N700系の新幹線。(c) 123rf

写真拡大

■「歪が集中しすぎる設計」そのものが無理!

 各種報道が正確さを欠くため、また記者会見、あるいは各社に直接取材していないため、今回の新幹線台座亀裂に関する不良の実態は正確にはつかめないが、現在の台車の構造であると、かなり高度な溶接・製缶技術が必要であると感じる。欠損断面の写真・スケッチだけでは確定はできないが、圧延鉄板を「コの字型」に曲げ、補強リブをつけて、2つを合わせて溶接している。また設計板厚7mm(使用板厚8mm)は、台車の使用期間が長い条件での要求強度としては薄いと感じる。その構造部材を組んで、「軸ばね座」と呼んでいる車軸4点(台座8接点)の水平を、かなりの精度で出さねばならない。

【こちらも】【AT車のエンストを甘く見るな(上)】整備士に分からない故障「制御プログラム」

 また、8mm板厚でコの字に曲げ、補強リブを溶接して、合わせて組み合わせ溶接し、「軸ばね座」肉盛り溶接をしている。溶接がこれほど集中する構造で、「歪は制御できる」と考えているほうがおかしい。ましてや「軸ばね座」を4点肉盛り溶接すれば、「歪」応力が点に集中して、亀裂が入る力がかかっていることは明白であろう。ばかげた設計だが、このような加工まで考慮できる設計技師は、まずいない。これは設計から作業者までのチームを組んで、設計段階から問題を出していくほかない。JR・川崎重工の管理・経営の問題だ。根本的間違いがある。

 組織作り、運用、人事、人材育成などがすべて取り揃えられないと、「品質保証」はできない。品質を、「匠の技」だけで背負うには「歪」が大きすぎた。軽量化の要求など含めて、これからの「新幹線の製造そのもの」をもう一度考えることだ。

■時計よりも高い加工精度を要求する設計

 「溶接欠陥を出さない」「水平精度を出す」ことが「板を削った」理由であろうが、溶接面と溶接ひずみが集まるあの部位で、平面度を1mm以下とすることは、どちらにしても「溶接部位、ひずみ部位」をかなり削らねばなるまい。少なくともマニュアルに記載していたとする0.5mmでおさめるには、高度の溶接技術と、製造工程全般において少しずつ「ひずみを抑える」ことが必要だ。ひずみが出た状態で、「高周波測定器」を使わず板厚を確保しながら作業を行うことは「勘・経験値」でしかない。作業者の腕に頼って、問題を起こしやすい設計だ。また、「0.5mm以上板厚を削らない」ことが社内規定であるとすると、これは「無理な要求」というべきであろう。

 車輪の幅、車軸の間隔がどの程度かしれないが、仮に2m程度あるとする。2000mmで0.5mmの精度とすると、0.025%で調整せよとなる。歪の大きな溶接作業でこの精度は、時計の部品と比べても桁違いの高い精度となる。溶接製缶技術は、「匠の技」の精度を要求されるもので、歪の出方も「鉄板の目」を読む必要があるほど微妙なのだ。(「鉄板の目」については(4)で説明。)これを設計段階において、AIを使っても読み切れないだろう。第一、AIが事前に読み込むデータがない。