医師が推奨"花粉症に効く"鼻うがいの手順

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今年も「花粉症」のシーズンがやってきました。鼻水や鼻づまりをおさえるには、どんな対策が有効なのか。聖路加国際病院の石川陽平医師は、「薬を飲む以外では『鼻うがい』がお勧めです。市販品を買わなくても、水と塩があれば、自宅で簡単に行えます」といいます。医学的なエビデンスとあわせて解説します――。

■「健康を促す行動」「病気を予防する行動」とは

はじめまして。聖路加国際病院の石川陽平と申します。救急医として日々臨床や研究に従事していますが、臨床で出会う疾患のもとをたどると、患者さんの行動や生活習慣、社会環境などが原因になっていることに気付きます。そこで「健康を促す行動」「病気を予防する行動」を促進しようと、医師によるオンライン医療相談サービス「first call」の企画・運営にも従事しています。

「first call」には、普段病院に来る患者さんからはあまり相談されることのない、日常でのちょっとしたからだの悩みや疑問が多く寄せられています。この連載では、その中から多くの皆さんが同様に悩んでいるだろうものをピックアップして、医学的なエビデンスをもとに解説しながら、日常的にできる対策をご提案していきたいと思います。

第1回は、今年もつらい時期がやってきた「花粉症」についてです。

■低年齢化する花粉症の発症

平成28年に東京都が実施した調査(※1)では、都内でスギ花粉症をお持ちの方は2人に1人(48.8%)にも上るとされています。さらに、昭和58〜62年に実施した調査と比較すると、スギ花粉症の患者数は約5倍にもなっています。

また、以前は、花粉症は成人になってからかかる病気として認識されていましたが、最近では小児期からも症状が出現することも多くなってきました。これも、花粉症の増加につながっていると考えられています(※2)。

非常に多くの方が悩まされている花粉症。薬を飲んでいる方も多いと思いますが、それでも花粉症の症状が完全に無くなるわけではなく、「少しでもよくしたい」と思われている方は多いのではないでしょうか。

ちなみに、日本で花粉症の薬としては「抗ヒスタミン薬」が広く使われています。かゆみなどの原因となるヒスタミンの作用を減らすことで、症状の改善を促します。

■「鼻うがいを試してみたら?」と言われたが……

そこで、薬以外に何か日々できることで本当に効果的な対処法はあるのでしょうか? オンライン医療相談サービス「first call」で先日、こんな相談が寄せられました。

【相談】
毎年春になると、花粉症で困っています。病院で薬をもらって症状を抑えてはいますが、それでも鼻水や鼻づまりが止まりません。
友人から「鼻うがいを試してみたら?」と言われました。ただ、鼻うがいには痛みもありそうで、効果が心配です。本当に効果があるならばやりたいと思っているのですが、どうなのでしょうか?
【耳鼻科専門医からの回答(抜粋)】
鼻うがい、非常に効果がありますよ。
花粉症の対策としては、薬以外ですと、スギやダニのアレルギーであれば免疫療法で抑えることもできます。スギに関しては花粉の飛散時期には免疫療法を行わないのが一般的なので、早めもしくは飛散が終わったら相談されてみてください。
鼻うがいの方法としては……(こちらは本記事の後半で具体的にご紹介します)

※本事例は、オンライン医療相談「first call」に寄せられた相談事例から一部を抜粋・編集してご紹介しています。

■鼻うがいは花粉症に効果がある

耳鼻科専門医の先生も花粉症対策で太鼓判を押している「鼻うがい」について、イタリアで行われた研究をご紹介します(※3)。

この研究では、花粉症と診断されている妊婦を対象として、(1)鼻うがいを毎日3回するグループと、(2)何もしないグループ、に分けて花粉症シーズンの症状について調べました。各症状(鼻水、鼻詰まり、目と鼻のかゆみ、くしゃみ)についてそれぞれ0点(全くつらくない)〜4点(とてもつらい)で毎日の症状を記録してもらいました。4つの症状についてそれぞれ記録してもらうので、全く症状がないのが0点、全ての症状がとてもつらい状態が16点です。

その結果を示したものが、以下のグラフです。

横軸は研究開始からの期間(週)、縦軸は症状の重症度を表しています。白丸(○)が鼻うがいをしないグループ、黒丸(●)が鼻うがいを行ったグループです。

研究開始時には、2つのグループの症状スコアはほぼ同じでしたが、研究開始直後から、症状に明らかな差が出ていることがわかります。この研究は、花粉が飛び始める時期から開始されているので、鼻うがいをしたグループもわずかに症状が悪化傾向にありますが、研究開始6週目まで、鼻うがいをしなかったグループよりも症状が軽いことがわかります。

この研究から、鼻うがいは花粉症に対して効果があることがわかります。

効果のある理由については、鼻うがいを行うことにより、花粉を鼻から出すだけでなく、鼻の乾燥の防止や、鼻の粘膜の細胞を活性化させ鼻水の通りをよくすることなどが挙げられています。

■自宅の「水」と「塩」で鼻うがいをする方法

first callでの相談者も不安に思われていたように、効果があると分かっても「鼻でうがいするなんて痛そう」と躊躇される方も多いかもしれません。

ここでは、自宅でできる、簡単で負担の少ないやり方をご紹介します。

鼻うがい用の液体は、市販品もありますが、自宅で作ることも可能です。

真水を鼻に入れると、ツーンとした痛みが強いので、それを和らげるために体の浸透圧に近い、0.9%食塩水を使っていただくのがいいでしょう。また、体温と同じくらいの36度程度にしていただくと、鼻の粘膜に対する負担が少なく、違和感が少なくなります。

・0.9%食塩水の作り方
1)水道水をそのまま使うと雑菌が繁殖する可能性があるので、一度沸騰させた水を使います。
2)1リットルのお湯に対し、9gの食塩を入れて溶かします。
※雑菌の繁殖を抑えるため、できれば毎回作っていただくことをお勧めします。取り置きは少なくとも数日までにしてください。
・鼻うがいの方法
1)食塩水を人肌の温度にして使います。
2)鼻の穴に差しこめるような、ノズルのついたボトルに上記の0.9%食塩水を入れます。
3)一方の鼻を指で押さえつつ、前かがみの状態からやや上を向き、食塩水を鼻に流し込みます。入れる量は20ml程度(大さじ1杯程度)で十分です。このとき「エー」と声を出しながら行うと入りやすいです。また、顔が上を向きすぎないように注意してください。
4)0.9%食塩水を、鼻から出します。慣れてきたら口から出してみましょう。
5)逆側の鼻も同様に行います。これを2〜3回繰り返します。
※上記を1セットとして、1日2〜3セット行います。
・注意点
・鼻うがいのやり過ぎは、かえって鼻の粘膜へのダメージとなる場合がありますので、1日2〜3回までにしましょう。
・点鼻薬を処方されている方は、点鼻薬の使用直後には鼻うがいを行わないでください。
・鼻うがいのあと、強く鼻をかむと、耳の炎症につながる場合がありますので、優しくかみましょう。
・鼻づまりが強いときや、のどに痛みがあるときには行わないでください。

花粉症に対しては、内服薬や点鼻薬などの薬剤の使用も効果がありますが、鼻うがいのようにアナログな工夫でも症状の軽減を図ることができます。

このように、病気になった時に重要な点として、

(1)医療機関での「検査や投薬」だけでなく、
(2)普段どのように生活を送ればよいのかとうような「行動」

が大切になってきます。

ただ、診察室では医師も時間が限られており、詳しく説明ができないのも実状です。

今後このコラムでは、ちょっとしたことだけれども実は大切な「行動」に焦点を当てて、皆さんの疑問にお答えしていければと思っています。

また、その他にも医師に気軽に聞いてみたい事がありましたら「first call」でもご相談いただけますので、気軽にご利用になってみてください。

【参考文献】
※1 東京都健康安全研究センター 花粉症患者実態調査(平成28年度)より
※2 厚生労働省「花粉症の疫学と治療そしてセルフケア」(最終閲覧日:2018年2月27日)http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html
※3 Garavello W, Somigliana E, Acaia B, et al. Nasal lavage in pregnant women with seasonal allergic rhinitis: a randomized study. Int Arch Allergy Immunol 2010; 151:137.

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石川 陽平(いしかわ・ようへい)
オンライン医療相談「first call」相談医
医師/聖路加国際病院救急部/東京慈恵会医科大学分子疫学研究部。2007年東京慈恵会医科大学入学後、世界保健機関(WHO)ジュネーブ本部インターンなどの経験を経て、13年より聖路加国際病院に入職。14年度、聖路加国際病院ベストレジデント。現在は、聖路加国際病院・救急部医師として臨床に従事する一方、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部にて研究を行う。15年にMediplat(現メドピアグループ)の設立に参画し、オンライン医療相談サービス「first call」の企画・運営も行っている。

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(オンライン医療相談「first call」相談医 石川 陽平)