダルが期待されている1人として、アルペンスキーの森井大輝選手を挙げたい。1980年生まれの森井選手は、4歳からスキーを始め、高校ではインターハイ出場を目指していた。しかし、16歳のときオートバイ事故により脊髄を損傷。それ以来、車椅子を常用している。彼は1998年の長野パラリンピックを病室で観て、チェアスキーの世界に入ったという。その後、パラリンピックでは、2002年ソルトレーク大会から2014年ソチ大会まで4大会連続で出場しており、3つの銀メダルと1つの銅メダルを獲得している。現在でも、その実力は世界トップクラスだ。

他にもアルペンスキーには、ソチ大会金メダリストの狩野亮選手や鈴木猛史選手、2017年のワールドカップ白馬大会で優勝した村岡桃佳選手などの有力選手も出場するので、これらの選手たちの活躍にも注目したい。

スノーボードでは、成田緑夢選手のレベルがかなり高いことに注目している。彼は2017年に全国障がい者スノーボード選手権大会と障害者スノーボードのワールドカップで優勝した。世界ランキングの1位も獲得しており、平昌大会ではメダルに手が届くのではないかと、多くの人が予想している。

1994年生まれの成田選手は、2013年にフリースタイルスキーのハーフパイプで、世界ジュニア選手権優勝。しかしその直後、練習中の事故で障害を負った。リハビリと練習の積み重ねで、スノーボードのみならず、陸上競技の走り高跳びにも挑戦しているパラアスリートだ。ちなみに、成田緑夢選手の兄は、元オリンピック選手の成田童夢氏である。

ほかにも、ノルディックスキー距離では、新田佳浩選手がクロスカントリースキー、バイアスロンでは、出来島桃子選手がメダルを期待されている。

これまでパラリンピックを見たことがなかったという人は、平昌大会を機に、観戦してみてはいかがだろうか。そこには、障害やリハビリを乗り越えた人間の強さがあり、きっと魂を強く揺さぶられるはずだ。