ニッチなグルメカテゴリに「中華カレー」がある。これはその名の通り、中華料理店で提供されるカレーのことだ。知らない人は意外に思うかもしれないが、昨今は一定の人気を得ており、メディアで取り上げられることもしばしば。そしてもちろん街中華の店でも取り扱っているケースは少なくない。そこで今回は数ある街中華カレーの名店のなかから、日本屈指のカレー街として知られる神保町の「北京亭」を紹介しよう。

 

上湯スープベースのカレーあんかけご飯は中華ならではの味

“世界最大の本の街”とも呼ばれるこのエリア。同店がある場所は大学をはじめ様々な教育施設が立ち並ぶ白山通り沿いだ。一説によると、若者が多いことに加え、読書しながら食べたい人にスプーン片手で味わえるカレーが好評だったことが、カレー店の増えた理由だという。

 

↑店を構えて50年以上。風格があり、黄色地に赤の看板からも説得力があふれている

 

学生街であるこの界隈には、当然コスパ抜群の店が多い。並びには全国的に有名なカレー店や、それ以外にもやきそばの行列店などが軒を連ねる。外食激戦区といえるこの地で半世紀以上愛され続ける「北京亭」。そして周辺にはカレー専門店が多いなかでも選ばれる「北京亭」のカレー。魅惑の一皿はどんな味わいなのだろう。運ばれてきたそれは、まさに中華ならではといえる魅力にあふれていた。

↑「カレーライス」780円。日替わりを除くレギュラーメニューのなかでは同店屈指の人気を誇る

 

最大の特徴は、カレー味のあんかけご飯であるということ。日本でおなじみのカレーライスといえば、とろみは小麦粉によるものだ。だが同店では中華丼や麻婆豆腐のあんと同じく片栗粉(馬鈴薯でんぷん)でとろみをつける。そのためソースに透明感があり、テクスチャーもどろっと濃厚な舌触りではなく、とろっとなめらかな風合いになっている。

↑毎朝9時から炊く中華スープ。同店のほとんどの料理に使われる、味の骨格だ

 

味も街中華特有のもの。ベースとなるのが中華の上湯スープだ。鶏のもみじ、豚足、げんこつのほか、ねぎやしょうがといった香味野菜を加える。それを軸に、油通して絶妙にしんなりさせたにんじん、玉ねぎ、ピーマンとともに豚バラ肉を中華鍋に投入。調理もコトコト煮込むのではなく、鍋を強火で回しながらほかのあんかけ同様スピーディに仕上げる。熟成感のあるカレーとは違う方向性だが、中華ダシのやさしい風味が肉や野菜とひとつになったまろやかなテイストで、スプーンが止まらない。

↑カレー粉は家庭用としてもおなじみの定番商品を使用。だが辛味を演出する調味料はこれだけではない

 

味付けとしては、濃口しょうゆとオイスターソースでうまみの輪郭を整える。また、辛味の下地としてパウダー状の唐辛子と豆板醤も使用。これがほのかにエッジの効いた刺激と、余韻に残る旨辛さをプラスする。中毒性の高い名物カレーは、こうして生み出されるのだ。

 

 

2タイプある酢豚もボリューミーで人気

定食や麺料理、小皿に本格中華まで、メニューが多彩な点も同店の魅力。そのなかで、よりスタンダードな一皿として人気を博しているのが酢豚だ。おいしいうえにゴロっとした肉とシャキッとした野菜、両方を存分に楽しめるのがその理由である。

↑「酢豚定食」870円。単品の場合は酢豚の量が増えて980円となる

 

カレーに使ったスライスとは違う、ブロックタイプのバラ肉に衣を付けてカラりと揚げる。そしてケチャップに穀物酢や紹興酒などを加えてあんを作り、カレー同様にしんなりさせた野菜とともに強火で炒めながら絡めるのだ。

↑料理長の銭宏(センホン)さん。中国の蘇州出身で、2002年に日本へやってきた。日本式中華も本場そのままの料理もお手のもの

 

同店にはケチャップベースの日本式酢豚と、黒酢ベースの本格酢豚の2タイプが存在。後者は単品1080円のみで定食がないものの、日替わり定食として登場することがある。その場合は780円で食べられるとあって、コスパの高さからも絶大な人気だ。

↑晩酌にうれしい破格のセットメニューも

 

また料理や価格のシステムも特徴的。ランチメニューと定食はあくまでも別のカテゴリで、定食は日替わりも含み、昼夜問わず食べることができる。そして表記されている価格に対しての消費税は、ランチに限ってはかからない。昼に利用すると若干おトクなのだ。

↑温かみのある空間。夜はテーブルでまったりくつろぐのもいいだろう

 

大衆的な雰囲気のなか、きわめて良心的な価格で提供している同店。ただ、カウンターの上に飾られた額縁入りの色紙を見ると、そこにはかつて首相を務めた政界のVIPや国民的女優の名も。これは創業者が知人であったとのことだが、多くは謎。ただ、ここが神保町屈指の名店であることは間違いないという証といえよう。

 

【SHOP DATA】

北京亭

住所:東京都千代田区西神田2-1-11

アクセス:JRほか「水道橋駅」東口徒歩5分

営業時間:11:00〜15:00/17:00〜23:00

定休日:無休