【知らぬが仏(3)】日本の安全神話は「作業員の腕前」 軽量化新幹線台車亀裂の現実

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■直接の切欠は「溶接欠陥」と「歪の集中」か?

 さらに、亀裂が始まった「直接の切欠」とされる「溶接部分の亀裂」だが、「微細な傷」とされているので、多分「軸ばね座」の4カ所の肉盛り溶接個所の「溶接欠陥」と「歪集中による割れ」であろう。どのような姿勢での溶接かは分からないが、「溶接欠陥を誘発させる構造」であることは否定できまい。また、溶接では鉄板を溶かしていくので、真っ赤に溶ける個所がかなりの範囲に及ぶはずで、設計者はこの歪が大きいことを知っているとは思えない。これほど集中させるには、それなりの狙いがあるのであろうが、それなら作業コストを覚悟しなければならない。

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 溶接欠陥が作業者の未熟であったとしても、板厚7mmでこの構造は、台車設計自体に無理があろう。コの字に曲げられた部品に補強リブが入るなど、設計にかなりの軽量化の努力が見受けられるが、歪の大きい加工する体制が「川崎重工」の現場になかったものと推察できる。これは管理体制の問題でもあり、企業経営の問題だ。少々重くなっても精密鋳造部品を部分的にでも使うことが、生産性と溶接欠陥を少なくし、結果としてコストダウンができるものと感じる。

■【知らぬが仏】品質保証は現場の高い腕前とモラルまかせ

 どちらにしても、この「生産数の作業現場」では、品質保証は現場作業員の「腕前とモラル」に頼っているのが実態だ。つまり、蒸気機関車の維持整備で知られているような「匠の技」で成り立っている世界なのだ。設計者が製造技術、加工技術を熟知していることはまれで、セクショナリズムも横行しているのが現実だ。設計技師が現場加工者に意見を聞くことはプライドが許すまい。しかし、実際は設計者があらゆる加工技術に精通していることは不可能だ。

 そこで、本来はチームになって設計段階から検討を繰り返すのが「品質保証」を行うコツなのだ。「コンピュータ設計システム」でどれほどシミュレーションできても解決出来るものではない。「現場・現物主義」を軽く見る論調に警告しておきたい。レベルの高い品質保証体制を、「取締役と執行役員に分けた」人事制度で出来るわけがない。