Oskar Alexanderson via Flickr(CC BY-SA 2.0)

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 盛り上がりの中幕を閉じた平昌オリンピックの裏で、韓国経済の浮沈にも関わりかねない大きな判決が下された。

 韓国のソウル高裁は2月5日、朴槿恵前大統領への贈賄罪などに問われたサムスングループ事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)被告の控訴審で、懲役5年の一審判決を破棄し、執行猶予付きの懲役2年6ヶ月の判決を下した。

 昨年2月に拘束された李被告は、昨年8月の1審判決で懲役5年の実刑判決を受け、収監生活を送ってきた。しかし、今回の猶予判決により李被告は約1年ぶりに釈放。この判決に対して韓国国内では「炎上」騒ぎとなっている。

「ターゲット」となっているのは、判決をくだしたソウル高裁のチョン・ヒョンシク裁判長。

 釈放を言い渡した翌日には、大統領府の公式サイトにチョン裁判長の罷免を嘆願する書き込みが500件以上寄せられた。またチョン裁判長を「犬」に見立て(韓国では一般的に「犬」に例えると侮蔑の対象となる)、ソウル高裁の正門には「犬のエサ」がまかれるなどの騒ぎにまで発展した。

 チョン裁判長は同日のインタビューで自身の炎上騒動を「すべて知っている」と話し、「時が経つのを待っている。」としている。

 過熱する判決への不満の声も「社会が成熟していく過程だと思う」と余裕の対応。彼にとって今回の判決は特に悩む事案ではなく、どこまでも証拠や証言にそって判決を下しただけとのこと。

 李被告は、自身の経営権強化につながるグループ内の企業合併を成功させようと、当時の朴政権に支援を求めたとされる。

 昨年に行われた1審では李被告に対し、横領など計5つの罪を認定。今回2審においても1審判決同様、サムスングループが前大統領の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告の支配下にあった財団へ拠出した支援金の一部(約36億ウォン)などが賄賂と見なされた。

 しかし、もともと特検が起訴した賄賂の総額はおよそ433億ウォン。

 ソウル高裁は企業側からの積極的な請託ではなく、「あくまで政治権力の要求に応じた受動的なもので、賄賂の対価として得た利益はない」とし、朴被告らへの贈賄を一部無罪とした。

 グループ資金の横領についても多くが無罪に。1審に続き、朴元大統領と崔被告が共謀し、贈収賄で主導的な立場を果たしたと認定した。

◆「司法史上前例のない財閥贔屓の判決」

 この判決に対して特別検事チームは「我々が提示した証拠および、33回にわたって提出した意見書の主張内容を徹底的に無視した偏向的で誠意のない判決だ」と主張。「司法史上前例のない財閥贔屓の判決」と逐一批判している。

 ネット上では、「430億ウォンもの賄賂が合法化するなんて、さすがのイ・ジェヨン共和国WW」、「同じ国民として恥ずかしい」、「世界的に恥をかくのは、我々国民の役目」、「サムスングループは経営面では依然として厳しいけど、政治的には大成功だな」、「今回判決をくだした裁判長は早急に辞職を」など、厳しい意見が相次いでいる。

 一方で2月23日、サムスン電子の華城(ファソン)キャンパスで、最先端の微細工程(EUV)生産ラインの起工式が行われた。

 この生産ラインはサムスンが6兆5000億ウォン(約6500億円)を投じて建設したもの。イ・ジェヨン被告の釈放を受けた直後、初となる企業PRの場。

 会場には金基南(キム・ギナム)三星電子DS部門長(社長)らサムスングループの幹部を筆頭に、子会社の社長やクォン・チルスン国会議員、華城市副市長、地域住民など300人余りが出席した。

 しかし、司会者のカウントダウンによって降りてきた垂れ幕に、関係者は凍りついた。「華城 EUVライン 起工式」と書かれた大きな垂れ幕が、なんと上下逆さまである。

 凍りつく関係者のそばで、会場からはざわめきと笑いが起きた。そもそもサムスングループは「管理のサムスン」と称されるほど、徹底かつ完璧な行事の進行に定評がある。そんな「サムスンらしかぬ」ハプニングの様子は一瞬にしてSNSで広まり、ネットでは「厄払いいけば?」などと大盛り上がり。

 トップ不在が長引き、経営への影響が懸念されていたサムスン。李被告釈放にあたり、今後は経営にも復帰する見通しだが、当分逆風が続くのは確実。政権からのサポートはもうない。

 失墜した企業イメージの回復は、そう簡単なものではなさそうだ。

<文・安達 夕 @yuu_adachi photo by Oskar Alexanderson via Flickr(CC BY-SA 2.0)>