KDDIは2017年の夏モデルと同時に、ホームIoTサービス「au HOME」を立ち上げた。その後はGoogle Homeとの連携などサービス拡充を続け、2月末にはユーザーのスマホの位置情報を使った、いわゆるジオフェンシング機能や、家電の取扱説明書や消耗品管理などの新機能を追加するなど、積極的な展開を続けている。

 スマートホームは、海外、とくに米国ではさまざまな製品が登場しており、GoogleやAmazonといった大企業が参入するなど、盛り上がりを見せている。しかし、日本国内ではまだまだ認知されていない。そのような状況下でKDDIがどうしてau HOMEを立ち上げたのか、そしてどのような方向を目指すのか。今回はau HOME事業を担当するKDDIの商品・CS統括本部 商品企画本部 ホーム・IoTサービス企画部の渡辺和幸部長にお話を伺った。

KDDI 商品・CS統括本部 商品企画本部 ホーム・IoTサービス企画部の渡辺和幸部長

――まずどういった経緯でKDDIはau HOMEを立ち上げたのかを教えていただけますか。

渡辺氏
 ざっくりとした表現ですが、「そろそろホームIoTが来るのでは」という予感があり、昨年7月31日にサービスの提供を開始しました。

 それ以前から国内でもいろいろな企業がホームIoTをやっていましたが、あまり数が出ずに苦戦していました。KDDI社内でも「まだ早い」「そろそろ」といろいろな議論がありましたが、米国の状況を見るとGoogle HomeやAmazon Echo(Alexa)などが爆発的に伸びているタイミングで、そのあたりをフックとして日本でもホームIoTの土壌ができるのでは、という感覚がありました。また、スマートスピーカーの日本投入のロードマップも見えていたので、ホームIoTサービスを提供するタイミングとしては良いのでは、と考えました。

Z-Wave採用の理由

――au HOMEはセンサーなどの通信方式として、日本では採用例の少ないZ-Waveを採用されていますが、その採用の理由は?

渡辺氏
 Z-Waveにしたのは、電波の飛びと省電力性のバランスが良かったことが理由です。宅内にデバイスを設置するにあたり、Wi-Fi機器のように電源がちゃんと取れるなら良いのですが、ホームIoTでは電源が取れないところに小さなデバイスを設置することもあります。乾電池で長時間使えないと使い勝手が悪いですし、電波も届かないと意味がありません。それもドアや壁があっても電波が届く必要があります。

 このあたりのバランスを見て、Z-Waveはほか規格に比べて全体の仕上がりバランスが良かったことが採用の理由となっています。

 日本での採用例は少ないですが、世界的に見ると欧米や中国にこの規格を採用するメーカーがあるので、そういったものからau HOMEで提供するラインナップを選んでいきたいと思っています。

――au HOMEでは今後もZ-Waveを採用し続けるのでしょうか。

渡辺氏
 カメラなどZ-Waveで対応できないものは、すでにWi-Fiでやっているものもあります。センサーデバイスについてはZ-Waveが基本と考えています。

――スマートホームのプラットフォームとしてオープン化されれば、いろいろなデバイスが接続できると良いな、と思うのですが、オープン化についてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。

渡辺氏
 Z-Waveはアライアンスの規定もあるので、認証の通っているものであれば接続でき、アプリにUIがあるものであれば使うこともできます。一方で我々としては、宅内に設置するデバイスで、お客様の生活情報などセンシティブなデータを扱うので、セキュリティや安全性には最大限に配慮したいと考えています。よく分からないデバイスがよく分からない挙動をしてデータがどこか分からないところに飛んでいく、といったことは避けなければいけません。

 オープンかクローズドかで言えば、なるべくオープンを志向したいですが、その大前提として「セキュアであること」、我々が安全性を担保できることを条件とさせていただきたいと思っています。現時点ではau HOME認定デバイスのみを推奨させてもらっています。

――ホームIoTデバイスのメーカーがau HOMEに使って欲しいと思ったときは、渡辺さんのところにお声がけすれば良いのでしょうか。

渡辺氏
 そうです。あとはプロダクト部門が世界中を回って、さまざまなベンダーとお話をさせてもらっています。

au HOMEで提供されているデバイス

ライフデザインで新たな価値を

――1月にラスベガスで開催されたCESではホームIoT機器もたくさん展示されていました。そういったところも見られているのでしょうか。

渡辺氏
 私もCESには行って、Z-Waveアライアンスのブースも見てきました。au HOMEで扱っているようなドアセンサーだけでなく、まだau HOMEでは扱っていないけど欲しいなと思うジャンルの製品もあったので、そこはぜひとも広げていきたいと思っています。

 例えばですが、これは欧州の事例だったと思うのですが、住宅用の火災保険でIoT火災報知器をセットで導入すると、保険料が安くなる仕組みがあるそうです。こういった取り組みは面白いなと思っています。今の火災報知器では外出中に状況が分かりません。それも本来IoT化されるべきで、そういったものが組み合わさることで火災保険が安くなるなら、お客様にとっても導入のメリットがあります。

 このように世界を見ると面白いものがたくさんあるので、それらを見ながら導入を検討していきたいと思います。

――au HOMEで火災報知器と保険を組み合わせるとなると、au損保と連携することになるのでしょうか。

渡辺氏
 そうですね。我々は企業自体がライフデザインという戦略で、通信以外へとビジネスを広げているので、もしやるとすれば、KDDIとしてシナジーを見込める形にはなると思います。

2月末のアップデートでさらに便利に

シーン設定により操作を自動化できるようになった

――2月末のアップデートで、新たな機器連携が可能になりましたね。

渡辺氏
 ジオフェンシングが使えるようになり、指定したエリアに登録ユーザーが入ると、それに応じてデバイスを操作する、といった機能が使えるようになりました。今まではアプリを使って赤外線リモコン経由で家電をコントロールするだけだったのですが、自宅の最寄り駅に着いたら自動的にエアコンをつけるとか、そういったことが可能になりました。

 もう一つの新機能としては、アプリにお客様がお持ちの家電の情報を登録することで、家電の取扱説明書をPDFで確認したり、家電によっては必要な消耗品をすぐに購入できるようになりました。

 電気代のシミュレーションもできます。例えばエアコンは5年や10年経つと、新製品の省電力化により、買い換えた方が安くなるケースがあります。そういったレコメンドもでき、その上で買い換えを希望なら、Wowma!(ショッピングサイト)へリンクもお使いいただけます。

――Google HomeやAmazon EchoはIFTTTを使ったりしていろいろなことができますが、設定にはある程度の知識が必要です。au HOMEではそのあたりが簡単になるのでしょうか。

渡辺氏
 アプリの設定はチェックボックスを選ぶだけで、難しい設定はありません。Google Homeとau HOMEの連携も、それほど難しくはありません。Google Homeからの音声コマンド操作で、これまでもau HOMEの赤外線リモコンによる照明やエアコンの操作はできたのですが、今回のアップデートでテレビのコントロールも可能になりました。au HOMEアプリでできることが、ほぼGoogle Home経由でもできるようになりました。

操作履歴をタイムライン表示

家電管理画面(サンプル)

――テレビの操作は使い勝手が気になります。

渡辺氏
 Google Homeの音声認識能力もあって使いやすくなります。まず「OK Google、au HOMEにつないで」と言わないといけないですが、そのあとは会話のやり取りでテレビをコントロールできます。料理をしながら音声だけでコントロールするなど、使い方としては非常に良くなるのではないかと思います。私も自宅にGoogle HomeとAmazon Echoを置いていますが、テレビをコントロールできないのがフラストレーションになっているので、そこが改善すると嬉しいですね(笑)。

――渡辺さんはいろいろなデバイスをお使いかと思いますが、どのような使い方が便利だと感じてらっしゃいますか。

渡辺氏
 そうですね、まだまだできることが少なく、「足りないな」という思いの方が若干強いです。たとえば私は花粉症なのですが、空気清浄機のほかにも空気のモニターデバイスも置いています。これでモニターの数値が一定値を超えると、空気清浄機が自動で動くとか、そういった組み合わせをするとなると、現状では設定が難しくなってしまいます。こういったところをキッチリ提供するのが、au HOMEの使命だと考えています。

 それから、自動で動かすもの重要ですが、やはり家にいるとき、スマホを立ち上げずにスピーカーに話しかけるだけというのは慣れると便利なので、なるべく音声インターフェイスでできるようにするのが大事かな、と思っています。そういった意味では、まだまだできることを増やしていかないといけないと思っています。理想としては、家の中のありとあらゆるものをコントロールできるようにしたいですね。

――デバイスメーカーがau HOME対応デバイスを作りやすくするように、KDDIでモジュールを提供するといったことはありそうでしょうか?

渡辺氏
 現在はZ-Waveモジュールがあるので、それを入れれば基本的に使えるようになります。将来的にはセルラーを使ったデバイスにも対応していきたいと考えています。IoT向けのセルラーモジュールが増えてくれば、モジュールを入れることで簡単にau HOME対応デバイスを作れるという世界になると思います。

スマートロックは“万が一”が怖い

――現状提供されていないデバイスで言うと、スマートロックはもっと充実して欲しいですね。

渡辺氏
 スマートロックには我々も注目していて、いくつか候補を探している段階です。

――KDDIはスマートロックを手がける企業のAugust Homeに出資されていますが、スマートロックを導入するとなると、そこを優先されるのでしょうか。

渡辺氏
 August Homeへの出資とau HOMEは、事業として関係がありません。もちろん、良いものだからAugust Homeに出資していますし、au HOMEも良いものを入れたいので、可能性が無いわけではないですが、絶対の紐付きではなく、我々としてはその時点のベストを選びたいと考えています。

 ただ、スマートロック分野ではまだ解決するべき課題があると考えています。au HOMEが導入するのは、もう少し様子を見て、課題が解決されてからです。我々は万が一のケースを懸念しています。たとえば玄関のドアが開いたままになるとか、逆に開かなくなるとか、そういったリスクがほかの機器に比べると高いと考えています。

 また、取り付け工事が必要な部分もあり、既存のドアとの相性もあるので、そこをもっとクリアにしてからになるかな、と。専門的な知識が豊富な方がわかって使っているならば良いですが、それほどリテラシーが高くない方に提供し、トラブルが発生したときにさぁ困ったとならないようにしないといけません。

 スマートロック分野については、いろいろな会社が取り組んでおり、商品もどんどん良くなっているので、我々としては様子をウォッチし、良いものを選びたいと考えています。

――こうした製品をau HOMEに導入するときは、他社が作っている既存製品を導入するのか、あるいはKDDIが製品仕様から開発して作ってもらうのか、どちらなのでしょうか。

渡辺氏
 どちらもあると思っています。

――海外の製品を持ってくるとき、そのメーカーがすでにクラウドサービスを持っているときは、そのクラウドサービスを使うのでしょうか。それともKDDIがクラウドサービスを運用するのでしょうか。

渡辺氏
 そこは是是非非でどちらにするかを判断します。我々としてはお客様のセンシティブな情報を扱うので、データの利活用や保管については、なるべくセキュアな形にしたいと思っています。通信事業者なので、通信の秘密も守らないといけません。我々が責任を持ってデータを管理できるようにしたいと考えています。コストが安いからといってあっちこっちにデータがある、というようなことにはしたくありません。

――メーカーがクラウドサービスを持っているデバイスを導入するときでも、KDDIがクラウドサービスを運用する可能性があると。

渡辺氏
 現状ではそれに近い形になっています。赤外線リモコンやカメラ、センサーにしても、我々の管理が及ぶシステム内でデータをハンドリングしています。

月額490円に込められた意志

――現状のデバイスで人気があるのはどちらになるのでしょうか。

渡辺氏
 カメラですね。店頭などでも一番、食いつきが良いというか、フックになっています。お子さんやペットの見守りでカメラを使いませんか、というトークがわかりやすいようです。その次が家電コントロールの赤外線リモコンですね。

――ネットワークカメラはIT業界ではさほど新しいデバイスではありませんが、なぜau HOMEで人気なのでしょうか。

渡辺氏
 店頭で接客しているスタッフの声でもあるのですが、やはりお客様がそういった製品の存在をご存じないことが多いようです。知っている人間からすると、家電量販店の棚にたくさん並んでいることは分かっているのですが、ごく普通の方だと、その存在自体を知らないことが多いのです。そんなことできるんですか、というところから話が始まります。

 日本の一般的な市場では、「ホームIoTでこういったことができる世の中になっている」という認知自体がまだ低く、そこが一番大きなポイントかな、と感じています。

――au HOMEは月額490円となっています。Google Homeなどが無料で利用できることに比べると、ちょっと高いという印象もあるのですが、この価格設定はどういった考えなのでしょうか。

渡辺氏
 世の中でこうしたIoTサービスは無料のものと有料のものがあります。有料サービスの料金を見ると、490円は安い部類で、機器代込みで2000円や3000円といったサービスも多い。こうしたサービスの仕組みには運用コストもかかりますし、お客様へのサポートコストもかかります。継続的にサービスを提供するとなると、いくばくかの費用をいただかないといけません。その観点でいうと、他社と比べても安いレベルになっていると思います。

 しかし一方でGoogle HomeやAmazon Echoなどは月額料金を取らないモデルで展開しています。ネットワークカメラも機器代金のみのものもあるじゃないか、と。そういった観点で見ると、おっしゃる通りだと思います。

 高いか安いかの議論は難しいところもありますが、我々はジオフェンシングなどの機能を含め、ネットワークやデバイスを組み合わせてお客様のやりたいことを実現する世界を提供します。その代わりに、なるべく抑えたコストで提供するべく、月額490円を設定しました。

 たしかに無料で提供できればそれに越したことはないのですが、たとえばカメラなども無料でオンラインサービスを付けるものもありましたが、機器が売れなくなった途端にサービスをやめるといった事例もありました。そういった事例も踏まえ、継続的にサービスをする前提で、月額料金をいただくようにしています。

――そうなると簡単にはサービスを終了できないというプレッシャーもありますね(笑)。

渡辺氏
 家はライフサイクルが長いので、たとえば新築を建てたときに導入すれば、数十年住むことになるので、ある程度は継続的にサービスを提供しないといけないと考えています。さすがに35年ローンの期間中ずっと同じデバイスをサポートするのは現実的ではありませんが(笑)、デバイスの高度化や規格の進化もあるので、そこは必要に応じてデバイスをリプレースしながら継続する形もあるかと思います。

――本日はお忙しいところありがとうございました。