広告業界をリードするWPPは2017年、2009年以来、最悪の収益成長率だった。WPPが取り組んだ諸問題は、すべての大手ネットワークにある程度の影響がある。

広告主の資金の使い方が激動し、世界最大の持株グループであるWPPの2017年の営業に影響した。CEOのマーティン・ソレル氏は「見られた年ではなかった」と語ったが、今後の見通しはもっと暗い。大手エージェンシーが集まった広告ネットワークのWPPは、世界経済の大御所だと見られながらも、市場が持ちこたえるなか、崩壊が進んでいるようだ。WPPはあらゆる面で存在の危機に直面している。

WPPだけではない。オムニコム(Omnicom)、ピュブリシス(Publicis)、IPG、電通は、いずれもいくつかの要因に苦しんでいる。こうした大手エージェンシーグループたちの苦戦は、業界を巻き込んだ透明性の危機の症状というだけではない。明確に線引きされたチャネルソリューションから、より全体論的な顧客体験への移行が進み、測定可能な結果とマージンへの傾注が強まっている。こうした要因が相まって、マーケティング支出とエージェンシーが維持できるマージンが減少している。

この記事では、WPPの業績が示す、エージェンシーのボスたちがいま直視しなければならない構造的課題を5つ取り上げる。

自らの再構築の必要性



エージェンシーは耐久性のあるビジネスで、柔軟性もある。しかし、マーケティングのトレンドに対応したことで、コストが膨れあがった。ソレル氏はWPPの業績に対する「技術的な混乱の長期的影響」を特に取り上げた。そのコメントからうかがい知れるのは、WPPらは引き続き、マーケティング業界が競争力を保てるように、急成長する最先端の技術サービスを探していくということだ。中抜きのリスクの拡大に、コンサルティング企業や、さらに身軽なデジタル中心の中間層プレイヤーからの脅威もあるので、M&Aへの欲求が変わることはないだろう。

エージェンシーの合併と、管理とバックオフィスの諸経費削減によるコストベースの削減に、WPPはほかの持株会社たちよりも素早く動いているといえるだろう。エージェンシーが提供するサービスを進化させて、より組織化された「クライアントが求める現代的なソリューション」を提供するのは「さらに大変になるだろう」と、M&Aを助言するSIパートナーズ(SI Partners)のパートナー、トリスタン・ライス氏は語る。この移行は、複数の超大型タンカーを方向転換させようとするようなものであり、それは同時に、すべての「超大型タンカーを互いにもっと競争させる」ことになると、同氏は語った。

クライアントの支配



広告主たちによるメディア管理とコンテンツ制作のインハウス化の脅威を、エージェンシーのボスたちは、季節が変わるかのように(再び)軽視するようになった。マーケターが自分でやることを拡大しているという調査や見出しの底流にある事態は、エージェンシーがビジネスモデルをきちんと構築できれていないということに行き着く。実際に、マーケターは自分でやることを増やしているが、多くの場合、エージェンシーがマーケティングミックスのよりコンサルティング側へとビジネスモデルをシフトさせて、そうしたマーケターに協力している。

ソレル氏はWPPの結果に関するアナリストへの話のなかで、昨年、自社のエージェンシーが広告主に協力したものとして、メディア、データ、コンテンツ、制作、およびプログラマティックの機能を口早に挙げた。ソレル氏によると、逆に言えば、最近のWPPのデータが示しているのは、プログラマティックとコンテンツスタジオは「アウトハウス」というところまでインハウスに向かっているのかもしれないということなのだ。

「このトレンドは明確には定義されていない」と、ソレル氏は語る。「インハウスのように明確に定義されないのは確かだ」。

透明な広告購入への要求



いまや「謎があるところ、マージンがある」という考え方が多くのシニアマーケターのあいだに広がっている。お金をもらって広告を管理するこうしたビジネスに対する、疑念と監視の1年半の末、広告主たちは、これまでについて一切を打ち明けるようにそうしたプレイヤーに要求している。

ジャガー・ランドローバー(Jaguar Land Rover)で広告のグローバル責任者を務めるイアン・アームストロング氏は、次のように説明した。「後の分析によって、我々が払いすぎているのかどうかは明らかになる。単に期待した見返りが得られていないということなのかもしれない。それは、広告に払う額がそもそも大きすぎるのと関係しているのかもしれないし、あるいは、技術上の問題を示すものなのかもしれない」。アームストロング氏のようなマーケターたちは、非公開のリベートや隠れた手数料をさらに明らかにしていきながら、今後、それを切り捨てるか、エージェンシーの采配力を制限しようとしている。そのような回避策を思いつけなければ、長期的な成長が妨げられるからだ。

こうした動きの実例のひとつが、オムニコムのトレーディングディスクであるアキュエン(Accuen)だ。第4四半期は、広告主が開かれたプログラマティックバイイングモデルにシフトしたことで、世界収益は1200万ドル(約12億円)落ち込んだ。

コンサルティング企業の脅威



WPPの悲惨な2017年の要因は、少なくとも一部はアクセンチュア(Accenture)やデロイト(Deloitte)のようなところに行き着くのではないかというアナリストの懸念を、ソレル氏は静めようと努めた。WPPは2017年に80の業務についてコンサルティング企業と直接対決し、「勝ち負けの割合は50対30だった」とソレル氏は主張する。こうした勝利は「ものとしては大きくはなかった」という。

しかし、アクセンチュア、デロイト、IBMが広告やメディアの顧客の獲得競争にいまほど関心をもったことはない。彼らは広告領域のうち、コンサルティングと技術の方面に可能性を見い出している。

ユニリーバ(Unilever)がIBMのデジタル専門家たちと協力して、ブロックチェーンで広告主の拡大したサプライチェーンから詐欺を排除するテストに取り組んでいるのも、それが理由だ。また同じ理由で、マーケティングコンサルティングのR3によると、コンサルティング企業がエージェンシーを獲得するM&Aに使った金額は合計12億ドルになり、大手ネットワークは取引数が減少した。



よくある質問
2位:デジタル分野はコンサルティング企業に食われているのか?
対コンサルティング企業の2017年の重要な勝敗の概算


デュオポリーの影響



WPPは、デュオポリー(GoogleとFacebookの2社寡占)が脅威だという考え方を受けつけていない。そもそもWPPは、GoogleやFacebookと一緒にたくさんのお金を使っている。WPPが2017年にメディアに投じた750億ドル(約7.9兆円)のうち、70億ドル(約7410億円)はこの2社だった。

GoogleとFacebookの両社は、エージェンシーを広告主の視界から徐々に押し出す意図はないとずっと主張しているが、ハイネケン(Heineken)、アディダス(Adidas)、ロレアル(L'Oréal)など、すでに多くの大手ブランドが両社と直接、取引をしている。また、ジャガー・ランドローバーなどの一部の広告主は、このところ言及していたように、GoogleやFacebookとの芽生えつつある関係を新しいエージェンシーモデルに組み込みはじめている。



よくある質問
1位:Google、Facebook、Amazon、アリババ、テンセントは直接取引しているのか?
WPPの実際の支出額によるメディアオーナのトップ10(2017年と2012年の比較)


Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)