VANS(バンズ)は1月、アーウィン・フェデリゾ氏を同社初のグローバル・エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして迎えた。エージェンシー出身のフェデリゾ氏は、ソーシャルメディアにおける、ブランドの一貫性向上へ集中的に取り組むという。

VANSは、セレブがファンであると表明したり、私服に取り入れているのを街で目撃されたり、ハイエンドなコラボレーションを展開したりと、相次ぐ話題に絶好調のストリートウェアブランドだが、地に足をつけることも忘れていない。たとえばフェデリゾ氏は、同ブランドが新興市場に進出するためには、「ソーシャルメディアでの存在感を強めなければならない」と考えている。

ソーシャルメディア分析のブランドウォッチ(Brandwatch)が、2017年2月15日から2018年2月15日のあいだにFacebook、インスタグラム(Instagram)、Twitter上で交わされたVANSのハンドルが含まれる会話(@vans_66、@vansskate、@vanssurf、@vansbmx66、 @vanssnow、@vansgirls)を分析したところ、メンションの74%が米国からのものだった。次に多かったのは英国で、同時期内に占める割合は3%。Facebook、インスタグラム、Twitterはどれも中国では規制対象だが、ブランドウォッチが調査したほかの3つの新興市場(ブラジル、メキシコ、インドネシア)からのメンションは、それぞれ1%ずつだった。

フェデリゾ氏は、新興市場でVANSファンを増やす方法を見つけることが、同氏にとっての最優先事項だという。

伸びしろはアジアに



VANSの成長の伸びしろはアジア、具体的には中国にある。直近四半期のアジア太平洋地域の売上は前年同期比で23%上昇しているが、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)地域の売上は同時期に43%と跳ね上がっている。中国のように、若者世代が自分たちをグローバルな世界の一員として表現したいと願うマーケットでは、VANSがメインストリームではなくサブカルチャーに焦点を当てている点が強みになる、というのが同社の理解だ。

WeChat(微信)はVANSにとって中国最大のSNSであり、同社が中国進出を果たしてから10年近くのあいだに主要なマーケティング手段になった。VANSグローバル統括マーケティング担当バイスプレジデントのニック・ストリート氏によれば、同氏率いるチームが中国国内イベントの写真や特集記事をWeChat内で閲覧できる雑誌にまとめたコンテンツ配信で、VANSは大成功を収めている。VANSは、WeChatのユーザーフィード内に表示されるモーメンツ(Moments)広告の購入や、同アプリ内でのQRコードの試験利用も行っている。VANSの中国のマーケティング責任者として3年間務めたストリート氏は、リーチ数を伸ばすのは米国やヨーロッパより中国の方が「少し簡単」だという。

また同氏は、WeChatのライブストリーミング動画の方が、ほかのマーケットのSNSに投稿された動画よりエンゲージメント率が高い、とも話す。ストリート氏は具体的な数字を明かしてくれなかったが、WeChatにおけるVANSのコンテンツの約7割が同社グローバルチームから供給されたもので、現地マーケターから直接提供される中国国民の趣向に合わせたコンテンツではないことを教えてくれた。西側諸国とは文化的に大きな違いがある中国のようなマーケットでも一貫性を保つことは、ブランドの核心を伝えるカギであると、ストリート氏はいう。ただし一方で、現地とのつながりを犠牲にしてまでこだわる必要はないと、同氏は考える。

ストリート氏は、VANSのグローバルマーケティング部門としては、キュレーションされたコンテンツが、ブランドの全体的なテーマやアイデンティティとの関連性を保ち続けることがもっとも重要であるという。「実際、もっと国内のクリエイターやWeChatのほかのファンのコンテンツが見たいという声が[中国の]フォロワーのあいだで増えている」。

次に見据えるもの



就任2カ月にも満たないフェデリゾ氏は、中国の課題を解決したあとの計画はまだ具体的ではなく、「コンセプト段階」であると説明する。同氏は、グローバルクリエイティブ担当バイスプレジデントのジェイミー・ライリー氏の部下であり、同社のクリエイティブディレクターたちを統括する。

クリエイティブディレクターは、多分野にわたる約30名の社内クリエイティブスタッフから構成されるチームを日々運営するマネージャーの役割を果たす。VANSはクリエイティブに関しては、常にこのような体制で臨んできており、自らアイデアを生み出し、プロジェクトごとにエージェンシーと作業を進めるスタイルを好む。

フェデリゾ氏は、いずれは自社製品とマーケティングのカスタマイズの自由度を上げていきたいとしている(中国ユーザーからの要望にも見られるように、ローカルな製品やマーケティングに対するニーズが増えているためだと考えられる)。同時に、各販売店の役割を従来の製品中心のものから、さらに拡大するリテール戦略も考えていきたいそうだ。多くの顧客にとって販売店は、VANSの顔になっているというフェデリゾ氏は、店内に音楽、アート、ストリートカルチャー、スポーツを全身で体感できる空間の実現を計画している。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)