米アマゾン・ドットコムが、当座預金に似た金融サービスを開発すべく、米国の大手銀行と協議していると、米ウォールストリート・ジャーナルが伝えている。

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eコマースの代金を口座から引き落とし

 この協議はまだ、初期段階であり、計画は実現しない可能性もある。ただ、もし実現すれば、アマゾンは銀行と提携し、若年層の顧客や銀行口座を持たない顧客に訴求できるサービスを提供する可能性があると記事は伝えている。

 具体的なことは明らかになっていないが、例えば、顧客がアマゾンのサイトで買い物をする際、アマゾンに登録したクレジットカードではなく、アマゾンブランドの銀行に開設した自分の口座から直接、商品の代金を支払えるようになる。

 このほか、顧客が小切手を切ることができたり、ATM(現金自動預払機)を利用したりできるようになるといった可能性も考えられるが、現時点で詳細は分からないという。

 この計画に関し、アマゾンは昨秋、数行の銀行から提案を募った。今は、米大手銀行のJPモルガン・チェースと米地銀大手のキャピタル・ワンなどから出された案を比較、検討していると、事情に詳しい関係者らは話している。

 仮にアマゾンブランドの銀行口座サービスが立ち上がれば、同社は、商品販売の決済時に、金融サービス企業に支払っている決済手数料を削減したり、顧客の収入や支出に関する行動データを得たりすることができるようになるかもしれないと、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

銀行とは良好な関係

 ただ、アマゾン自らが銀行業を始めて、金融業界の破壊者になることは、なさそうだとも同紙は伝えている。

 というのも、同社は、これまで、JPモルガン・チェースやキャピタル・ワンなどと提携し、さまざまなサービスを展開しており、これら銀行と良好な関係を保っているからだ。

 例えば、同社は、先ごろ、傘下の高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)」で、最大5%の割引を提供すると発表したが、その条件は、JPモルガン・チェース銀行が発行するアマゾンブランドのクレジットカードを持っていること。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、JPモルガン・チェースは2002年から、アマゾンブランドのクレジットカードを発行している。

(参考・関連記事)「アマゾン、実店舗の集客拡大戦略」

 また今年1月、アマゾンとJPモルガン・チェース、そして著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる投資会社、バークシャー・ハザウェイは、3社共同で、従業員向けのヘルスケアを手がける新会社を設立すると発表。

 このほか、キャピタル・ワンは以前から、アマゾンのAI(人工知能)スピーカー「Amazon Echo」に音声アプリを提供している。ウォールストリート・ジャーナルによると、同行は、アマゾンのクラウドコンピューティングサービスを利用している銀行の中で、最大規模の1行という。

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アマゾンの決済ビジネス

 もう1つ、興味深いのは、ウォールストリート・ジャーナルが、「Amazon Pay」に言及している点だ。

 Amazon Payとは、アマゾンが他社のeコマースサイトに対し、決済手段を提供するサービス。顧客は、アマゾンのアカウントを使って、それらeコマースサイトにログインし、アマゾンに登録したクレジットカードで決済する。同社は、これにより手数料収入を得ているが、ウォールストリート・ジャーナルによると、このビジネスは今のところ、それほど成功しているわけではない。

 そこで、アマゾンは、このサービスを実店舗にも展開することを検討している。今回報じられた銀行口座サービスも、おそらく、こうした決済ビジネス拡大に向けた施策と言えるのかもしれない。

筆者:小久保 重信