世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第178回は、芹澤和美さんが1週間をかけてケープタウン、ダーバン、プレトリアをめぐります。

ワイン三昧の時間が過ごせる
ワインランドへ


ワイン大国の南アフリカで、最も優れた生産地として知られているのがワインランド。

 南アフリカの旅というと、オープンカーに乗って野生動物を観察する「サファリ」のイメージが強い。もちろんそれも魅力的だけれど、この国の表情は多彩で、実は大都会も楽しい。たとえば、ケープタウン、ダーバン、プレトリアは、旅行先としても人気の街。私も何度目かの南アフリカ旅は、この3都市を1週間でめぐることにした。


ケープタウンは、海と山に恵まれた大都会。

 最初に訪れたのは、南端のケープタウン。この街に来たのなら、車で約1時間のワインランドに足を延ばすことはマスト!

 ワインランドはその名のとおり、約700軒ものワイナリーが点在する地域。ここが南アフリカきっての上質なワインの産地となっている理由は、気候。昼は日差しが強く気温が高い一方で、大西洋とインド洋がぶつかり発生する霧が朝晩の気温を下げることから寒暖差が生まれ、ワインに適したブドウが育つという。


ワイナリーのテラス席でランチ。空気も澄んでいて気持ちがいい!

 一帯には、家族経営のアットホームなところから洗練されたデザイナーズワイナリーまで、多くのワイナリーが点在している。見学や試飲ができるのはもちろんのこと、なかにはラグジュアリーな宿泊ロッジやレストランを併設しているところも。そんな個性さまざまなワイナリーをハシゴするのが、ここを訪ねる醍醐味だ。


名門「ラ・モッテ」のテイスティングルーム。ダイニングのようにゴージャス!

 ワインランドにはいくつかの街がある。代表的なものが、フランシュフックとステレンボッシュだ。17世紀にフランスの宗教的迫害から逃れてきた人たちによって開拓されたフランシュフックには、今もフランス風のワインを造る老舗ワイナリーが多く存在している。


フランシュフックを代表する名門「ラ・モッテ」。敷地内には豊かなグリーンが。

 街を代表する名門ワイナリーといえば、「ラ・モッテ」。樫の大木が育つ美しい庭でテイスティングをしたり、重厚感ある貯蔵庫を見学したりするだけでなく、ランチを食べたり、併設するワイン雑貨店で買い物も楽しめる。


キッチン雑貨やワイン用のアイテムなど、お土産も見つかる併設のショップ。

 ここでの一番の思い出は、緑を眺める開放的なテラスで食べたランチ。ぶどうの皮を練りこんだバターや、南アフリカの伝統料理を現代風にアレンジした料理はおいしいだけではなくオリジナリティもある。先ほどテイスティングして気に入ったワインとともに味わうから、なおのこと楽しい。


伝統的な南アフリカ料理をモダンにアレンジした「ラ・モッテ」のランチに舌鼓。

La Motte(ラ・モッテ)
所在地 R45 Main Road, Franschhoek Valley
電話番号 021-876-8000
https://www.la-motte.com/

あの有名ジュエラーが営む
豪華なワイナリーへ


目の前に広がるブドウ畑や山を眺めるテラスで、テイスティングやランチを。

 フランシュフックの隣町、ステレンボッシュは1680年代にオランダ東インド会社が初めてワイナリーを築いて以来ワイン作りの歴史が続く街。


ステレンボッシュの中心部にある教会。名門大学があって、歴史も長いこの街には、文化の薫りが漂う。

 ここは南アフリカで2番目に古い街でもある。有名なステレンボッシュ大学があり、街の雰囲気はのどかながらも上品な文教都市といった感じ。オランダ植民地時代に造られたケープダッチ様式の建物を利用したかわいらしいカフェや雑貨店が立ち並んでいて、ひとときもカメラが手放せない。


ステレンボッシュのワイナリー「ディレア グラフ エステート」に併設するロッジのロビー。現代アフリカンアートがいたるところに。

 ステレンボッシュで訪れたのは、「ディレア グラフ エステート」。ここはダイヤモンドジュエリーで知られるグラフ社が経営する、ラグジュアリーなワイナリーだ。


ロッジにあるプールからもブドウ畑を一望。

 厳しい基準のあるフランスのホテル・レストラン協会「ルレ・エ・シャトー」にも加盟しているだけあって、ここはとにかく豪華。敷地内には、手入れが行き届いた庭園やブティック、プライベートプールのあるロッジ、ブドウ畑を一望するインフィニティプールとジャグジーを擁するスパなど、贅を尽くした施設がある。


左:日本ではなかなか手に入らないワインは、気に入ったら購入するが勝ち!
右:ブドウ畑と山を見渡すレストランのテラス席。

 この旅を終えて帰国後、気になってお邪魔してみたのが、女性の審査員だけで行われるアジア最大規模のワインコンクール“SAKURA” Japan Woman's Wine Awards、通称「サクラアワード」。ワインランドで生まれたワインの数々が受賞していた。


南アフリカ観光親善大使の女優、高橋ひとみさんが特別審査員をつとめた「サクラアワード」。今年も南アフリカ産ワインが数々の賞を受賞した。

Delaire Graff Estate
(ディレア グラフ エステート)
所在地 Stellenbosch, 7602
電話番号 021-885-8160
http://www.delaire.co.za/

ビーチの特等席でディナーを
満喫するケープタウン


ケープタウンの海辺のレストランは、ローカルの女性たちで賑わう。

 ワインランドでワイナリーの見学やランチを楽しんで都心に戻っても、まだまだ遊べるのがケープタウン。治安がいい街だから、比較的、夜遅くまでレストランが賑わっている。この日のディナーは、ウォーターフロントにあるレストランへ。


晴れた日のビーチ席は最高の気分!

 「グランドアフリカ・カフェ&ビーチ」は、倉庫を改装したレストラン。スタイリッシュな店内にも惹かれるけれど、天気がよかったので、ビーチ席をリクエスト。

 私が訪ねた10月後半は、18時台でもまだ空は明るいから、外で食べるほうが断然気持ちがいい。目の前に行き交うボートを眺めながら食事をしているうちに、だんだんと日が暮れていくシチュエーションも最高だった。


サーブするのも重そうなシーフードプラッター。これで3人前!

 オーダーしたのはもちろん、シーフードプラッター。南アフリカというと肉料理のイメージがあるけれど、海沿いの街は新鮮な魚料理が名物なのだ。ムール貝にオマール海老、牡蠣、白身魚……と、ボリュームは日本では考えられないほど。プラッターを何人かでシェアして賑やかに食べるのがおすすめだ。

Grand Africa Cafe & Beach
(グランドアフリカ・カフェ&ビーチ)
所在地 4 Haul Road, V&A Waterfront, Granger Bay, Cape Town
電話番号 021-425-0551
http://www.grandafrica.com/


「V&Aウォーターフロント」では、ミュージシャンの路上パフォーマンスが楽しみ。ときには有名なバンドが登場することも。

 食後は、ここからほど近い大規模なショッピング・コンプレックス、「V&Aウォーターフロント」へ。ハイブランドだけでなく、庶民的なドメスティックブランドや南アフリカ発コスメショップ、スーパーマーケットなどがあるので、お土産はここで一気にまとめ買い。敷地内のパフォーマンスを見ながら散策するだけでも楽しい。

V&A Waterfront
(ビクトリア&アルフレッド・ウォーターフロント)
所在地 19 Dock Road, V&A Waterfront, Cape Town
電話番号 021-408-7500
http://www.waterfront.co.za/

世界の誰もがその名を知る絶景まで
都心から1時間のドライブ


ケープタウンでは、都心に勤めながら、住まいは海と山に恵まれた郊外に構える人も多いのだそう。そんな暮らしがしてみたい!

 ケープタウンは近代的で洗練された街だけれど、都心部から車で1時間も走れば、雄大な自然が息づくケープ半島にたどり着く。そこにいたるまでのドライブコースも絶景続きだ。


いつか見てみたかった喜望峰。かつて多くの探検家がここを航海した。

 ケープ半島の有名スポットといえば、大西洋とインド洋が出会う喜望峰。アフリカ最南端と誤解されることもあるけれど、実際は最南西端。ここから約150キロ南東にあるアグラス岬が最南端だ。


喜望峰を一望するケープポイント。ケーブルカーもあるけれど、麓から20分ほどで歩いていくこともできる。

 そんな位置的なことはさておき、そのダイナミックな景観には圧倒される。この地のかつての名前は「嵐の岬」。ポルトガル人の探険家バーソロミュー・ディアスによって発見された当時は海域が荒れていて座礁する船も多かったことから、そう呼ばれていたのだ。

 その後、ポルトガル王が東方への航路発見に希望を抱いて「喜望峰」と改名したという。そんな大航海のロマンを感じるエピソードが、目の前の雄大な景色と重なる。


右手は大西洋、左手はインド洋。ダイナミックな風景に感動!

 喜望峰を望む絶好のロケーションにあるのが、丘の上のケープポイント。かつて大海原を照らす灯台があった展望スペースまで上れば、片側に大西洋、片側にインド洋という貴重な絶景を眺めることができる。


ボルダーズビーチで見たペンギンのつがいにほっこり。

 ケープ半島には、雄大な風景もあれば、心が和む風景もある。目の前をペンギンがヨチヨチと歩く姿が観られるのは、ボルダーズビーチ。

 ペンギンは飼われているのではなく、すべて野生だ。ある時、1組のペンギンのつがいがこの地を気に入って暮らし始めたところ、次々と仲間が「いいね!」「いいね!」と棲みつき、今や約2000羽のペンギンがここに暮らしているのだという。


ビーチには野生ペンギンの群れが。旅行者はボードウォークから彼らを観察することができる。

 地元の人たちは、ビーチは占領されるし、庭で糞をされるし、おまけに満月にブーブーと鳴かれてちょっと困っている。でも、「しょうがないなあ」と優しく見守りながら保護活動をしているのだそう。そんな話にも、ほっこり。

モナコ大公がハネムーンに訪れた
海辺のクラシックホテル


風格ある「オイスターボックス」。改装を経て機能的になったものの、クラシカルな雰囲気はそのまま。

 ワインと絶景を堪能した後は、一路、東海岸のダーバンへと向かった。ここは高層ビルが立ち並ぶ大都会と美しいビーチが調和するリゾート都市。ケープタウンから飛行機でわずか約2時間と近く、便数も多いので、かぎられた時間で南アフリカを周遊するならぜひ旅のプランに入れたい街だ。


イギリスの統治時代の面影を残すコロニアルな雰囲気の内装。

 滞在したのはインド洋を見下ろす絶好のロケーションにあるホテル、「オイスターボックス」。コロニアル調のインテリア、回転式の玄関ドアや錬鉄製の手すりなど、いたるところにノスタルジーが薫り、足を踏み入れたとたん、別世界へと誘われる。


モナコ大公もハネムーンに訪れた名ホテル。館内には絵になるスポットがたくさん。

 この名門ホテルは、各国のセレブにも愛されている。モナコ大公のアルベール2世とシャルレーヌ妃がハネムーン先に選んだのは、元五輪水泳選手であった妃の祖国、南アフリカ。そのときに滞在したのは、このホテルだった。


ホテルの名物はカレーブッフェ。トッピングもいろいろあって、何を選ぼうか迷うほど。

 そんなラグジュアリーなホテルの名物は、なんとカレーブッフェ。「世界で一番おいしいカレー」を謳うブッフェでは、十数種類が揃う。ダーバンは古くからインド系の移民が多く、いろいろな種類のカレーが街の味として根づいていることから、メニューに取り入れているのだそう。

 実際に味わってみて、その本格的な味わいに、「南アフリカまで来てカレー? しかもブッフェ?」と侮っていたことを反省した。


インド洋に面したゲストルーム。夕暮れどきのテラス席で過ごすのは至福のひととき。

 カレーはサプライズだったけれど、なにより記憶に残っているのは、部屋のテラスで眺めた夕焼け。オレンジ色に染まるインド洋を眺める時間は、どんな豪華なインテリアよりも贅沢に思えた。


ホテルの前に立つのは、赤と白に彩られたウムランガ灯台。ホテルができる前の1869年から、海を見守り続けている。

The Oyster Box
(オイスターボックス)
所在地 2Lighthouse Road, Umhlanga Rocks, 4319 Durban
電話番号 031-514-5000
https://www.oysterboxhotel.com/

花園と化す美しい花の都プレトリア


ダーバンからヨハネスブルグまで飛行機で約40分、空港から車で約1時間。ヨハネスブルグから国際線で帰国せず、わざわざ足を延ばした理由は、ジャカランダを見るため。

 南アフリカ南部を周遊する旅で最後に訪ねたのは、首都のひとつであるプレトリア。この国は首都機能をプレトリア(行政)、ケープタウン(立法)、ブルームフォンテーン(司法)の3都市に分けていて、政府機能はほとんどこの街に集まっている。

 街の別名は「ジャカランダ・シティ」。約7万本のジャカランダが育つプレトリアは、春を迎える10月下旬になると、紫色に染まる。私が訪れたのは、ちょうど満開を迎えた頃。ジャカランダを見るために、この時期に旅を企画したのは大正解だった。


住宅街にも美しいジャカランダが満開。

 ジャカランダというのは、春から初夏にかけて、ラッパのような形をした紫色の花を咲かせる植物。中南米原産だが、19世紀に街を整備する際に植樹したものが、鉄分を多く含む土と穏やかな気候のもと、すくすくと成長。今や本場を凌ぐ世界一のジャカランダ並木ができている。


ジャカランダ並木の総距離は約650キロ。シーズンは街中が紫色に染まる。

 コロニアル様式の歴史的建造物が建ち並ぶ通りも紫色に染まって、まるで映画のワンシーンのよう。こんなとき、日本ならお花見宴会が開かれるものだけれど、南アフリカは公共の場での飲酒は法律で禁止されている。お祭り騒ぎをすることなく、日常のなかに美しい花の風景があるのが素晴らしい。


高さ9メートルのネルソン・マンデラ像が立つユニオン・ビルディングス。政府の中枢機関が集まる場所でもあり観光地でもある。

 頭上も、足元も、花、花、花……。周遊旅行のラストを飾ったのは、シーズン限定の可憐な花だった。最後に目に焼きついた風景のおかげで、ますます南アフリカの虜になってしまった。

文・撮影=芹澤和美