女同士の闘いなんて、くだらない?

美貌・財力・センスのすべてを手に入れた女たちが繰り広げる、ヒエラルキー争い。

男からは求められ、女からは妬まれ、そして羨望の的となるカリスマ読者モデルの世界。

己の自己顕示欲を隠すことなく曝け出す彼女たちは、時に結託し、時に競い合う。

くだらない、と思うならどうか覗かないで欲しい。

優雅で美しくも、水面下で死にもの狂いで闘う、女たちの醜い生き様をー。

会計士として働くあおいは、女性ファッション誌『GLORY』の読者モデルとなり、ロールモデルである景子らと出会い、インフルエンサーとしての地位を確立してゆく。

スタイルブック発売企画の候補であることを知らされ張り切るあおいだが、珠緒の悪口にうっかり同調してしまうところを景子に聞かれてしまう。




当たり前のことかもしれないが、あの日以来、景子は一切あおいに話しかけなくなった。

スタッフの手前か、撮影で会えば挨拶はしてくれるが、それ以外は目を合わそうともしない。G3+あおいのLINEグループからも退出してしまい、インスタでもスルーだ。

どうやら珠緒にも同じ仕打ちをしているようで、景子は今リナと2人きりで行動を共にしている。

短い期間とはいえ、撮影やプライベートで密な付き合いをし、憧れすら抱いていたメンバーと会えなくなるのは思った以上に寂しいことだった。他愛のないLINEでのやり取りや、面倒だと思っていたリンクコーデでのランチ会すら懐かしい。

だが、あおいは自分に嘘の情報を教えた珠緒と、偽りの友情ごっこをするつもりもなかった。

そして、ふと思い出す。

自分には学生時代からの親友がいたではないか、と。


懐かしむ気持ちで、古い友人である優に連絡したが...?


女の友情を維持するのは、かくも難しい。


『資生堂パーラー 銀座本店 サロン・ド・カフェ』で、何ヶ月ぶりかに優と再会したあおいは、動揺を隠せなかった。

たった数ヶ月会っていない間に、優が物凄く太っていたからだ。

学生時代は似たような体型だった2人だが、かたや読者モデルとして活動し3キロほど落としたあおいに対し、優は…最後に会った日から、軽く5キロは太ったように見える。

そのせいか、今日も体型を隠すような服を着ており、よけい野暮ったくなったように思う。

だが、屈託なく笑い、久しぶりに連絡したというのに気にせずあおいと会ってくれる彼女の優しさに、あおいは心から安心した。

だがー。

「わぁ、何これ!資生堂パーラー物語だって♩」




そう言って、パフェやプリンに加え、ケーキやフルーツがたっぷり盛られたプレートを注文しようとする優を見て、あおいは思わず失言をしてしまう。

「ねぇ、低糖質版のストロベリーパフェっていうのもあるよ?これなら血糖値の上昇も緩やかだから太りにくいし、こっちにしたら?」

それは、学生時代の可愛らしい姿に戻って欲しいという気持ちから出た、好意のつもりだった。

だが、優の表情はみるみる強張っていく。

「…私は別に、あおいみたいにお洒落に命懸けてるわけじゃないし。プライオリティはあくまで仕事だから。」

失言で優の機嫌を損ねてしまったことは申し訳ないが、まるであおいが仕事を疎かにしているとでも言いたげな発言にムッと来てしまう。

ー綺麗になることと、仕事を完璧にこなすことは、両立できるのよ。

あおいはただ、そう伝えたいだけだった。そして、以前のように何時間でも笑いながらお喋りがしたかっただけだった。

だが、結局2人ともコーヒーしか飲まずに、仕事の話をしても、大学時代の思い出話をしても全く噛み合わずに終わってしまった。

「じゃ、またね...」

銀座の雑踏に消えていく優を見つめていると、胸がギュウっと締め付けられる。

自分は、会計士としてキャリアアップしながら、読者モデルとしても成功したい。

美しさと知性を両方を兼ね備え、最高の男性と結婚し、極上の幸せを手に入れたい。

そう思うのは、悪いことではないはずだ。だが、そうした理想の姿に自分を近づけようとすればするほど、かつての友人とは会話が噛み合わなくなってゆく。

そんな寂しさを払拭するように、あおいはある行動に出た。


寂しさを打ち消すために、あおいが起こした行動とは?


今度は、私が女王になる番


古い友人と合わないのであれば、新しい友人を作れば良い。

あおいは『GLORY』読モの中でも、G3の次に目立っていた数人の存在に気がついた。

そして、その中の二人を選び、行動を共にすると決めた。

広告代理店勤務の真奈美と、美容皮膚科医の美由希。自分と同じように、外見だけでなく堅実なキャリアも築いている女である。

今やフォロワー数が2万を突破したあおいに直接オファーが来るブランドの展示会に、2人を伴う。食事会にも一緒に参加し、3人でのリンクコーデをSNSにアップする。

そう。景子がしていたのと、同じように。

ー女にとっての最高のアクセサリーは、ブランド品でも宝石でもなく、女友だちであるー

パリス・ヒルトンのこんな名言を聞いたことがあるが、まさに事実だとあおいは思う。

珠緒が離脱したことで勢いを失ったG3よりも、あおいを筆頭にした新しい読モ派閥に人気が集中したのは、狙い通りだった。

紙面での扱いも、景子とそう変わらない。むしろ勢いではあおいの方が勝っている。

世の中は、みんな新しいものが好きなのだ。

副編集長の大沢もこれには大いに喜んで、あおい達3人の企画を沢山通してくれた。




「内密にお願いしたいのですが、スタイルブックは高田さんか木下さんかのどちらかになりそうです。」

編集部でお茶を飲みながら、あおいは嬉しさを隠せない。リナや珠緒を抑えて、景子と並んで候補になるなんて。

「ただ、やはり高田さんの11.5万フォロワーという数字は圧倒的に強いんですよね。上の方も、紙面で人気という空気感よりも、発行部数の目安としてフォローワー数を信頼する傾向にありますし。」

あおいの頭に、思わず暗い考えがよぎった。

ーもし、景子がフォロワーを購入していることが編集部にバレたら…?

そもそも、景子のフォロワーの半数はアプリを使って得たものだ。全くフェアではない。

あれだけ親しくしていたのに、急に景子に関係を断たれた悔しさも蘇る。

ー成功したいなら、古い友人は捨てていかなきゃ。

そんな声が、思わず脳内に響いた。

いくつもの考えが、あおいの頭の中でぐるぐると渦巻く。

ーこれは、告げ口じゃない。あくまで事実を伝えるだけー。

人間、罪悪感を打ち消すための言い訳はいくらでも思いつくものだ。

自分の行動を正当化する為に語られるそれが、客観的に見て、どれだけ破綻した考えであろうと。

▶NEXT:3月16日 金曜更新予定
景子を陥れてしまったあおいに、降りかかる試練とは...?