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●経営計画未達を繰り返すNECの今

NECが1月末に発表した2020年度を最終年度とする「2020 中期経営計画」は、厳しい内容となった。これまでは海外拠点を対象にした人員削減に留めていたが、今回の中期経営計画では、国内の人員削減3000人を含む構造改革も盛り込んだからだ。

NECの新野 隆社長は、「これまでは、成長領域へと人員をリソースシフトすることを前提としてきた。だが、それが結果として、最適な人材を確保できなかったり、成長領域のスピードを遅くする原因となり、最適な投資ができない環境を作った」と前置きし、「苦渋の決断であったが、スピード感を持って成長軌道に回帰するための必要な投資を実現すべく、今回の構造改革を行う。これにより、次の成長につなげたいと考えている」とする。

ここでは、国内製造拠点の再編にも取り組む。同社はこれまでも、グループ全体の国内生産体制を見直し、2011年度以降はビジネスユニットごとに生産体制を最適化させた。2017年4月には、生産拠点をNECプラットフォームズに一本化して、工場間連携を強化してきた。

今後は、これらの成果をもとに、国内9工場の統廃合を含む再編や、間接人員をスリム化することで、生産体制のさらなる効率化を目指す。また、「グローバルOne Factory」を掲げて、国内外の全工場で生産プロセスやシステムを共通化。工場IoTやAIを導入したタイの新工場を積極活用していくという。

なお、国内9工場の再編については「これから具体的に決めていく」としている。国内の人員削減はこれまでにも行ってきた経緯があるが、新野氏は就任以来、国内の人員削減を最終手段に位置づけてきた。新野氏は、そのカードを切ることになる。

2018年12月に行われた年末記者懇親会の席上、挨拶に立った新野氏は、この中期経営計画について「ちゃんとした中期経営計画」という表現を用いた。思わず発した言葉なのだろうと思いながらも、その場で「ちゃんとした」という言葉の意図を新野氏に念のために確認してみた。

すると新野氏は、その言葉を訂正するわけでもなく、「社内にも同様の言葉で話をしている」と答える。よくよく話を聞くと、新野氏が「ちゃんとした」と語った意図は、長期経営計画を達成することを前提にするという意志の表れだった。

○セーフティ事業で成長を牽引

これまでのNECは、中期経営計画を打ち出すたびに未達の繰り返しだった。そして、年間業績見通しも未達ばかりだ。四半期ごとに行われる決算発表の席上、「経営スピードの向上と実行力の強化により、年間計画を確実に達成する」というのが締めの言葉として毎回使われているが、この言葉の信憑性がなくなってしまっていた。

実際、これまでの「2018 中期経営計画」は、最終年度の2018年度を迎える前に、内容が見直されている。しかも新野氏は、新たな中期経営計画への見直し作業を2017年度上期の時点ですでに着手していたと話す。つまり、従来の中期経営計画は事実上、初年度だけで頓挫した計画だったといえる。

「見誤ったのは成長させようと思った事業がほとんど成長できていないことと、落ち込むと想定していた既存事業に関しても、落ち込むスピードが我々の想定以上であった。さらに、指名停止のインパクトもあった。市場の読みが甘かったことに加えて、成長に向けて我々のビジネスをどう変革してくのかというスピードが遅く、結果として既存の事業に引きずられて、新たな領域で力が発揮できなかった。実行力が弱かったといえ、この点を反省したい」(新野氏)

こうした反省を踏まえた新中期経営計画では、「やり抜く組織の実現を目指す」(新野氏)ことを主題に据える。

「スピード感を持って、最後までやり抜く仕組みを導入する。実行力を向上させるためには、経営陣の責任と権限をより明確にし、結果へのコミットメントを強化する。実行した人が報われ、賞賛される評価・報酬制度を導入し、イノベーティブな行動や挑戦を促したい」(新野氏)

人事制度にもメスを入れ、成果をあげた人には、明確な差をつけるメリハリが効いた制度に変更する考えも示す。「立てた計画をやり抜く姿勢が欠如している。こうした雰囲気を社内から一掃したい」と新野氏。ここに「ちゃんとした」という意味がある。つまり、「ちゃんとやり抜く中期経営計画」というわけだ。

中期経営計画では、2020年度の売上高は3兆円、営業利益は1500億円、営業利益率5%、当期純利益は900億円、フリーキャッシュフローは1000億円、ROE(自己資本利益率)10%を目指す。その成長の軸になるのは、セーフティ事業で、特に海外事業の成長を鍵に据える。具体的には、海外セーフティ事業で2017年度見通しが約500億円の売上高を、2020年度に4倍となる2000億円まで拡大する見込みだ。

NECが差異化技術とするバイオメトリクス技術とAI技術を生かした「NEC Safer Cities」の実現に取り組むほか、犯罪捜査や出入国管理、空港などのパブリックセーフティ領域を強化し、セーフティ分野におけるM&Aも行う。実際、この1月には英Northgate Public Servicesを700億円で買収しており、これを含む2000億円の施策枠のなかで継続的にM&Aを実行していく考えだ。

「海外セーフティ事業は500億円の時点では先行投資もあり赤字だが、2020年度には営業利益率5%以上、EBITDA率20%以上を実現したい」(新野氏)

●成長の柱は実質セーフティのみ、で大丈夫?

しかし、成長の柱が「セーフティ」一本足打法となっている点は懸念材料だ。

「2020 中期経営計画」では、事業ポートフォリオを、「改革」と「堅守」「成長」の3つに分類し、「改革」に位置づけられるテレコムキャリア事業、エネルギー事業は、事業構造改革によって収益性を改善。「堅守」とするICTサービス事業、社会インフラ事業、プラットフォーム事業については、サービスモデルへの変革を推進するとしたが、「成長」は今のところ、セーフティ領域しか当てはまる事業が見当たらない。

「成長領域では、総花的な投資をするのではなく、グローバル市場においてカテゴリーリーダーになれる領域へと投資し、将来的には数1000億円の売上げ規模となる事業の確立を目指す」とするが、これがセーフティ一本では心許ない。セーフティ領域は成長分野だが、競争が激しい分野でもある。NECならではの顔認証技術という強みはあるものの、NECがセーフティ領域ですべてのピースを所有しているわけでもない。

セーフティで圧倒的ともいえるポジションの確立はもとより、いかに「セーフティに続く新たな成長領域を創出するか」が大切だ。NECは、ピーク時比較で売上高が半減している。国内大手電機8社中8位のシャープが急激に業績を回復し始めたいま、NECの足踏みが続けば、ここ数年でNECが8位に転落する可能性すら出てきた。

「2020 中期経営計画」は、成長戦略ではなく、次の成長に向けた基盤固めの戦略が軸になる。国内人員の削減にまで踏み出した「2020 中期経営計画」は、今度こそ、やり抜かなくてはならない。