米AP通信は、平昌冬季五輪期間中韓国を代表するソウルフードとして「チキン」を紹介した。チキンは英語から来たものではあるが、韓国では、鶏肉を焼いたり揚げたりする料理全般をいう。

 以前、「チメク」で紹介したように、韓国人はチキンとビールを合わせてよく食べる。ちなみに、サムゲタンという韓国の代表的な料理があるが、それをチキンと呼ぶことはない。

 イメージとしては、KFCのフライドチキンや鶏のから揚げやそれらに様々な味付けをする料理である。

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4年で消費量が倍増

 どれだけ韓国人がチキンが好きかというと、韓国の2016年鶏肉1人当たりの消費量が13.8キロと、2000年(6.9キロ)に比べ倍増した。

 国民1人当たり1年で約14羽を消費している。チキン好きが高じて、「チムリエ」という資格まで作り出した。チムリエとは、「チキン」と「ソムリエ」をかけ合わせた造語で、チキン鑑別師とという意味だ。

 「大韓民国はチキン共和国」と自嘲するほどチキン店が多い。全国どこへ行ってもチキン店は存在する。

 2017年の全国のチキン・フランチャイズは、2万4453店舗。個人が運営するチキン店まで入れると4万店舗を超える。

 世界中のマクドナルド(約3万5000店)の店舗より多い。だが、2016年開店したチキン店は3980で、閉店したチキン店は2793と、すぐに店を閉める店舗も多い。

 中年のサラリーマンたちは「退職したらチキン店でも始めようか」という人たちが多い。そんな人たちが開店をしては3年内に閉店していくのだという。

 韓国の雇用不安は相当なもので、新卒の就職も難しいが、定年まで職場にいられる人たちが少なく、40代になるとすでに早期退職の不安にさらされる。

 そのため、簡単に始められそうなチキン店を試みるが、事業はそんなに簡単なことではない。なぜなら、そのほとんどが零細店だからだ。

家族経営の店がほとんど

 2015年のフランチャイズチキンの年平均営業利益は、2360万ウォン(約236万円)なので、韓国の中小企業の新卒者の平均年俸程度だ。

 それもあって、2014年の全国平均で100店舗のうち、3〜4店舗だけが従業員5人以上規模で、残りはほとんど家族経営という店が多い。

 韓国では、「退職後チキン屋」というモバイルゲームまで登場している。これこそ韓国の40〜50代の現実世界を具現化したものと言える。

 早期退職した後、自営業者となってチキン店を始める設定だ。このゲームでは、チキンメニューの開発、店のPR、賃貸料の納付など、チキン店の創業と運営に必要なことを経験できる。

 店が流行らず店舗の賃貸料すら出せない場合、銀行から借り増したり代行運転のバイトをしたりするという設定もある。

 一方で店が繁盛するとフランチャイズ化することもでき、高級タワーマンションを購入することもできる。

 ただし、実際に利益を出すのは意外に難しく、中国産の鶏肉を使うとか重量をごまかすことなどもしなければならないようだ。ゲームの中の話だが妙に現実味があり、なぜか若者に人気だという。

 チキンが愛されるがゆえにチキンには「チヌニム」というあだ名まである。チヌニムとは、チキンとハヌニム(神様)をかけ合わせた造語だ。

ピクルスと抜群の相性

 ちなみに、フィギュアスケートのキム・ヨナ選手はヨナニムと呼ばれる。「ヨナニム」とはキム・ヨナ選手は神様のようだという意味が込められていて、それだけ絶対的な存在でもある。

 韓国のチキンは、海外ではみられない味付けのものがたくさんある。例えば、ヤンニョムチキンは、唐辛子ペーストを使った甘辛味で、マヌルチキンは、にんにくの風味の照り焼きチキンである。

 さらに、数年前からヒット商品となっているパダクは、フライドチキンにネギソースを絡めたものである。

 とにかくフライドに各社それぞれの味付けで勝負をしている。そして、必ずチキンにはチキン用ピクルス(大根の甘酢漬け)がついているので、それとの相性も抜群である。

 こうしたチキンを作ってみたいと思う人たちのために、BBQグループというチキンフランチャイズ社が2004年、チキン大学を創設した。

 毎週小学生から高校生までを対象に体験学習プログラムを提供している。最近は韓流ブームに乗ってチキンを直接作ってみたいという外国人観光客も訪れるようになったそうだ。すでに40万人以上の人たちが体験のため訪れているという。

 韓国のジョークに「起・承・転・チキン」という言葉がある。起承転結をもじったもので、どんな話をしても最後はチキンの話題で締めくくることをいう。

 今回の平昌五輪は、北朝鮮の参加により北朝鮮応援団の話題やカーリングでの話題など、話題は盛りだくさんだった。

平昌五輪の真の勝者

 その中でもチキンの話題は評判を呼んだ。出場した選手も観戦客も韓国のチキンの魅了され、そしてテレビを通して観戦していた人たちも宅配のチキン注文が多かった。

 そのためか、平昌五輪の真の勝者はチキンフランチャイズではなかったかともささやかれている。

 実際、ホシギトゥマリチキン(フランチャイズ名)が1月24日に発売した「プルチャンポンチキン・パッケージ」は、平昌五輪の開幕式があった9日から販売量が急増した。

 10日の販売量は前週の同じ曜日に比べ159%増加、スピードスケート女子500メートル決勝戦があった18日は同135%増だった。

 この後はパラリンピックが始まるが、そこでもチキンは勝ち続けることは間違いない。筆者の話も冬季五輪の話題で始まったが、結局起承転チキンで終わるのである。

筆者:アン・ヨンヒ