撮影/mrhayata

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 今年の東京マラソンも大盛況で終わった。私もこれまで今年も含め何回かランナーとして参加しているが、2007年からスタートした東京マラソンの運営も年々進化しているのを肌で感じる。

 昨年から東京の顔である東京駅前をゴールにする新コースに変更したのは大正解だ。ゴールした時のランナーの感動もひとしおだ。日本人らしい緻密な大会運営にはいつもながら感心するが、さらにもう一つ加わったのが「世界一安全・安心なマラソン大会」だということだ。ボストンマラソンの爆破テロも教訓にして、コース沿道も含めた監視体制を相当強化している。

◆応援の前に「地下鉄の縦割りの壁」

 東京マラソンの魅力は沿道の応援にある。24もの沿道の会場でランナーを応援する音楽演奏・ダンス・民俗芸能などのパーフォーマンスで盛り上げる。東京の強みは全コース途切れることのない、沿道を埋め尽くす200万人もの大応援だ。これは他のマラソン大会との大きな違いだ。

 しかも東京は地下鉄網が縦横に整備されている。応援する人々は応援したいランナーのペースをネットでチェックしながら、順次都内を地下鉄に乗って移動する。予め一日乗り放題の乗車券も配られている。ランナーのペースごとのモデル移動コースの案内情報もある。まさに至れり尽くせりの顧客サービスだ。

 しかしここに東京特有の課題もあった。配っているのは東京メトロで、掲載されている案内情報は東京メトロに関してだけで、都営の路線情報は記載がない。ところが終盤のコースは三田、品川方面を往復するコースで、これが対象外になってしまう。

 もちろん一日乗り放題乗車券では都営は乗れない。これこそ縦割りの弊害だ。東京の人々は理解できても、地域外、ましていわんや外国人は理解不能で戸惑ってしまうだろう。

◆東京に必要な「複合戦略」

 ついに東京マラソンもニューヨーク、ボストン、ベルリンなどとともに世界の6大メジャーマラソンの一つにまでなった。ここで大事なのは、世界の大都市で開催されるマラソン大会は単にマラソンエリートの大会であるというだけでなく、大都市の集客ビジネスとしてのイベントだということだ。キーワードは「国際性」だ。

 その点で、中でもニューヨークマラソンは別格だ。私もかつて参加したが、海外からの参加者が4割以上で圧倒的に多い。海外からの参加者は単に走ることだけが目的でニューヨークに来るのではない。魅力的な大都市で過ごす楽しみ、観光の楽しみも求めている。

 そして世界的なマラソン大会で、人々が楽しむのはマラソン当日だけではない。その前後にアート・フェスティバルや芸術週間も開催され、街全体に高揚感が漂う。このような芸術文化の厚みを持っているのが国際都市の魅力だ。

 このように特に海外からの参加者に一日でも長く東京に滞在させる仕掛けづくりが大事なのだ。今回もスタート前に話していたオーストラリアからの参加者たちも「マラソン後、別に他のイベントがないので、すぐに帰国する予定だ」と言っていた。ある意味もったいないことだ。

 東京マラソンも徐々に海外からの参加者も増えて今や約13%にまでなっている。直前のマラソン関連イベントも増えてきた。しかし更なる飛躍のためにはマラソンだけでなく、芸術文化イベントも含めた複合的な魅力を活用した集客ビジネスの発想ももっとあってもよい。そのためにはマラソンはマラソン、芸術文化は芸術文化で担当が違うといった縦割り行政も打破すべきだろう。

【細川昌彦】
中部大学特任教授。元・経済産業省。米州課長、中部経済産業局長などを歴任し、自動車輸出など対米通商交渉の最前線に立った。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)
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