人を楽しませて自分を印象づけ、伝え上手になれる。笑いが人生にもたらす効能は無限大! ユーモアに満ちた話術を身につけるコツを、チームナックスのリーダー・森崎博之さんと一緒に探ります。

なくても生きてはいけるけれど、身に備わっていればそれだけで人生がぐんと楽しくなるのが、物事を笑いに包んで伝える話術。奥深いこのテーマを、北海道の食を紹介する番組のレポートや講演でも活躍する森崎博之さんと一緒に大検証。ナビゲーターは、放送作家の田中イデアさん。ありがちな「ダメトーク」を例に引きつつ、心をつかむユーモア話術について語り合ってもらいました。

ダメTALK【1】

「私の彼、超ケチなんだけど、この前珍しく『お前の誕生日にいい店予約したから』って言われて。銀座の高級フレンチに行ったんです。そこって、ランチでも8000円とかする超セレブなお店で、テレビとかにも出てる有名なシェフのお店なんですよ。神山シェフって金髪で日焼けした、チャラいシェフ知りません? でもあの人、実は10年以上付き合った彼女と結婚したんですって。見た目と違って純粋ですよね〜。で、そのお店、芸能人のお客さんも多くて、私たちが食べてる席の隣にも、最近お笑い芸人との熱愛が発覚したアイドルのユミリーちゃんが女友達と食べに来ていて、ユミリーちゃんって顔ちっちゃいんですよ。それで、うちの彼がケチだから…」

森崎:面白く話すコツって、方程式があるわけでもないし難しいですよね。メンバーにトークの鬼みたいなヤツもいる中で(笑)、僕も日々真剣勝負です。

田中:マニュアルとまではいかないですが、実は面白い話って、芸人さんなどの話を分析すると意外に共通点があるんです。

森崎:へぇ〜。知りたいなぁ。

田中:解説しやすいように、よくあるダメなトークを用意してみました。さっそく、例の01から見てみましょう。

森崎:なになに、「私の彼、超ケチなんだけど…(と、すべて音読して)」、何ですかこれ。ちっとも頭に入らない! だいたいユミリーちゃんが小顔なのが気にくわない。頭が大きいっていじられる俺への当てつけ?!

田中:それは…さて置き(笑)、この話の問題点は何でしょう?

森崎:いろんな情報が入ってることかな。5回くらいに分けて話せそうな内容ですけど。

田中:そうなんです。入り口は「超ケチな彼氏」なのに枝葉が広がりすぎて、話が見えない。

森崎:これは聞いているほうもたまらないですね。「うんうん」しか言えない。

田中:相手を混乱させないように、目的地を定めたら余計な情報は省くのが基本なんです。

森崎:情報が多いと、自分でも途中で分からなくなりそう。

田中:フックが多いぶん、「知ってる! そのお店って〜」などと他人に話を持っていかれる、いわゆる「トーク泥棒」にも遭いやすくなってしまいます。

森崎:結局、言いたいことが言えずに終わってしまう。

田中:トークを取られて盛り上がられた後に、「で、何の話だっけ?」って戻されても…。

森崎:もういいよ、ってなっちゃいますよね(笑)。

田中:背景とか人物描写とか、情報が足りなくて笑えないパターンもありますが、それよりもあれこれ盛り込みすぎて失敗するケースのほうが多いですね。

森崎:肝に銘じます…。

もりさき・ひろゆき(写真左) 舞台やドラマに出演する傍ら、HBC『あぐり王国 北海道NEXT』を中心に、北海道の農業と食の案内人としても活躍。都心の小学生たちを連れて遠方の農家にロケに赴くなど食育にも積極的に関わり、農業関連の講演も多数。

田中イデアさん(写真右) 放送作家、プラトン企画代表。“社会と笑い”をテーマにTV・ラジオ番組の構成を担当。独自の分析によるユーモア理論をまとめた『お笑い芸人に学ぶ ウケる! トーク術』(立東舎文庫)ほか、著書多数。芸人養成講座で、講師も務める。

※『anan』2018年3月7日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・村留利弘 ヘア&メイク・横山雷志郎(Yolken) 取材、文・新田草子

(by anan編集部)