政府はデータを「都合よく」使う(厚労省の残業時間調査資料/時事通信フォト)

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「裁量労働制」導入を巡り、安倍晋三首相は1月29日の衆院予算委員会で、「(裁量労働制の労働者は)一般労働者より労働時間が短いというデータもある」と答弁した。だが、その根拠として提示された統計データは杜撰なものだった。

 裁量労働制のほうが「労働時間の状況」として事業所が把握しているものだったのに対し、一般労働者のほうは「法定労働時間」(8時間)に「1か月で最も残業時間が長い日」の時間外労働を足したもの。つまるところ、比較できない数値を都合良く同列に扱っていたのである。統計学に詳しい科学評論家の佐川峻氏はいう。

「統計そのものが正しくても、恣意的に一部の情報をピックアップすると、解釈次第でデータの見え方は変わってくる。統計を使った主張や説明は、常にその根拠を注意深く検証する必要があると考えるべきです」

 このような“あやしい統計”がいつの間にか“世の常識”として定着してしまうのは裁量労働制の一件に限ったことではない。

 例えば、社会保障費の財源問題において出てくるのが、「日本の消費税は諸外国に比べて安い」という論法である。確かにスウェーデンなど北欧諸国では消費税率が25%、フランスでは19.6%となっている。

 が、「税が国民にどれだけ還元されているか」という視点はそこから排除される。

 国立社会保障・人口問題研究所の「社会支出の国際比較(対国民所得比)」によれば、医療、介護、子育てなど社会保障分野への支出は日本の30.8%に対しスウェーデン43.6%、フランス45.5%と段違いだ。

 世界有数の高福祉国家と、増税しても社会福祉に回さない日本を比べるのは前提から無理があるのである。

 さらにいえば、フランスでは旅客輸送、外食サービス、食料品、医薬品など様々な商品に軽減税率が適用されている。ほぼすべての商品に一律課税する日本とは、やはり同列で比較できないはずだ。

※週刊ポスト2018年3月16日号