もともと企業における、社内コラボレーションのために構築されたSlack(スラック)が、業務外コミュニケーション用のツールに変化してきている。ブランド、エージェンシー、スタートアップのマーケターたちは、緊急の対応が必要なときに連絡を取れる人間や、仕事を依頼する可能性のある人間と繋がるためにSlackのコミュニティを利用している。

インターネットの黎明期に多く存在した、フォーラム(インターネットのアプリケーションを通じて特定の分野、価値観や目的を持った利用者が集まり、持続的に議論するためのインターネットコミュニティ)のように、Slackコミュニティはニッチな話題に関して構築されていることが多い。たとえば、ウーバー(Uber)、セールスフォース(Salesforce)、Appleなどのブランドのマーケターたちが起業家やデザイナーに連絡をとって新製品の発売やフィードバックについて議論する場所として#Launchがある。

さらに、デザイナーハングアウト(Designer Hangout)はUXデザイナーのためのコミュニティ、オープンバザー(OpenBazaar)はビットコインに関する商取引構築に関心のある企業を集め、イーコムトーク(eCommTalk)はショッピファイ(Shopify)ファン向けのものだ。テック、中小企業、フリーランサー、ゲーム業界の女性を中心としたコミュニティもある。

オンラインジーニアス



これらのグループのなかには、より広い目的のために作られたものも存在する。ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson&Johnson)のアナリストおよびビジネステクノロジーリーダー、ザック・シュライエン氏は自身のサイドビジネス、リフトプロテインマフィン(Lift Protein Muffins)用に作成したFacebook広告のフィードバックを得ようと思い、1万1000人を超えるマーケターが参加しているSlackコミュニティ、オンラインジーニアス(Online Geniuses)に目を向けた。

「驚かされた。評価してくれる人間がすぐに5人も現れた」と、これまで1年半に渡って毎日オンラインジーニアスを利用しているシュライエン氏は述べた。現在、シュライエン氏は、広告を評価してくれたユーザーのなかから1名、自身の会社のFacebook広告を管理してもらうためのメンバーを採用する準備を進めている。

また、グループで学んだことは、新技術に関する情報であれ、Facebookアナリティクスのベストプラクティスに関する情報であれ、すべてジョンソン・エンド・ジョンソンで共有しているという。「オンラインジーニアスは、デジタルマーケティングに精通し続けるのに役に立つ。自分が学んだ教訓を、ジョンソン・エンド・ジョンソンで私がサポートしているビジネスパートナーに伝えることができる」と語った。

マーケターが好む理由



PRエージェンシー、ジャンピングスクワラル(Jumping Squirrel)のCEOで共同創業者である、デビッド・マルコビッチ氏は、同じ業界の企業にいる似たような考えを持つ人たちを繋げる手段として、2015年にオンラインジーニアスを立ち上げた。マルコビッチ氏によると、いまでは週に5万以上のメッセージが、#seo、 #social、そして#paid(ペイド広告)などの特定の話題に設けられたチャンネルでシェアされている。

また、#hiring(採用)チャンネルでは、マーケターが求人を投稿することも可能で、同コミュニティは毎月だいたい2名のゲストを招いて、ヴェイナーメディア(VaynerMedia)のゲイリー・ヴェイナーチャック氏やレッドブル(Red Bull)の統合マーケティングのバイスプレジデントであるアリソン・デービス氏といったマーケターたちがユーザーの質問に答えるディスカッションの場を設けている。

迅速なサポート以外にも、さまざまな経験を持つ人たちと関係を構築できる機会が、マーケターたちをこうしたSlackコミュニティに惹きつけている。

人工知能プラットフォームを展開する企業と協業しているカナダのスタートアップ企業ブームラボAI(BoomsLabs Ai)社の社長、ユバン・マルテ(Jevin Maltais)氏は、「これほど幅広い分野に精通する人々と繋がれる手段は思いつかない」と述べた。「Google AdWordsやFacebook広告、PRに関する質問があれば、そこにいる人たちは皆、異なる経験をしているので、そのチャンネルに質問を投げかけて、それについて容易に議論することができる」。

スピーディさも魅力



オンライン上に限らず、彼らは現実世界にもコミュニティで得た関係を活用している。マルテ氏はオンラインジーニアスを通して出会った人間を採用し、その人物と親しい友人になっている。「ただ彼とビデオゲームをしていただけだ」と、マルテ氏はいった。

オンラインジーニアスは、スウェーデン、スペインのバルセロナ、ニューヨーク、アトランタを含め、月に10回公式集会を開催。次回はチュニジアで実施する予定だ。また、これらの集会の参加者は10人から500人に及ぶと、マルコビッチ氏は述べた。オンラインジーニアスのようなSlackコミュニティのもっとも優れている点のひとつが、どこに拠点をおこうとも、コミュニティを持てることだと彼はつけ加えた。

「海外旅行をしているとき、たとえそこが行き当たりばったりで向かった場所でも、30分間自由にできる時間があればコミュニティの誰かにメッセージを送ると、10分以内に誰かから連絡が帰ってくる。そのくらいスピーディなコミュニケーションが可能だ」と、同氏は述べた。

スパマーも少ない



LinkedIn(リンクトイン)やFacebookグループを含め、ほかのソーシャルサイトには多くのスパマーがおり、それがマーケターがSlackでのコミュニケーションを好むようになっている大きな理由となっている。

「ほかのソーシャルサイトは、ただただ押しつけがましい。サービスをただ売り込もうとしている。そこには対話はない、そしてクオリティも低い」と、シュライエン氏は述べる。

Slackコミュニティの大部分はマーケターに申請を求めていないが、オンラインジーニアスには、結果的にコラボレーションを台無しにすることで知られているグループ、つまり、リクルーターやセールスパーソンを排除するように設定された厳しい申請プロセスがある。申請が許可されるには、マーケターがOnlineGeniuses.comの申込用紙に記入する必要がある。マルコビッチ氏と一緒にオンラインジーニアスで働く20人を除いて、申請者がマーケティング業務に就労していることを確認する15人のモデレーターがいる。もしこのグループがすべての人を受け入れたら、およそ6万人のメンバーにまで簡単に成長してしまうだろうと、マルコビッチ氏は語った。

「マーケターのためにコミュニティを運営することは本当に難しい。というのも、本来我々(マーケター)はスパムを拡散することが目的で、それがマーケターの仕事だからだ。しかし、コミュニティのメンバーに迷惑をかけるような行為を行う場合は、その人物はコミュニティから退会してもらわざるを得ない」と、マルコビッチ氏は述べた。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:Conyac)」