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 現在、自動運転の開発が日々進んでいるわけだが、今やウィンドウズPCの最新CPUをも凌ぐ、いやスーパーコンピュータに匹敵するほどの演算処理能力をもったGPUが開発され、それがクルマ1台に載せられるという事態になっている。車にはその他にも、各所にセンサーやらカメラやらが取り付けられて、それらから得られる多くの情報を処理して自動運転が成り立つと言うわけである。さらに、その“走る”コンピュータはサーバーやデータセンターにつなげられ、IoTを実現していこうとしている。

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■自動運転は最小のアルゴリズムで可能?

 そんな巨大コンピュータと化していく自動車だが、ある天才が自動運転システムを、PCにも搭載されているCPUを持った小型コンピュータと数台のカメラで実現しようとしている。それが、天才ハッカー、ジョージ・ホッツ氏だ。17歳の時、iPhoneやプレイステーション3を世界で初めてハッキングして一躍有名になった人物だ。

 現在の常識からは、そんな小さなCPUで車の周辺の状況を情報でとらえ、処理していくのはムリではなかろうかと考えるのだが、プログラムというものは不思議なもので、アルゴリズムによってはとてもコンパクトなものになる。ソフトハウスを経営していた時のことだが、同じ作業を天才と凡人にプログラムしてもらった結果、天才のプログラマのものは芸術的ともいうべきアルゴリズムで、bit命令を使用した非常にコンパクトなプログラムだったのである。その分コンピュータの処理スピードも速くなり、消費電力も食わないだろうと思われた。(ここで言う天才・凡人は決して差別的に使用しているわけではない。)

■実用化と量産の難しさ

だから、天才と言われるホッツ氏の自動運転プログラムはそのようなものなのだろうと想像できる。しかし、テスラのイーロン・マスク氏は、ホッツ氏のデモ走行車を「そんな稚拙なもの!」と一蹴しているという。いち早く、自動運転車を「実用」車として製造販売できているテスラから見ればそうなのかもしれないが、テスラも「量産」技術においてはモデル3の生産遅延で躓いている。

 実は、筆者は前述のソフトハウスで、天才のものではなく「凡人のプログラム」を採用した。なぜか?それはメンテナンスしやすい構造になっていたからである。いくら天才のプログラムで優秀なものであっても、だれもが扱えるものでなければ「実用」的ではないかもしれないのだ。時代を経てもそのプログラムが半永久的に使用できるようにと考え、メンテナンスしやすいプログラムを選んだのだ。それが、「商品力」を考える経営者と「技術力」を考える技術者の視点の違いともいえる。

 これからも自動運転システムは、レベル5(完全自動運転車)に向けて進化し続けていくと思うが、そのような一見理不尽ともいえるような事柄も含めて動いていくのだろう。それにはただ勝ちたいと言う欲求だけでなく、どのような人間社会にしていきたいかを想像することが必要ではないかと常々思うのである。