今そこにあるヒットネタをあなたは捨てていませんか?(写真:kokoroyuki/iStock)

大手玩具メーカー・バンダイでエアパッキン(いわゆるプチプチ)の感触を再現したおもちゃ「∞(むげん)プチプチ」を生み出すなど、数々のヒットアイデア玩具の商品開発に携わってきたクリエイター・高橋晋平氏。現在は独立し、さまざまな企業の企画ブレーンを務めるほか、チームを育成しつつ新商品を立ち上げる「企画チームビルディング」に従事するなど、いろいろな形でモノ・コトづくりに携わっている。
そんな高橋氏が近著『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』(あさ出版)で、普段から実践している「自分の欲求を発見しメモする方法」を使った、「人に求められる企画をつくる技」を初公開。今記事では本から抜粋し、何気ない日常に潜む「多くの人に求められるネタ」を見つける方法を解説する。

商品が並んでいる売り場はネタの宝庫

企画を考えるにあたり大切なのがネタ集めです。僕は日ごろから企画のネタになりそうなものを「ネタ帳」にメモするようにしています。その具体的なやり方は、一番大事なのは自分が欲しい、使いたい、買いたい、知りたい、などと思うような、『欲』を感じさせるモノコトをメモすることです。

なぜなら自分が欲しいと感じないものは、どんなに練り込み、考えに考えても、大ヒットする企画にはならないからです。

その『欲』を感じさせるモノコト=ネタを探すのに、Webや雑誌、新聞などのいわゆる情報メディアと同じくらい、僕が活用しているのが「お店」です。いろいろな店舗を観察することから得られる情報量は膨大です。お店は、商品を売るために存在しています。

自分が買いたい商品から、自分にはほとんど関係のない商品まで、実にジャンルはさまざま。そのような、いろいろなお店で、「これは買いたい」「これは買いたいと思わない」というように判断をしながら商品を見ていくことで、たくさんのネタを集めることができます。特に大きなヒントになるのは、商品のパッケージです。

パッケージは、その商品を企画開発した担当者が、知恵を絞り抜き、その商品のよさが一番伝わる方法を考えてつくったものです。それを見て、もしその商品を「買いたい!」と思ったのなら、それはパッケージの効果なのかもしれません。

パッケージに書かれてある一行のコピーが欲求を刺激したのか、ロゴデザインが欲求を刺激したのか、あるいはパッケージの形状や素材が欲求を刺激したのか……。それを買いたいと思った理由は何なのかがわかっていたら、一緒にメモしておくのもいいでしょう。

人との会話の中にはネタがたくさん

また、他人と食事しながらする会話の中からも、貴重なネタをたくさん拾うことができます。特に僕の場合は、面白い人と出会ったら、よく2人きりで食事に行きます。つまり、「さしめし」です。

相手が1人だけだと、自分が聞きたい話を充分に聞くことができます。そこで必ず聞くのが、相手が好きなことやハマっていることの話。そこから、自分以外の人が「欲しいと思うものごと」を知るのです。

その人が最近買ったものや欲しいもの、仕事でやりたいことや将来の夢、などの話をさせていただき、その中で、「確かに、それは欲しい!」「やってみたい!」などと共感した新情報があれば、スマホにメモします。話しながらスマホを開くのは失礼に当たる場合もあるので、相手によって「メモしてもいいですか?」とちゃんと聞いてからメモするようにしています。

また、情報漏洩に当たらない範囲で、今自分が考えている企画やアイデアを、相手に欲しいかどうかさらっと聞いてみることもします。「こういうものがあったら欲しいですか?」と聞いて、その時に相手が気を遣って「欲しい、ですね……」と答えるか、食い気味に「欲しい、欲しい!」と答えるかで、企画やアイデアの良し悪しがわかってしまいます。

もしかすると、いろいろな人と話し続け、メモし続けることが、一番手っ取り早い企画のつくり方なのかもしれません。

また、これは上級テクニックなのですが、知らないことの中にある「欲しいと思うものごと」の情報まで集めることができると、ネタ帳はさらにパワーアップします。

たとえばWeb記事の見出しを見ていても、店頭で商品を見ていても、やはり集めたいと思って目に飛び込んでくるのは、自分が好きなタイプの情報に偏っていってしまうものです。しかし、自分がやりたいことに直接関係がないジャンルの中にも、自分の欲求が刺激される情報を見つけることがありますし、新しい領域を深く知っていくことで、自分の知識や発想の幅を広げていくこともできます。

特に見てみてほしいのは、本当に自分にはわからない見出しのニュースです。これは、ネットでも新聞でも雑誌でも構いません。いったい何のことだろう、と思うことがあれば、それは飛び込んでみるチャンスだと思ってください。

そして、内容を読んでみる。その中に、「欲しいと思うものごと」があれば、それをネタとしてピックアップします。これをやることで、自分が欲しいと思うものごとの幅を新たに広げることができ、新しい企画が生まれる可能性も広がります。

「興味がないものの中にある欲」に大化けの可能性

僕の経験からお話しすると、ある時、「カップリングフレグランス」というワードが見出しに入った記事をWebで見つけたことがありました。何のことかわかりませんでしたが、言葉の感じから、香りに関する美容系の女性向け記事かなと想像しました。

僕は正直「美容」ジャンルにはあまり強い関心はありませんし、普通に考えたら中身を読まずに素通りする記事なのかもしれません。しかし、普段は関心が薄い領域こそ、まったく新しい発見ができるチャンスの場所と捉え、あえてその記事をクリックし読んでみました。


すると、「カップリングフレグランス」とは、男女で違うタイプの香水を使い、お互いの香りを楽しむとともに、その2つの香りのハーモニーも楽しむことであると知りました。僕はそのこと自体をやってみたいという欲求は持ちませんでしたが、そこから、「もし自分の彼女が、自分のために香水を一生懸命選んで会いに来てくれたら、その気持ちがうれしいな」という、今まで考えたことがなかった欲求を発見しました。

男性が思う、「女性にこうしてほしい」という欲。このような欲がヒントとなり、男性ウケする女性向け商品を開発できる可能性につながっていくわけです。

仕事をしていると、時には、自分の興味とまったく関係のないジャンルを担当しなければならなくなることがあるでしょう。それは難しいことのように思えますが、チャンスでもあるのです。興味がない人にも「欲求」を持たせられる要素を発見できれば、そのネタはどんな人にも喜ばれる企画に大化けする可能性があるのです。