第90回センバツ高校野球大会(23日開幕、甲子園)に9年ぶりに出場する滋賀の進学校、彦根東は20年ほど前から立命大スポーツ健康科学部の海老久美子教授と連携し、野球に必要な体作りを行っている。

 今井義尚前監督の時代に始まった海老研究室との連携は、村中隆之監督(49)に代替えした後も継続してきた。現在は約3カ月に1度、公認スポーツ栄養士の資格を持つ立命大大学院生らに来てもらい、選手が個別指導を受けている。

 特徴は、選手自らが目標を立てる点。それを達成するために必要な栄養素、食材選び、摂るタイミングなどを栄養士から聞き、選手たちが工夫して自分なりの食生活をデザインする。

■体作りには自覚が必要

 取材に出向いたのは2月中旬。この日、彦根東で個別指導をしていた立命大大学院生で管理栄養士の宮川侑実さんは「自分で目標を立てることで、意識が変わります」と話す。

 最初の個別面談(昨年10月)で、体成分を分析する機械、インボディを使って選手たちの体重、BMI、体脂肪率、筋肉量、骨格筋量、細胞内水分、細胞外水分などを細かく測定。それを元に選手1人1人に目標を3、4個設定させていた。例えば、半年で体重10キロアップや何カ月で筋肉量を何%増やすなどといったものだ。

 その上で、宮川さんは何が必要かを伝え、どういった食事や生活をすればよいかをアドバイスし、その経過を約3カ月ごとに確認する。「自分で目標を立てると、食への意識が高まる。まずはここからです」と体作りには、自覚が必要だと力を込める。

 昨年10月の最初の面談で、「2カ月で体重5キロアップ」の目標を掲げて達成した今井怜央内野手(2年)は、意識改革した1人だ。「この冬の間、補食でおにぎりやパン、チーズなどを意識して摂るようにしました。筋肉量を増やしての体重増にしたかったので、家ではタンパク質を意識的に摂るようにしました。おかげでパワーが上がりました」。

■毎日記録、3カ月ごとに見直し

 アドバイスを受けた後、選手たちは毎日、体重や体脂肪、1日の行動時間、いつ何を食べたかなどを専用シート(FFQg)に付けていく。約3カ月ごとにシートを参考にして、目標がどの程度達成できたのか、何が足りないかなどを栄養士と相談。そうやってデータを蓄積し、行動することで「なりたい自分」に近づけていく。

■食生活を整えるかどうかは選手次第

 だが、なぜ選手たちの意識を変える必要があるのだろうか? 立命大海老研究室の公認スポーツ栄養士、首藤由佳さんは「私たちの管理には限界があるから。定期的に学校を訪ねますが、日々の食生活を管理することはできません」と説明する。

 選手1人1人、家庭の事情も生活環境も違えば、食事でできる範囲も違う。選手たちが自主的に、家族に協力を依頼する必要も出てくるだろう。その場合、選手の意識改革が大切だ。「そもそも食生活を変えるか変えないかは、選手に委ねるしかありませんので」(首藤さん)。

 夏の甲子園を経験した左腕、増居翔太投手(2年)も意識を変えた1人。「毎日、全食を意識して体重管理しています」と昨夏から体重を7キロ増やした。「目標までにはもう少し足りませんが、センバツまであと1カ月あるので間に合うと思います。しっかり体重を管理して、まずは彦根東として初のセンバツ勝利に貢献したいと思います」。

 選手への個別相談だけでなく、保護者を対象にした海老教授の料理教室も行われている。また週1度のペースで「部食」と呼ばれる校内での食事会も開かれている。

 村中監督は「食事面だけでなく、さまざまな分野で大人の方に支えられている」と前置きした上で、「栄養士さんのサポートがなかったら、昨夏の甲子園もなかったと思います。私らでは管理できません。それに選手たちも監督より栄養士さんに言われた方がやる気が出ると思います」。

 心身ともに夏よりもひと回り大きくなった彦根東がセンバツ初勝利に向けて、パワーアップしている。【白井邦彦】

◆彦根東高校硬式野球部 1894年(明治27)創部。甲子園出場は春が4度目、夏は2度出場し昨夏初勝利(通算1勝5敗)。部員47人。昨秋の近畿大会でベスト8入りし、2季連続で甲子園切符を手にした。主なOBは評論家の田原総一朗、元毎日(現ロッテ)中川隆ら。