ヤフーがエンジニアとして優れた実績を持つ人に、初年度から年収650万円以上を提示している。入社時に18歳以上30歳以下で就業経験のない人が対象だ。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2016年の大卒初任給の平均は約20万円となっている。年に2回、2か月分のボーナスが出たとしても年収320万円だ。

初年度から650万円というのは破格の待遇だといえるが、ネットでは「人材買い叩きすぎ」「このスキルだったら安くない?」といった声が上がっている。

「起業経験」「自身が開発したアプリのDL数100万以上」などの実績が必要

初年度の年収が650万円以上となるのは「エンジニアスペシャリストコース」で、以下のいずれかの条件を満たすと応募することができる。

エンジニアリングに付随する起業経験
・技術書の執筆経験
・自身が開発したアプリのDL数100万以上
・Kaggleにおいて、単独参加でコンテストTOP10%入賞経験
・競技プログラミングレート保持者
・トップカンファレンスでの論文発表経験

こうした条件はどの程度難しいものなのか。都内のIT企業に勤務する男性エンジニア(20代)は、次のように話す。

「『技術書の執筆』や『アプリ100万DL』はかなりハードルが高い。この条件を満たす人はわざわざヤフーに入社しないんじゃないですか。ただ、競技プログラミングは学生でもサークルでやって、レートを持っている人もいます。修士課程で研究をしていれば、論文発表経験があるという人も少なくないと思います」

ネットでも「100万DLレベルなら普通に自分で稼げるのでは」「この条件なら10万ダウンロード程度」といった声が出ていた。技術書の執筆や100万DLといったスキルがあれば、わざわざヤフーに入る必要がないと感じるようだ。

年収についても、「650万円は高いですが、マイクロソフトもサイバーエージェントもかなりの年収を提示している。外国だともっと高いですし、優秀な人の中には新卒から海外で働く人もいます」(前出のエンジニア)と話していた。日本の新卒初任給の水準からするとかなりの高額だが、エンジニアという職種の中でもさほど高いというわけでもないようだ。

「オーバードクターやフリーランスを想定しているのでは」

エンジニアの初任給が一般の水準よりも高くなるのはなぜなのか。人材研究所の曽和利光氏は、「IT業界そのものが伸びており、エンジニアへのニーズが高まっている。しかし大学で情報処理を学ぶ人は簡単には増えない」と話す。

dodaの転職求人倍率レポート(2018年1月)によると、「技術系(IT・通信)」の求人倍率は7.98倍に上っている。平均2.35倍と比べると、いかに「技術系」の人材が不足しているかがわかる。

「今回、ヤフーは、中途採用で入社してもおかしくないような即戦力を求めています。オーバードクターやフリーランスを想定しているのではないでしょうか。ただ650万円はそれほど高いとはいえないと思います」