エアバスが塗装システムを用いてペイント(英トーマス・クック航空向け「A321」垂直尾翼)

写真拡大

 「率直に言って驚いたよ」。世界最大の航空機メーカーの一翼を担う欧エアバスからのオファーに、村井秀世社長は戸惑いすらあった。米ボーイングと激しい受注競争をするエアバスは、航空機生産の低コスト・効率化を進めており、人的介在の多い塗装工程の省人化を重点戦略の一つに掲げていた。

 エルエーシー(東京都町田市)は、商用車向けの自動塗装システムなどを主力とする。インクジェットプリンターの技術を応用したシステムで、航空機塗装の自動化に白羽の矢が立った。エアバスは11年にテスト用プリンターをエルエーシーから購入。塗装した実機で地上試験や飛行試験を実施し、「結果が良好だったことから採用を決めてもらった」(村井社長)。

 エルエーシーが開発した航空機塗装用プリンターは、航空会社のロゴマークなど機体の装飾塗装向け。ロボットアームにプリンターを装着する構成となる。プリンターヘッドのノズルにある数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のバルブを数マイクロ秒で開閉し、機体に塗料を吹き付ける。

 通常のプリンターのようにドットで直接描画するのが特徴。村井社長は「塗装しない部分をマスクで覆う従来塗装に比べ、塗料使用量の大幅な削減につながる」と力を込める。塗装の膜厚を薄くできるため、機体の軽量化にもつながる。

 エアバスはまず、塗装可能範囲が高さ8メートル×幅7メートルのプリンターを垂直尾翼の塗装向けに導入。主力小型機「A320」の製造拠点である独ハンブルク工場に2台、大型機「A380」を製造する仏トゥールーズ工場で2台の採用を決めた。すでに両工場で1台ずつが稼働する。

 エアバスへの納入実績は絶大。村井社長は「他の機体メーカーからも引き合いがある」と明かす。今後はシステムを大型化し、胴体塗装などへの展開をもくろむ。未知の業界へと羽ばたけたのは、技術力のたまものだ。
(文=長塚崇寛)