デジタルネイティブのブランドによって美容業界の状況が激変している。それに伴い、ブランド各社をバックアップする投資家の数も増えている。

いま、美容業界全体が活気づいているといっても過言ではない。2017年、美容業界の収益は177億ドル(約1.8兆円)にまで拡大し、前年比6%増となっている。なかでもその45%を占めるのがスキンケアだ。それも、ザ・ニューヨーカー(The NewYorker)からニューヨーク・マガジン(NewYork Magazine)まで、あらゆるメディアが現在の流行を報じている様子を見れば、不思議はない。

しかし、ウィンキーラックス(Winky Lux)やマニキューブ(Manicube)などのブランドに投資するフィメール・ファウンダーズ・ファンド(Female Founders Fund)のパートナーであるスチアン・ドン氏によると、美容分野の消費者は一度選んだブランドに忠誠心と執着心があり、投資家にとっては長期的な魅力があるという。

「その結果、収益が予測しやすくなる」と、ドン氏は語る。「それだけではなく、多くの人がこれを、多額のマージンを得るのにも実に魅力的な場所だと気づきはじめている」。

グロッシアー(Glossier)やフーダビューティ(Huda Beauty)、シャーロット・ティルベリー(Charlotte Tilbury)といった話題の企業はいずれも最近、資金調達を受けている。しかし、新たな投資が行われているのは、有名ブランドだけではない。2017年2月、カスタマイズ可能なヘアケアの会社、ファンクション・オブ・ビューティ(Function of Beauty)は、GGVキャピタル率いる950万ドル(約10億700万円)のシリーズAラウンドを獲得した。また、そのライバル社であるプローズ・ビューティ(Prose Beauty)は、フォアランナーベンチャーズ(Forerunner Ventures)が率いるシリーズ Aラウンドで昨年12月に520万ドル(約5億5120万円)を調達している。

CBインサイツ(CB Insights)が4月に発表したレポートによると、美容業界全体の投資案件数は2017年に前年度を19%も上回る149件を超え、過去最高を記録した。

このような若いブランドの台頭に後れをとってきた老舗ブランドも、その魅力に追いつこうとしており、ここ数年M&Aが盛んに行われている。

2010年はじめにスマッシュボックス(Smashbox)を買収したエスティ―ローダー(Estée Lauder)は2016年、トゥーフェイスドコスメティクス(Too Faced Cosmetics)を14億5000万ドル(約153億円)で買収。同年、ロレアル(L'Oréal)はイット・コスメティクス(It Cosmetics)を12億ドル(約127億円)で買収した。ユニリーバは2015年にケイト・サマービル(Kate Somerville)とデルマロジカ(Dermalogica)を含む多数のブランドを獲得したあとも、昨年はカルバーコリア(Carver Korea)(27億ドル[約286億円])やアワーグラスコスメティクス(Hourglass Cosmetics[金額非公開])など買収を続けた。

しかし、美容関連スタートアップの世界は混戦状態となってきており、すべてが新参者というわけではなく、デジタルファーストのブランドだからといって投資家の目に留まるわけではない。製品の有効性や透明性、革新性、そして顧客とのつながりが重要なのだ。

製品は王様



インスタグラムの時代において、ブランディングは重要だ。しかし、それ自体が成功につながるわけではない。とりわけ美容業界では、結果がカギとなる。手にした商品に効果があるかどうかの証拠が、消費者だけでなく潜在的な投資家獲得に不可欠な要素だ。

初期のベンチャーファンド、トーチキャピタル(Torch Capital)の創始者であるジョナサン・ケイダン氏は、「最初のうちは商品がいまいちでも、ブランディングが良ければカバーできるかもしれない。ただ、長続きはしないと思う」と語った。

トゥルーボタニカルズ(True Botanicals)に投資したシードステージファンドであるソフトマターベンチャーズ(Softmatter Ventures)の創始者マット・スカンラン氏は、「消費者行動を見れば、商品の良し悪しはすぐにわかる」と話す。「良い商品なら、独自の収益性の高いリピート消費行動が見られる。それが、企業の健全で自然な成長につながる」と語った。

臨床試験もまた効果的だという。スカンラン氏が指摘したように、若い企業は結果を恐れ、あるいはマーケティング費用は別のことに使うべきだ、という信念から臨床試験を実施しないことも多い。

「これは誤りだ。価値観の大きな指標となるものだ」と彼は語った。

たとえば、トゥルーボタニカルズでは、すべての製品に厳格な臨床試験を実施し、その結果が一流であることを証明している。

真の透明性



このような試験は、現在の美容ブランドが開示すべきサプライチェーンを示す重要な要素でもあると、投資家も認めている。

「顧客は商品の成分や、出所を知りたいと考えている」と、ケイダン氏はいう。自然でオーガニックであるに越したことはない。ただ、商品の効能が本物であることが大前提だと、ドン氏は言い加える。「自然だ、というだけではだめだ」。

商品のサスティナビリティ(持続可能性)、あるいは製品の製造過程で環境や生産者に悪い影響を与えていない、という確証も重要だ。

「これが、業界の変革者となっている」と、スカンラン氏はいう。同氏の企業では投資を行う際、この点を最重要視しているという。「美容業界全体に大きな変化をもたらしている」。

同氏は、サスティナビリティはセフォラ(Sephora)にまで及んでいるといい、同小売業者は今後数カ月間、大部分の店舗でサスティナビリティのイニシアチブを展開することになっている。セフォラからコメントをもらうことはできなかったものの、過去に同社はセフォラコレクション製造サプライヤーには監査を強化すると約束している。

むろん、サスティナビリティは良いPRになるため、そこに便乗する企業も多い。そこでスカンラン氏は同僚とともに外部機関に認定を受けた企業を求めているという。オーガニック・コンシューマー・アソシエイションやフェア・トレードで認定されたものがその一例だ。

「自分のサスティナビリティについてなら、いくらでも雄弁に語ることができる。しかし、それを何らかの審査機関で証明しなければあまり意味がない。特に、Googleなどで消費者が簡単に結果や情報を得ることができるなら、なおさらだ」。

イノベーションがパーソナライゼーションへ



いま、他社とはひと味違うことをするブランドは投資家にとっての絶好のチャンスだ。

ドン氏は、自らが「美容業界のZara(ザラ)」と呼ぶウィンキーラックス(Winky Lux)を例に挙げる。

ドン氏によるとウィンキーラックスではバックエンドの製造方法と物流ネットワークで他社と一線を画しており、構想から平均45日以内に新商品を製造開始できるという。「彼らは常に新鮮で、消費者の望みに合わせて進化する美容製品を提供している」。

ある投資家(資金調達が近いため匿名希望)は、ウィンキーラックス(および商品販売までのスピード)は彼と彼の同僚がいま求めているブランドの青写真そのままだと語った。常に顧客の声を聞いてスピーディに製品のイノベーションを行い、同時にアイシャドウパレットやハイライターなどの低価格かつトレンドにあった商品を主にオンライン販売している(ニューヨーク市に店舗は1軒しかない)。

カスタマイズもまた、いまの投資家の関心事だ。多くの人が前述のヘアケアブランド、ファンクション・オブ・ビューティアンドプローズは、顧客のニーズに合わせた製品を提供しており、特にエキサイティングなものとして、注目している。

「いま、この業界全体で、このレベルのパーソナライゼーションが重要となっている」と、ケイダン氏は語る。

顧客(および彼らに出会える場所)を知ること



当然だが、これまで述べてきたことも、ブランドが効果的にターゲットの消費者にリーチできなければ意味がない。

「プロダクト・マーケット・フィットは非常に重要だ」と、スカンラン氏はいう。「顧客を知る必要があり、ブランディングはそのオーディエンス向けのサービスを提供しなければならない」。たとえば、グロッシーは「クールな女子」というターゲット、彼女たちが好む美学、そして彼女たちが利用するチャンネルを把握することで成功したのだ。

カイリーコスメティクス(Kylie Cosmetics)とライムクライム(LimeCrime)は、メイク好きで最先端の消費者を主にSNSでターゲティングすることで、同じような成功を収めた。

「このようなブランドは、対象とする女子だけを追いかける」と、スカンラン氏は話す。

ドン氏によると、昔からこれらの主流派以外のマイノリティである女子たちは、伝統的なブランドが相手にしてこなかったという。その隙間を利用することがカギとなる。40種類のファンデーションなど、多様な製品ラインナップを提供して成功しつつあるフェンティビューティ(Fenty Beauty)もその一例だ。

「我々は、SNSのリーチを活用し、これまで長きにわたって遠巻きにしていた消費者グループに対し、実際に話しかけ、顧客獲得できる企業を求めている」。

Jessica Schiffer(原文 / 訳:Conyac)