シェアハウスは何らかの事情で自宅を空けている所有者と、家賃の支払いを抑えたい借主の希望がマッチして始まった。所有者は自宅の住宅ローンと固定資産税の支払いができる上に、多少の小遣いまで生まれるという余禄に恵まれ、徐々に社会に浸透していった。3〜5人程の賃借人が負担する家賃をまとめると、所有者が一家で住むために組んだ住宅ローンと固定資産税を払ってもお釣りが出るのは良く分かる。

【前回は】スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」で何処へ行く!(2)

 建築業界では、遊休地に賃貸住宅を建てると相続税評価額が下がって有利だし、賃貸収入も得られる、家賃保証もしますよという触れ込みで、建築需要創出策が行われている。このモデルの場合は、所有地を有効活用する大前提があり、負担するのは建築費のみなので、立地や人口動態など条件が様々であったとしても、危機的な状況がすぐ訪れることはあまり考えられない。もっとも、近年は実需が見込めないような地域に、同じような賃貸共同住宅が、空室のまま並んでいるという異様さが話題になったりもしているので、人口減少を織り込んだ慎重な検討が必要だろう。

 遊休地を持たなくても、賃貸住宅を購入して小遣い稼ぎができると謳ったのが、「かぼちゃの馬車」を始めたスマートデイズ社である。家賃保証があるから返済の不安はないと、半ば暗示にかけるようなセールストークを駆使して、700名にも及ぶというオーナーを生み出した。

 シェアハウスとは、戸建て住宅がスタートなので、リビング・キッチン・バス・トイレなどを共用したうえで、各個室でプライベートな生活を確保する“共同生活空間”と言うのが一般的な認識だ。共同生活には、出身地域の習慣の違いや常識のずれを相互に理解して調整する努力が欠かせない。シェアハウスが認知されている大きな理由は、割安で利用できるという経済的側面のお得感によるが、生まれも育ちも違う人たちとうまく共同生活を営むという難しさを、無視することは出来ない。

 スマートデイズ社がシェアハウスとして供給してきた「かぼちゃの馬車」には、共用のリビングが存在しない。リビングのない「かぼちゃの馬車」は、シェアハウス専門募集サイトの掲載条件を満たしていないため、有力募集サイトに情報が掲載されないという重大なハンディを持っていた。リビングに割くスペースが惜しくて個室部分とした可能性がある。シェアハウスの醍醐味であるリビングでの交流が望めないということは、間借りのようなものだ。ロスを覚悟で売却処分を目論んでも、間取りの特殊さがネックになるのではないか?

 「かぼちゃの馬車」のオーナーに共通なのは、今回の事態が広く社会に認知され、「かぼちゃの馬車」に対するマイナスイメージが広がってしまったことだ。「かぼちゃの馬車」というメルヘンチックな名称と、全くかけ離れたトラブルの影響は、新しい入居者の確保に障害となるばかりか、現在の入居者の居住継続を危うくする懸念すらある。

 それにしても1月に引責として辞任した大地則幸前社長は、ずいぶんあっさりとした引き際だった。まさか予定の行動だったわけではないだろうが?