ファーストヴィレッジ代表取締役社長 市村洋文氏

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だれにとっても時間は平等にある。だが成果を残す人は、その使い方が違う。そして違いが出るのは、平日ではなく休日だ。トップ営業マンは休日をどう活用して、まわりに差をつけてきたのか。3人の識者に6つのテーマについて聞いた。第3回のテーマは「独立・転職の準備をしたい」――。(全6回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年5月15日号)の特集「一流の人の1週間」の記事を再編集したものです。

市村さんの教え
肩書なしで会える人を書き出す

■起業10年後に生き残っているのは100人中5人だけ

今の会社が不満で転職や独立を考えているという人には、「やめろ」と助言します。

毎年日本で約8万人が起業しますが、5年で85%、10年で95%の会社がなくなります。あなたは起業家100人のうちの5人に入れる自信がありますか。会社が嫌で独立するという人は、まず5人に入れません。成功する人とは、思いが全然違います。

それでも起業したいなら、人脈を棚卸しすること。会社の肩書を外しても「会いたい」といってくれる人を100人書き出してください。次に、自分のスキルがマーケットに通用するものなのかを調べてください。

事業計画は立てましたか。なぜこのビジネスをするのかという理念があり、理念を具現化したビジョンと数値目標は入っていますか。さらに、それを実行するための戦略も必要です。どんな商品で、どこをターゲットにし、どうアクションするのか。すべて書かれていますか。

会社というのは、想像以上にインフラコストがかかります。最も大きいのは人件費です。私が会社を創業した年の月給は5万円。だから初年度から黒字になりました。そこから給料を少しずつ上げていき、今、給料は約200倍です。黒字になるまで自分の給料を抑えられますか。

平日には忙しくて考えられないでしょうから、休日、気持ちにゆとりがあるときに、こういうことをじっくり考えてみるといいでしょう。起業後の自分を客観的に見て、甘さがあったらつぶしていく。その作業を繰り返さないで、独立するのは非常に危険です。

▼現実を見て、自分の甘さをつぶしていけ

川田さんの教え
培ってきた自分の強みを棚卸しする

■顧客は損得ではなく「感情」で選ぶ

転職や独立をする際に重要なのは、培ってきたスキルを生かすことです。そのためにまず、「自分を棚卸しする」ことが大事。私の場合、自分の棚卸しになったのは、本を書き、多くの感想をいただいたことでした。それまでは、「保険を売ること」が得意なことだと思っていたのですが、実は「他人と自分を差別化する」ことが得意なんだと気がつきました。

生命保険の商品には、同じ商品なのに「他社より何割も安い」といった値段の差はありません。では、お客さまは何を基準に保険を選ぶのか。それは損得ではなく感情です。商品や値段に差がないなら、勝負するのは「人」しかないわけです。

ではどうしたら、選ばれる「人」になれるのでしょうか。消費者には、職種ごとに期待している基準値があります。たとえば家電量販店の店員さんが姿勢を崩して気さくに話していても何とも思いませんが、一流ホテルのホテルマンには、踵を揃えて背筋をピンと伸ばして接客をするものだというイメージを持っている。そんな期待値を把握し、「少し超えたこと」をするのです。「あれ、この人ちょっと違うな」というのが重なると、同じような商品であっても、「この人から買いたい」という感情を生み出すことが可能です。

新しいステージにいきたいなら、まずは、スキルの棚卸しをして、「差別化」できるかを確認してみましょう。できなかったら、今の仕事の基準値を探して、ちょっと上を目指すこと。休日はその感性を養い、準備をしたらいいですよ。

▼基準値より「ちょっと上」を目指す

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市村洋文
ファーストヴィレッジ代表取締役社長。
野村證券入社後、前人未到の月間手数料収入6億円を達成。その後、KOBE証券の社長に就任し上場に導く。2007年に現在の会社設立。著書に『1億稼ぐ営業の強化書』。最新刊は仕事を効率化し人脈を驚異的に広げるメモの取り方を書いた『1億稼ぐ人の「超」メモ術』(ともにプレジデント社)。
 

川田 修
プルデンシャル生命保険エグゼクティブ・ライフプランナー。
リクルート時代、年間最優秀営業マン賞受賞。1997年プルデンシャル生命保険に入社し、2001年営業成績全国約2000人中1位となる。著書に、テクニックではなく人間力で営業をする方法を説いた『僕は明日もお客さまに会いに行く。』(ダイヤモンド社)などがある。
 

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(ビジネスライター 嶺 竜一 撮影=和田佳久)