証券取引等監視委員会が5年間も手口を見抜けなかったワケとは(撮影:尾形文繁)

「四季報トレンド」「日経サポートセンター」「日経タイムズ」「日経マーケティング」……。

『会社四季報』や『日本経済新聞』と関係があるかのようなサイトを次々と立ち上げて、投資助言業務を無登録で行っていたJG-company、Master、S&Fの3社と、3社の役員である大城英史JG-company代表、金成国Master代表、大島豊S&F代表に対して、証券取引等監視委員会は東京地方裁判所に投資助言の禁止・停止を命じるように申し立てた。

3700人から顧問料37億円を受領

これら3社が約3700人の個人から受け取った投資顧問料は約37億5000万円。無登録の投資助言業者が受け取った顧問料としては過去最大だ。

ファンドの募集を含めた無登録業者の事件としては2013年に無登録営業の禁止を監視委員会が東京地裁に申し立てたライフステージ(募集金額は約146億円)、同じく2016年のリペアハウス(同約110億円)に次ぐ3番目の規模だという。監視委員会が金融商品取引法に基づいて裁判所へ緊急差し止め命令を申し立てたのは、2010年以降では20件目になる。

監視委員会によれば、JG-company、Master、S&Fの3社は一体となり、金代表が営業を担当、大島代表が資金管理を担当。大城代表は全体を統括していた。

最初に立ち上げたサイトは2013年5月の「カブドラ」。同年12月に「HAN」、2014年4月に「エーマークトレーダーズ」、同年6月に「株BOOK」……と計31のサイトを次々と立ち上げた。

2015年5月に立ち上げた「日経サポートセンター」は12番目、同年10月の「四季報トレンド」は16番目、同年11月の「日経タイムズ」「日経マーケティング」は18番目と19番目だ。

こららのサイトの多くは「無登録営業だ」と関東財務局から指摘を受けると直ちに閉鎖した。ただ、31のサイトのうち「株式市場オンライン」「株式ジャーナル」「マーケットEX」「VIPインベスターズ」「株ステーション」「マーケットスタートピックス」「急騰株式プロジェクト」の7サイトは、無登録営業の指摘を受けず、閉鎖せずに残っていた(2017年11月現在)。

監視委員会によれば、JG-company、Master、S&Fの3社の従業員は「実績のある投資家」を装って顧客と面談。虚偽や誇張した投資助言の実績を説明。複数の顧客に同一銘柄の買いを推奨することで株価を急騰させ、それを投資助言の実績として他の顧客に説明していた。

申し立てまでなぜ5年もかかったのか

JG-company、Master、S&Fの3社は、投資顧問契約(1契約あたり数万〜数百万円の投資顧問料を支払い、数カ月〜数年の銘柄情報の提供を受ける契約)を締結した顧客に、個別銘柄の買いを推奨するとともに、FX取引の自動売買ソフトを販売。実在しない海外のFX取引業者「FXNoah証券」を紹介していた。

「FXNoah証券を介して取引をしたい」という約1100人の顧客からFX取引用の金銭を預かり、別の海外FX取引業者に送金。この業者から顧客紹介の見返りとして、顧客の取引量に応じた手数料計約3200万円をJGなど3社は受領していた。

最初のサイト立ち上げから今回の禁止・停止申し立てまで5年近くかかったことについて、監視委員会は「関東財務局からの警告を受けてもなかなか従わない無登録業者が多い中、彼らは警告を受けるとサイトをすぐ閉鎖していた。サイト名や社名を変えて無登録営業を繰り返す背後にJGなど3社がいるという事実が見えてこなかった」と本件の調査が難しかったことを訴える。

今回の申し立てはあくまでも無登録営業の禁止である。個別株の売買やFX取引で個人がどれだけの損を被ったのかなどの実態解明はなされていない。