ケインズは、第二次世界大戦後の国際秩序の再構築において、金との交換を前提とした国際決済通貨「バンコール」の導入を構想した。(イメージ写真提供:123RF)

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■ケインズと貨幣、金との関係

 ケインズが、第二次世界大戦後の国際秩序の再構築において、金との交換を前提とした国際決済通貨「バンコール」の導入を構想したことを以前述べました。ケインズは、基本的には金本位制的な立場ではありませんでした。彼の関心事は特に通貨の役割にあったようです。

 松岡正剛氏が指摘するように、ケインズは官僚としてインド省で働きましたが、その関心事は英国の金本位制とインドの銀本位制の違いを通じて考えられる貨幣の役割にあったということがいえるようです。またそれは、ハイパワードマネー(現金通貨及び預金通貨)が経済の中心になってくる時代の中での思考過程でした。ケインズは、あくまでも通貨にこだわっていきます。

 ケインズの中では、金本位制のような貨幣との交換可能な制度自体は一定の役割を終えており、世界通貨「バンコール」を考案したときも世界秩序のための一定の範囲内での機能としてであったとも考えられます。

■ケインズ、貨幣、仮想通貨、そして金

 さて、そのケインズが予想しなかった動きが、ケインズのバンコールをひとつのヒントとして現れてきています。それは、国や中央銀行に縛られない「仮想通貨」の動きです。バンコールは、第二次世界大戦後の新しい秩序を構築する上での諸制度の一部として構想されたといってよいでしょう。一方仮想通貨は、国家の中央銀行などに縛られない通貨であり、ブロックチェーン技術というものに裏打ちされています。しかもそれは、インターネット社会という工業革命に次ぐ産業変革を経て我々の前に立ち現れてきています。

 そしてこの通貨と技術は、簡単に世界を飛び越えてしまうだけではありません。ブロックチェーン技術を使ったデジタル金すら構想されてきています。ブロックチェーン技術は、仮想通貨やデジタル金の基本技術となっています。もし、ケインズのバンコールが国際枠組の中で機能する「上からの国際通貨」とするなら、仮想通貨は「草の根的な通貨」という一面もあるかと思います。

 ケインズが、追い求めた貨幣とは何かという問いに対しては、ここで語るには荷の重いことなので触れません。彼が追い求めたように、仮想通貨を持つことになった今の時代において、貨幣に対する問いが重要になっているのではないかと思います。そして、通貨の代替役をとしての役割を果たしてきた金の価値もまた、新しい時代と価値観の中で見直されることになってきたように思います。仮想通貨と金を同時に視野に入れていかなければならない時代になってきたと感じます。

■終わりに

 ケインズがもし、今の時代に生きていたら、現実の仮想通貨をどう見るでしょうか。興味の尽きないところです。いずれにせよ、ブロックチェーン技術が台頭した現在のインターネット社会においては、貨幣、仮想通貨、金がより密接に議論されることになっていくと考えられます。

 経済学が人間というものに対する深い哲学に基づくものなら、こうした新しい動きを見据えた新しい経済学が求められてくるかもしれません。

 今回は、ケインズ、貨幣、仮想通貨、そして金と題して述べました。

【参考資料】

松岡正剛の千夜千冊「ジョン・メイナード・ケインズ 貨幣論」(情報提供:SBIゴールド)(イメージ写真提供:123RF)