Appleが変える子供たちの未来「Swift Playgrounds」プログラミング教室をレポート
2020年に日本でプログラミング教育が必修化される件と、iPadを使った小中学校の具体的な取り組みについて、先日こちらでレポートした。今回は3月4日(日)、横浜市・港南区にある「はまぎんこども宇宙科学館」で開催された、小中学生対象のイベント「iPadで楽しく学ぼう Swift Playgroundsでコードに挑戦」の様子をお送りする。

はまぎんこども宇宙科学館は、JR根岸線・洋光台駅の側にある。今回の主催は「洋光台サイエンスクラブ」だ。このクラブは、はまぎんこども宇宙科学館と洋光台まちづくり協議会が協働で設立。こどもたちの科学への興味を育み、理科離れに歯止めをかけることを目的としてできた会員制の組織だ。登録者は約5000人。週に400教室以上のイベントを開催している。今回の参加者は、その中から集まった小学校4年生以上の10名だ。

今日の講師は、はまぎんこども科学館・事務課ディレクターの坂巻たみさん。まずは、参加者に向かって「プログラミングの経験がある人は?」と質問すると、全員が挙手した。坂巻さん曰く、横浜は全国でもプログラミング教育がさかんで、小学生の経験者が多いという。続けて坂巻さんが、子供たちに質問する。「プログラミングを使って仕事する人は、どういう人だと思う? 」すると「ロボットをつくるひと」「ゲームをつくる人」と声があがる。これを聞いて、坂巻さんは子供たちに動画を見せた。AppleがWWDC2016で公開した「EveryOne Can Code」だ。
参考:EveryOne Can Code



動画の中には、さまざまなアプリの開発者が登場する。街の停電を予測するアプリを開発した人、安全な出産の手順が出られるアプリを開発した人、家庭内暴力の解決のためのアプリを作った人......。動画が終わった後、坂巻さんは続けた。「ゲームやロボットを作ることだけが、プログラミングではないってこと、わかってくれたかな」。

続いて始まったのは、デバイスを一切使わないゲーム、「ひとを動かしてみよう」だ。

「ここに、色々なポーズが描かれたカードがあります。左端の人は、カードを1枚選んで、みんなに共有してください。私は目隠しをしています。みんなは、私がそのポーズを再現できるよう、順番に指示を出してください。指示は、必ず1人1つずつ」。

参加者の1人がカードを引き、イラストを選んだ。ボディビルダーのような男性が、ポーズを取っているイラスト。教室からは、クスクスと笑いが漏れる。



坂巻さんのルール説明にしたがって、子供たちから、1人ずつ指示が飛んだ。

「腕をお腹の上で組んで!」

「こうかな?」

「体をこっちに向けて」

「こっちって、どっち? 見えないよ」

「つま先を床に付けて曲げて!」

「もう、つま先は床についてるよ。」

「うーん......どうしたらいいんだろう......」



なかなか意思疎通ができず、子供たちから困ったような声があがる。悪戦苦闘しながらも、全員で15個程度の指示を出し、ポーズを完成させることができた。坂巻さんは子供たちにこう伝える。

「プログラミングとは、言葉です。今、みんなが、指示してくれたのがコマンドです。このイラスト通りに私を動かすために、1つずつ指示出してもらったけど、最初から"マッチョのポーズ"と伝えていれば、もっと簡単にイメージできたかもしれないね。こうやって、コマンドを単純にすることを関数といいます。」

子供たちがなるほど、とうなずいている。つまりこのゲームは、言葉で対象物を動かす=プログラミング言語で物を動かすということ、言葉をまとめて指示する=関数を使うこと、を体感させるアンプラグド学習だったというわけだ。

ゲームが終わると、参加者全員にiPadが配布される。ようやく、アプリ「Swift Playground」の実践スタートだ。

子供たちが体験したのはアプリの中に含まれるカリキュラム「Hour of Code」。キャラクターの「バイト」君を、指示された通りに動かしていく。こちらが実際の画面だ。



左側が説明、右側がプログラム実行側だ。こどもたちは、赤丸の部分にコードを書き込んでいく。コードは、あらかじめ用意されている。下の青丸部分から、適したものを選んでタップすればよい。コードが完成したら矢印部分の「コード実行」をタップすると、バイト君が動き出す。ここで、思った通りに動くのかを確認しながら作業を進めていく。

関数まで到達すると、コードはやや複雑になっていくが、子供たちは黙々と手を動かしていく。時々、隣同士で相談しあって進めていく様子が伺えた。



それぞれが思い思いにカリキュラムを進めて、教室は終了。Swift Playgroundを体験した参加者に感想を聞いた。話を聞かせてくれたのは、西澤 真周(にしざわ ましゅう)さん、小学校6年生(12歳)。



――今日の教室を受講した理由を教えてください。

親戚がプログラミングに関わる仕事をしていたので、もともと興味がありました。

――参加して、いかがでしたか?

プログラミングの経験はありましたが、iPadやアプリを使った本格的なものは初めて。もっとプログラミングをやってみたいと、ワクワクした気持ちが持てました。関数も初めてで、特に「Turn Right」のコマンドは難しく感じました。でも、スタッフの方が丁寧に教えてくださったので、わかりやすかったです。

――楽しかったところは?

グループの中で、どんなふうに動かせばいいか、話しあえたことです。また、自分でコードを書いて、成功したときの達成感が楽しかったです。



――「イラスト通りに人を動かす」ゲームはどうでしたか?

初めて体験しました。自分では、ちゃんと伝えているつもりでも、相手は理解していないことがあるんだと難しく感じました。今日体験したアプリでは「右を向く」など簡単な動作ばかりでしたが、今後「人を動かす」ゲームのように複雑になったとき、ちゃんと伝えないと機械も言う通りに動かない、という共通点を学びました。

――将来なりたいものは、なんですか。

「サッカー選手です。でも、審判用のルールアプリを作るなど、プログラミングも活かしていけたらと思っています」

洋光台サイエンスクラブでは、毎週末に必ず1教室、月に6〜7のプログラミング教室を開催している。ただし、ブロックを積み上げていくタイプのビジュアルプログラミングが多く、今回のようにコードを使った教室は初めてだという。坂巻さんは語る。

「ビジュアルプログラミングには楽しさがありますが、 言葉を使う必要がない。こどもたちが将来自分で開発したいと思ったとき、知識が足りなくなるでしょう。Swift Playgroundは最初から言葉を用いるので知識もつき、練習次第で誰でも使えるようになるのが魅力です」



また、iPadを教室で使用することが、教える側のメリットにもなっているとも話す。

「ラップトップだと参加者が隠れてしまう。そのため、講師が2人1組になって、表情を後ろからチェックしていました。その点、iPadは顔が見えるから講師は1人で充分。iPadを一度導入すれば、ほかの教室でも再利用でき、コストパフォーマンスも高いと感じています」

現に、スマホ(で使える)顕微鏡で観察をする教室でも活用されているそうだ。

「iPadは画面が大きいので、画像をリアルタイムに共有できるのも良いんです」

なお、洋光台サイエンスクラブは、地域と連携し、近辺の小学校へ出前教室も行なっているという。

「私たちが目指すのは"楽しかったけど難しかった"という評価。プログラミング言語を使って、子供たちが世界中のコーダーとやりとりできる未来を作っていきたいですね」と語ってくれた。