まるで茶室!?
【蔵前】心落ち着きたい時に!ネルドリップコーヒーと自家製チョコレートの喫茶〈蕪木〉

心落ち着きたい時に訪れたいのが、蔵前にある喫茶〈蕪木〉。ネルドリップコーヒーに自家製チョコレート、茶室を思わせる静穏な空間まで、店主のこだわりが詰まった〈蕪木〉の魅力をお届けします。

コーヒーとチョコレートが紡ぐ豊かな時間が過ごせる〈蕪木〉/蔵前

外観に窓はなく、中はうかがい知れない。小さなドアは非日常空間へと通じる茶室の「にじり口」を思わせる。蔵前駅から徒歩7分。

コーヒーの焙煎師であり、チョコレート技師の蕪木祐介さんが開いたこの店は、ネルドリップのコーヒーと自家製チョコレートが楽しめる場所。ここには彼が「喫茶店を開くと決めた18歳の頃から考えていたこと」が集約されている。

小さなドアノブを引いて中に入ると、採光を最小限に抑えたほの暗い空間が広がる。入り口側の漆喰の壁に窓はなく、表にはとても控えめな看板のみ。まるで結界を引いたかのように守られた静穏な空気に、ふと茶道の茶室を思い起こす。

ドリップ中の蕪木さん。昨年12月には念願だったコーヒー発祥の地・エチオピアへの旅をした。卓上にあるのは「琥珀の女王」900円。

「僕にとって喫茶店は狢を整える場所〞。そういう空間は東京にこそ必要だと思うんです。そしてこのほの暗さも、息を整えるために大切な要素です」

自身も「少し薄暗い店が好き」という蕪木さん。「たとえば神保町の〈ミロンガ〉や福岡の〈珈琲フッコ〉など…。日本家屋の光の記憶というか、ほの暗さを心地よく思う感覚は日本人のDNAに刻まれているんじゃないでしょうか」

確かにここにいると、目の前のコーヒーとチョコレートの風味に集中し、和音のように織りなすブレンドの香味やチョコレートの芳潤な果実味が驚くほど響いてくる。

深煎りの「羚羊(かもしか)」700円。チョコレートはコーヒーの風味と合わせて。200円。

やがて日常の雑多な感情が整理され、気持ちが澄んでいく。これが蕪木さんの言う狎阿┐〞ということ。
「栗の一枚板のカウンターの高さや手触り、イスとのバランスもすごく意識しました。器は大倉陶園のもの。鮮やかな白、繊細な飲み口、華奢な取っ手。滋味深いコーヒーが纏う牋〞にふさわしいから」

意匠も、光も、そして丁寧な所作も。全てはお客さんが心を整えるために考えられたこと。コーヒーとチョコレートという最高の嗜好品で客をもてなす蕪木さんは、いわば茶室の亭主なのかも。
「確かに通じるものがあるかもしれません。でも茶事がハレならば、ここは日常から少しだけ抜け出すハレとケの間。だから元気なときだけでなく、むしろ疲れ切ったとき、悲壮感漂う顔で来てほしいんです」と笑う蕪木さん。東京にはやはり、こんな場所が必要なのだ。

〈蕪木〉
ブレンドは3種。珈琲豆800円〜、板チョコレート1,200円〜。
■東京都台東区鳥越1-15-7 
■03-5809-3918
■13:00 〜 20:00  水休 
■8 席/禁煙

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(Hanako1150号掲載/photo : Satoshi Nagare text : Yoko Fujimori)