Googleが、損益、とりわけサブスクリプションの獲得を中心に訴えることで、パブリッシャーたちの心をつかもうと動いている。Googleは2017年秋、ファーストクリックフリーの方針を終了し、柔軟なサンプリングに置き換えた。それまでは、コンテンツを検索結果の上位に入りたいパブリッシャーは、有料化しても少なくとも記事3本を読者が無料で見られるようにする必要があったが、そうした設定をパブリッシャーが選べるように変わった。Googleはパブリッシャーのワーキンググループを組織し、サブスクリプションに関するフィードバックを集めている。先日オランダのアムステルダムで開催したサミット「Google Digital News Initiative」では、Googleユーザーからサブスクリプション登録しそうな候補者を見つけたり、Google内でサブスクリプション登録しやすくしたり、そのうえでサブスクリプションに基づいて検索体験をパーソナライズしたりと、さまざまな方策に取り組んでいることを明らかにした。
重要:GoogleがAMPを進化させ、AMP(およびPlay)のサブスクリプション管理の部分に乗り出している。こんなものになるかもしれない(クライアントサイドはJavaScript、権利とペイウォールの管理はAPI)。
パブリッシャーオタクには興味深い。Googleがニュース組織へのサブスクリプションで検索結果を変える計画だ - サブスクリプションによるビジネスモデルの説得力が増す。
Googleにおける広告が中心だった従来モデルを経て、サブスクリプションが強調された点が今回は重要だったと語ったのは、ロイター研究所(Reuters Institute)の研究員、ニック・ニューマン氏。また、アムステルダムでこの会合に出席したニューヨーク市立大学教授(ジャーナリズム)のジェフ・ジャービス氏は、GoogleとFacebookは同じような構想に取り組んでいるが、Googleのほうが進んでいると語る。「考えているプロセスについて非常にオープンなのだ」と、ジャービス氏はいう。「どちらも懸命に取り組んでいるが、考えとロードマップの共有はGoogleがFacebookを上回る。ロードマップをある程度披露しないと、パブリッシャーと協力できない」と、同氏は語った。

善意のある支配者

パブリッシャーにはサブスクリプションが必要だという認識は、GoogleにしてもFacebookにしても、考え方の大事な変化だ。オーディエンスの関心を集めて広告主からお金を引き出すために、無料で利用できるコンテンツをまとめるというのが、ビジネスモデルの前提になっていることから、どちらも無料コンテンツというアイデアにそれぞれ固執してきた。しかし、理屈として、パブリッシャーがつぶれてしまっては両社ともに損をする。質の高いパブリッシング(とりわけニュース)には広告収益とサブスクリプション収益の混在が必要になるということで、意見が一致しつつある。Googleがパブリッシャーのサブスクリプションに協力する動きは、1年以上前から進められているものだが、いま、その重要性が高まってきている。もうひとつの主要参照元であるFacebookとパブリッシャーのあいだの緊張が増し、ニュースフィードでニュースを減らすとFacebookが公言したのだ。また、最近Googleが、パブリッシャーへの参照元としてFacebookを抜いたことが、さらに拍車をかけている。Facebook側もサブスクリプションの推進策は講じており、トロンク(Tronc)やワシントン・ポスト(The Washington Post)など、パブリッシャー10社とテストを実施している。現在メディアで叩かれているFacebookとの比較で、Googleはパブリッシャーの敵より友人だという評判を固めようとしているのは明らかだ。かつてはパブリッシャーの不満の矛先はもっぱらGoogle支配に向いていたし、いまもChromeの広告フィルタリング機能のようにパブリッシャーが懸念する取り組みを推進しているにもかかわらず、GoogleはFacebookに比べれば少なくとも善意のある支配者だという見方がパブリッシャー幹部のあいだでは強まっている。

NYTとFTにおける事例

いま、ニュースパブリッシャーの支持を得る一番の方法は、読者収益への道を提供することだ。Googleは、ファーストクリックフリーの方針変更によってこの面で評判を得た。10月の方針終了の前からGoogleとテストを行っているニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)とフィナンシャル・タイムズ(Financial Times:以下、FT)はどちらも、サブスクリプションが上向きになっていると語った。NYTは、オーディエンスとプラットフォームの担当VPであるレベッカ・グロスマン=コーエン氏によると、サブスクリプションなしで無料で読める記事の数を10本から5本に減らしたが、Googleユーザーからの有料サブスクリプションの新規登録が増加したという。「課題の出現を少し早くして、判断を促すタイミングを早めたことで、お金を払おうという人の集まりが拡大している」と、グロスマン=コーエン氏はいう。「これは、我々の長年の直感を証明していると思う。お金を出す価値があるニュースとジャーナリズムへの支払いなら、消費者はずっと気持ちよく受け入れてくれるし、お金を出す価値があると思われていると我々が考える出版物には、NYTも入っている」と、同氏は語った。また、FTも、最高データ責任者のトム・ベッツ氏によると、増加傾向が確認されており、無料で読める記事数の上限についてさまざまなテストを継続していくという。ただ長期的な懸念として、読者収益の増加と検索による見つけやすさのどちらかをパブリッシャーは選ぶ必要が出てくるかもしれない。「柔軟性が上がりこうした実験をできるようになったのが喜ばしいのは間違いないが、柔軟なサンプリングが成功裏に終わるには、サブスクリプションにパブリッシャーへの純便益がなければならない」とベッツ氏。「コンバージョン率がたとえ倍増しようと、トラフィックが大幅に減少すれば、収益はすべて相殺されるかもしれない。Googleは我々にとって極めて重要なトラフィック源だ。それを犠牲にしたり減らしたりすれば、かなりの影響があるだろう」と同氏は語った。

長年求めているもの

パブリッシャーがインターネットで成功するには何らかの形で無料サンプルを提供する必要があるというのがGoogleのスタンスだ。サンプルが少なすぎれば、コンテンツへのリンクのクリックやシェアは減少する。ブランド発見の足かせになるかもしれず、結果、長期的にはトラフィックに影響があるだろう。サブスクリプションへの呼び込みにプラットフォームがどのように貢献できるのかについては、解明すべき点がたくさんある。たとえば、ユーザーが複数のサブスクリプションに登録している場合、検索結果で優遇するパブリッシャーをGoogleはどのように決めるのだろうか。プラットフォームは、サブスクリプション売上をどれくらい解き放てるのだろうか。また、プラットフォームはそうした売上の一部を取るのだろうか(Facebookは少なくともいまのところ取っておらず、Googleは、取るとしてもコストを賄うためだけのものになるとしている)。「Googleにあるデータをすべて駆使して、サブスクリプションの可能性についてインサイトを得るというのが、パブリッシャーが長年求めているものだ」と、ロイター研究所のニューマン氏はいう。「そこまでやれば、膨大なデータバンクを活用できるようになり、正真正銘の違いが出るだろう」と、同氏は語った。

他モデルへの拡大は?

その場合、NPRやガーディアン(Guardian)が採用している寄付やメンバーシップのような、消費者がお金を出すほかのモデルにもGoogleは対応を拡大するだろうか。「コンテンツへのアクセスを販売しないが消費者による支援を求めているパブリッシャーはたくさんいる」と、ニューヨーク市立大学のジャービス氏は語る。「私が懸念するのは、サブスクリプションはひとつのモデルすぎないということだ。行き過ぎれば、サブスクリプションに有利になるようなごまかしになる。次にやるべきはこの点だ」。Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)