内部留保は誰のものか

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 2017年10-12月期の法人企業統計調査で、企業の内部留保が前年同期比11・2%増の417兆円と四半期ベースで過去最高となった。麻生太郎副総理の「今年の春闘は大幅なベアが期待できるな。雇用者の賃上げに反映して当たり前だろう」とする声が聞こえてきそうである。

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 経済成長のためには、GDPの約6割を占める個人消費の拡大は確かに必須事項である。それを実現するためには賃上げが必要なことは言うまでもない。そして「労働分配率」(企業収益がどれだけ労働者に配分されているかを示す割合)は、先の統計を大企業ベースでみても43%台という低水準にある。「より多くの割合を労働者に」という見方は、この限りでは説得力を持つ。

 しかし企業経営者は「内部留保増 = ベアアップ」に、総じて慎重な姿勢が各種調査などで示されている現実である。また「生じた利益の増加分は賞与に加算し還元する」とする経営者が多い。

 では何故こうしたお国の統計結果が出てもなお、経営者の姿勢は慎重なのか。ある(上場)中堅企業のオーナー社長はこう語った。「大局的に言えば、米国経済の拡大(GDP増加)も既に9年に至っている。10年連続となれば、景気の転換点を意識しなくてはならない。米国経済の下振れは国際経済にとって大きなマイナス要因だ。日本の事情を捉えても少子高齢化の進捗がある。個人消費の先行きに拡大の展望が持てない。内部留保の確保に向かわざるをえない」。

 ただ私には「内部留保を吐き出すべき」論が賑やかになるたびに思い出されることがある。28期連続という日本企業としては最長期に亘り増配を実施している、花王の説明である。「利益剰余金(内部留保)については中長期の視点からの設備投資資金をまず用意し、残りの分は配当(増配分)に振り向けている」。つまり内部留保は誰のためのものなのか、という「そもそも」論である。「会社の為(設備投資資金)」「社員の為(賃金増)」であるのと同列で、「株主の為(配当資金)」のものでもあるはずだ。

 為政者は「株主配当を抑えても、ベアに当てろ」と果たして言い切れるだろうか。麻生氏に是非にも問いたい。