「Thinkstock」より

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 どれほど「おしどり夫婦」と評判の仲のいい夫婦であっても、長い結婚生活では一度や二度の危機を経験するのは当たり前。芸能界でも昨年、俳優・太川陽介さん(58歳)の妻で女優の藤吉久美子さん(56歳)の不倫疑惑が報じられたように、好感度の高い熟年夫婦でさえ、それは例外ではない。

 太川さんと藤吉さん夫婦の場合、妻に不倫疑惑が持ち上がっても「(妻からの謝罪や説明を受けて)妻の言い分を信じる。自分からは離婚は言い出さない。これから受けるであろう世間からの非難に対しては、夫である自分が妻を守る」といった内容を太川さんが宣言。これからも家族を守っていく決意を語り、トラブルを乗り越えていく姿勢を見せていた。

 一般的にも、「妻の不倫疑惑」で夫婦関係の相談に訪れるケースは増えている。ひと昔前であれば、夫婦問題の相談といえば、妻からの「夫の不倫や浮気」がスタンダードだったものの、ここ数年では明らかに夫からの「妻の不倫や浮気」に関するものが増えているのを実感する。多くの女性が結婚後も社会で活躍するようになり、経済的に自立することが可能になると、いろいろな意味で自由を手にすることができるようになるから、ということもその理由のひとつだろう。

 熟年夫婦の場合、妻が不倫に走る原因として「夫からの何気ないひと言」も軽視できない問題になっている。

「ラストストロー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「最後の藁」という意味のラストストローは、「どれほどタフなラクダでも、積み荷の重さの限界を超えた場合、たった1本の藁だとしても、それを積むことで簡単にラクダは潰れてしまう」という喩えにもなっている。熟年夫婦においても、「長年の結婚生活で、ずっと我慢を重ねてきたけれど、もうこれ以上は限界!」と、あるとき突然、妻の心が夫から離れてしまうことがある。そのきっかけになるのが、「夫からの何気ないひと言」というラストストローなのだ。

 妻の心の変化に鈍感な夫にとっては「たった、それだけのことで?」と納得できないかもしれないが、我慢を重ねてきた妻にしてみれば、夫にはこれまでのアウトカウントが累積値として存在しているもの。最後のたったひと言が命取りになって、夫婦関係が終わってしまうことにもなりかねないのだ。そして、夫から心が離れた妻は、夫とは別の男性のもとへと走るケースも少なくない。

 実際、夫とは別の男性との恋愛に走り、熟年離婚にいたった女性たちが経験した「夫からの何気ないひと言」には、次のようなフレーズがある。

・NGワードその1:「で、何が言いたいの?」

 夫婦間の会話は円満な関係をキープするための大切なコミュニケーションのひとつ。とくに多くの女性の場合、夫ととりとめのない話をすることで安心感や信頼感を得る役割も果たしている。肝心なのは、妻の話に必要なのは「共感」であって「解決」ではない、ということ。結論を急ぎたいあまり、「で、何が言いたいの?」と詰め寄る夫に対し、妻は「ただ聞いてほしいだけなのに」「『大変だったね』『そうか、そうか』と認めてほしいのに」などと不満を募らせることになる。

・NGワードその2:「手伝おうか?」

 たとえば、部屋の掃除をしているときや、食事の後で使用した食器を洗っているときに、「手伝おうか?」という、一見、ソフトに聞こえる夫の言葉に傷つく妻もいる。「手伝う」という言葉の背景には、「家事は妻がやって当然のこと。でも、自分は親切で“よき夫”だから、たまにはキミの仕事を手伝ってあげてもいいよ」というニュアンスが感じられるという。もしも、“その気”があるのなら、「手伝おうか?」とわざわざ言葉にするより前に、黙ってさりげなく行動に移すほうが、妻からは感謝され、夫婦関係はスムーズにいくはずだ。

・NGワードその3:「オレのメシは?」

 休日など、夫が家にいるときに妻が外出する際、「オレのメシはどうなっているの?」と聞く夫に不快感を露わにする妻は意外と多い。

「逆の立場なら私は夫に『私の夕食はどうしたらいいの?』なんて聞くことはしない。それなのに、どうして自分だけ食事の世話をしてもらうのが当たり前だと思っているのだろうか」(50代女性)

「妻が外出する条件として、自分や子どもの食事の支度が入っているのが納得できない。自分の食事くらい、自分でなんとかしてほしい」(40代女性)

 こうした声もあるように、自分が快適に生活することしか考えることができない夫に対し、妻は怒り、呆れるのだ。

 このように、「まさか、そんなひと言で?」と思うようなことが、妻に離婚を決意させる引き金となっていることはよくあること。「ウチの妻に限って、そんなことはないだろう」といった自覚がない人ほど、夫婦関係の危機の深刻度が高いのも興味深い。妻を不倫や浮気に走らせないためにも、いつも何気なく口にしている言葉を改めて見直してみてはいかがだろう。
(文=岡野あつこ/夫婦問題研究家、NPO日本家族問題相談連盟理事長)