iPhoneが今年はさらに「大画面化」する必然
新しいiPhoneはさらに大画面化し、3サイズ展開になると報道されているが…(写真は左からiPhone 8、iPhone X、iPhone 8 Plus:筆者撮影)
2月26日〜3月1日、スペイン・バルセロナで世界最大級のモバイル展示会「Mobile World Congress(MWC)」が開催された。例年のことだが、Androidスマートフォン新モデルのニュースが盛り上がると、決まってiPhone新モデルの話題が持ち上がる。そして今年も例外ではなかった。
Bloombergは、2018年にアップルが大型画面を備える上位モデルと廉価モデルをラインナップに加えると2月26日に報じた。これによると、現在5.8インチのiPhone Xをさらに拡大した6インチ以上のモデルを取りそろえるとみられる。
大画面化が必至といえる2つの理由
有機ELディスプレーを搭載するモデルが6.5インチとなれば、前述のMWCでサムスン電子が発表したフラッグシップモデル「GALAXY S9 Plus」の6.2インチを上回る画面サイズとなる。しかも、iPhone Xと同じように縁がないボディを採用することで、現在のiPhone 8 Plus(5.5インチ)と同じようなサイズ感を実現できそうだ。
2018年モデルの大画面化については以下に述べる2つの理由から確信を持つことができる。
iPhone Xは5.8インチの有機ELディスプレーを備え、過去最大の画面サイズのiPhoneとなった。しかしiPhone Xと、それまで最大画面サイズだったiPhone 8 Plusを比較すると、iPhone Xが「大画面モデルではない」とアップルが解釈する理由がわかる。
iPhone 8 Plusなどの5.5インチディスプレーを備えるiPhoneは、縦に利用するだけでなく、横長に画面を構えるランドスケープモードに対応するユーザーインターフェースが、これまでのiOSに用意されてきた。
たとえばメールやメモなどのアップル純正のアプリでiPhone 8 Plusを横長に構えてみると、左側にメールやメッセージのリスト、右側にその中身が表示され、大画面を生かした活用ができる。
しかしiPhone XとiOSの組み合わせには、このランドスケープモードが用意されていないのだ。つまりアップルはiPhone Xを「大画面モデルのiPhone」ととらえておらず、iPhone XはiPhone 7やiPhone 8の後継と見たほうが適当だ。
iPhone 8 Plusの後継モデルはどうなるのか
では、iPhone 8 Plusの後継モデルはどうなるのか。これが2018年のiPhone Xに大画面モデルが登場すると考えられるヒントとなり、6.5インチモデルの登場を促すことになる。
アップルが画面サイズの拡大へと進む理由をもう1つ挙げることができる。それは、大画面化はiPhoneの買い替えを促進してきた、ということだ。
アップルは3.5インチのタッチスクリーンを備えるスマートフォンとして、iPhoneを2007年に発売した。その後、2012年に画面サイズを4インチに拡大したiPhone 5を投入。2014年には4.7インチと5.5インチへと拡大したiPhoneは、それぞれ、過去の販売台数を大幅に上回り、画面の拡大はiPhoneの成長には欠かせない要素となった。
スマートフォンの大画面化は、デザイン変更以上に既存のiPhoneユーザーの買い替えを喚起する最良の方法だ。アップルは同社のアクティブデバイス数を13億台と発表しており、iPhoneだけのユーザー数を示していない。また、ここ数年の年間の売り上げ数も、2億1000万台とほぼ横ばいだ。
スマートフォンという製品の特性から考えれば、際限なく画面が拡大していくことはない。しかしもう1つの理由を参照すれば、今年の大画面化をさらに確信できる。
アップルが2017年に「これからの10年を切り拓くモデル」として投入したiPhone Xは、欧米で最も購買が活発になるホリデーシーズンを含む2017年第4四半期(10〜12月) に、すべてのスマートフォンの中で最も多くの販売台数を記録した。
アップルのスマートフォン販売は前年同期比から1%の減少ながら、売上高は13%の成長を遂げることができた。ひとえに、iPhone Xを999ドル、日本では10万円以上の価格に設定し、3年ぶりとなるデザイン刷新と大画面化による買い替え需要を喚起できたからだった。
スマートフォン市場は本格的な下落局面へ
米経済誌『Fast Company』のインタビューに応えたアップルのティム・クックCEOは、iPhone Xについて「安くはない」ことを認めている。iPhoneの販売台数が下がったことは、iPhone Xの発売時期と価格に要因があると考えていいだろう。
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そこで取りざたされているのが、6.1インチの液晶モデルの投入だ。有機ELディスプレーモデルよりも価格を抑えながら、大画面化をスタンダードへ設定していくことになる。
こうして、iPhone Xは6.5インチと5.8インチの2サイズ、これに加えて6.1インチのモデルが投入されるとのニュースを解説することができる。注目すべきが価格だ。iPhone Xの999ドルという価格は5.8インチモデルには引き継がず、求めやすい価格に設定されることを期待している。
その一方で、価格をダイナミックに下げられないいくつかの理由もある。スマートフォン市場は本格的な下落局面を迎えつつあり、2017年第4四半期の世界のスマートフォン販売台数は前年同期比で6.3%減となった(IDC調べ)。
スマートフォンの大画面化や顔認証、絵文字のアニメーション機能などの新しいスタンダードを提供し続けているアップルも、その大きな流れには逆らえないだろう。その点から、性急な価格の割引は、平均販売価格を高く維持できなくなるため、よほどの販売台数の積み増しを見積もらないかぎり、難しいとみられる。