昨年3月10日、憲法裁が朴氏の大統領罷免を決めた=10日、ソ(聯合ニュース)

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【ソウル聯合ニュース】韓国憲法裁判所が昨年3月10日、親友の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入を認め、大統領としての権限を乱用したなどとして、朴槿恵(パク・クネ)氏の大統領罷免を決定してから1年がたつ。

 罷免を受け前倒しで実施された大統領選で当選し、昨年5月10日に就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、国政介入事件をはじめ保守政権時代に積み重ねられた弊害を正すという「積弊清算」の公約を実現するため、就任直後から動き始めた。

 最初にしたのは改革の旗振り役を任命することだった。

 政治介入が批判された情報機関・国家情報院(国情院)を全面的に刷新し、高い専門性を備えた情報専門機関に生まれ変わらせるという目標に向け、文大統領は就任当日、過去2回の南北首脳会談に深く関わった元国情院次長の徐薫(ソ・フン)氏を国情院長候補に指名した。

 その翌日には、青瓦台(大統領府)民政首席秘書官にチョ国(チョ・グク)ソウル大法学専門大学院教授を任命。保守政権の朴槿恵前政権で事実上の検察権を握り、国政を思いのままに動かしていた民政首席秘書官のポストに革新派の法学者を起用し、検察改革への意欲を示した。

 さらに、検察内の「ビッグ4」の一人とされるソウル中央地検長に幹部ではなかった尹錫絓(ユン・ソクヨル)大田高検検事を起用する極めて異例の人事を行った。尹氏は朴前政権で国情院の大統領選介入事件の捜査に当たり、上層部の反対を押し切って国情院の職員を逮捕するなどして左遷された経歴があり、文大統領の積弊清算への意志がいかに強いかをうかがわせる人事だった。

 改革に向け最も迅速に動いたのは国情院だった。同院は各機関の情報収集に当たってきた国内情報担当官(IO)制度を廃止し、国内政治との絶縁を宣言。改革発展委員会を設置し、組織改革と積弊清算に乗り出した。

 同委員会は約半年にわたり国情院の改革案を議論し、2012年大統領選での世論工作、保守団体支援など国情院の15の政治介入疑惑に対する処理方向を勧告した。国情院はこの勧告を受け入れ、09〜13年に国情院長を務めた元世勲(ウォン・セフン)氏ら元国情院職員4人と民間人50人に対する捜査を検察に依頼した。

 検察は朴槿恵、崔順実両氏の捜査を加速させ、訴追した。国政介入の主犯で朴槿恵政権の「陰の実力者」とされた崔氏には懲役25年を求刑。ソウル中央地裁は先月13日、朴氏と共謀して企業に資金拠出を強要した職権乱用罪、財界からの収賄罪など、検察が指摘した罪の大半を有罪と認め、懲役20年などの判決を言い渡した。崔氏側への贈賄罪に問われた韓国ロッテグループ会長の辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)氏は懲役2年6カ月とした。

 検察は特定犯罪加重処罰法上の収賄、職権乱用、強要、公務上秘密漏えいなどで逮捕した朴氏の罪を立証することにも全力を挙げ、起訴から316日がたった先月27日、朴氏に懲役30年などを求刑した。朴氏の一審の判決公判は4月6日に予定されている。

 そして今、積弊清算の動きは李明博(イ・ミョンバク)元大統領に向かっている。李氏は在任中、元青瓦台高官らが国情院に資金を上納させたことに関与した疑いなどが持たれており、検察は収賄容疑などで李氏を今月14日に取り調べる方針だ。こうした状況に、保守系野党からは「積弊清算に見せかけた政治報復」との批判も出ている。

◇弾劾がもたらした国民の「政治的成熟」

 一方、朴槿恵氏の弾劾訴追は国民の意識も変えた。国民は、崔順実氏ら権力者に近い特定人が特権を握り利益を得たことに激しく憤り、社会の不道徳や不公平を積極的に訴えるようになった。平昌冬季五輪のアイスホッケー女子南北合同チーム結成を巡り、若者らを中心に「平等な機会を奪うもの」との主張が広がったことなどが代表的な例だ。

 ソウル大心理学科の郭錦珠(クァク・グムジュ)教授はこれについて、「自分一人が声を上げて何になるのか」と自嘲(じちょう)していた若者たちが、朴政権の退陣を求める「ろうそく集会」が大統領を罷免に追い込むという出来事を経験し「それでもいいのだな」と気付いたのだと説明する。

 近ごろ韓国社会を揺さぶっている、セクハラや性暴力の被害を告発する「Me too(私も)」運動も、こうした経験の延長線上にあるという意見が多い。正義と人権に対する社会の意識が高まり、モラルに反することに共に声を上げる風潮が広がったことで、「Me too」が可能になったとの見立てだ。