業界大手アパグループの業績にもブレーキがかかってきた(記者撮影)

わが世の春を謳歌してきたビジネスホテルが曲がり角を迎えている。

2月23日、ビジネスホテル大手アパグループが公表した2017年11月期決算は、経常利益が350億円(前期比3.5%増)と微増にとどまった。営業利益段階では減益だ。

同業の東横インも2018年3月期決算は経常利益188億円(前期比7%増)の見通し。アパ、東横インともに業界屈指の収益水準を維持しているものの、伸び悩み感は否めない。

都内の稼動率は約85%に達するが…


「ワシントンホテル」「ホテルグレイスリー」を展開する藤田観光は新宿の大型ホテルが通年で寄与したが、「ドーミーイン」を手掛ける共立メンテナンスは、2ケタ増収なのに対し利益が伸び悩む見通しだ。

事業環境は悪くない。訪日客の増加のほか、ビジネス利用も堅調で、2017年の東京都内の宿泊施設の稼働率は80.1%、ビジネスホテルは84.8%に達した(観光庁)。全国を見ても、ビジネスホテルの稼働率は75.4%。80%を超えればほぼ満室とされる業界にあって、これ以上望めない水準だ。

装置産業であるホテルにとって、満室状態になった以上、利益を増やすためには単価を上げるしかない。だが、2016年から2017年にかけて、ビジネスホテルの開業が大幅に増えたことに加え、関西では民泊などにも客が流れた。各社は稼働率の維持を優先したために、これまでのように単価を上げることができなかった。

人件費や先行投資を吸収するのがやっと

その結果起きたのが、高騰する人件費や先行投資を吸収するのがやっとという決算状況だ。人手不足のあおりを受けて、清掃などの人件費や建築費が高騰。「新店開業による地代家賃や備品、消耗品が上がっている」(東横イン)。アパグループもホテル事業の売上高は約17%伸びたが、利益の伸びは2%にとどまった。

懸念されるのはこうした状況が持続可能なのかどうかだ。不動産サービス大手CBREの調査によれば、2020年までに東京や大阪など8都市のホテルの客室数は2016年末比で32%増える見通し。そのうちの9割が宿泊に特化したタイプのため「差別化が重要になる」(ホテルを担当する土屋潔ディレクター)。


当記事は「週刊東洋経済」3月10日号 <3月5日発売>からの転載記事です

ただ、急な方向転換は難しい。アパグループは従来どおりの拡大戦略を続ける。大型のシングルベッドやテレビを標準仕様とするほか、2019年2月に国会議事堂前で高級仕様のホテルを、同年秋に横浜で約2300室の大型ホテルなど「ブランド力アップを見据えたホテルの展開を図る」(会社側)。

東横インも従来の「清潔・安心・値頃感」という方針を追求するという。

CBREの土屋氏は「2017年は転換点だった」と説明する。2020年を越えた先に誰が生き残るのか。好調なうちに各社は知恵を絞る必要がある。