「おおいた関ぶりフェア」

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2月中旬、筆者は大分市を訪れた。曇り空で気温は10度ほど。郊外の由布岳には雪が残っていた。駅前から続く商店街は人通りが少なく、シャッターが下りている店もある。2020年の五輪開催に向けた再開発やインフラ整備が進む東京と違い、地方都市はどこも活気がない。

昼食にしようと老舗の料理店に行くと、店頭に「おおいた関ぶりフェア」のチラシが貼られていた。「関ぶり」とは聞いたことない。興味が湧き、さっそく注文してみた。フェアは2月10日から24日まで、市内の20店舗で旬の関ぶりを使った特別メニューを提供するというものだった。

入店先で出されたのは、関ぶりの握り5貫と刺身のセットで860円。豊後水道で水揚げ(一本釣り)された天然ぶりが、この値段で味わえるとは感動ものだ。身が締まったぶりはほどよく脂がのり、非常においしい。あっという間にたいらげてしまった。

ほかの店ではどんな料理を出しているのか、チラシを眺めてみた。さまざまなメニューが載っている。「和風カルパッチョ」「りゅうきゅう(ぶり丼)」「香味醤油ステーキ」「ふきのとうパン粉焼き」など、どれも食してみたい品ばかりだ。

ぶりといえば、富山湾で揚がる氷見の「寒ぶり」が全国区の人気を博しているが、大分の関ぶりは、これに対抗していこうということか。

「関さば、関あじなどが知られていますが、大分はほかにもおいしい魚がたくさん水揚げされています。大分産の魚の消費拡大のために今回、フェアを実施しました。いろんなメニューを提供することで消費者に関ぶりの良さを知っていただくと同時に、料理店の方にも関ぶりを活用してもらいたいですね」(大分市の担当者)

市を挙げて関ぶりのブランド化に取り組んでいるのだ。
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●一本釣り、面買い、活じめで鮮度を保つ

関ぶりが水揚げ、出荷されるのは大分県漁業協同組合佐賀関支店。旧佐賀関漁協時代の1996年に関さば、関あじが商標登録された。水産品として初めての商標登録とあって、全国的なニュースとなり、関さばと関あじは高級ブランドとして認知されるようになった。関ぶりも佐賀関のブランド化の一環である。

ブランド価値を高め、維持していくために佐賀関では、独特の生産、管理、流通システムを採用している。瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかりあう佐賀関周辺の水域は、潮流が速く餌となる生物が豊富。海底の地形が起伏に富んでいるため一本釣りのポイントとなる瀬が多く、好漁場の条件に恵まれている。関さばや関あじは、この瀬に居ついた独立した群れ「系群」といわれている。豊富なエサでよく太って脂がのり、早い潮にもまれて身が締まった高級魚となっているのである。ぶりや真鯛にとっても、このあたりの水域は産卵や索餌のための回遊路となっていて、しばらくのあいだ居ついているのでないかとみられている。

そんな好漁場で育った魚を佐賀関の漁師たちは魚体を傷つけないよう、すべて一本釣りで揚げる。漁港に帰ったあとは網いけすに移され、水面から魚体の大きさを見て重さを判断し、すくいとる。秤にかけない、「面買い(つらがい)」と呼ばれる測定法だ。秤に魚を載せると、暴れて魚体が傷むことを防ぐためだ。

その日釣れた魚は新魚(あらいよ)と呼ぶが、新魚は極端な興奮状態にあるので、新魚専用の網いけすで1日落ち着かせてから、「活じめ」処理をして出荷している。良い魚を、最高の品質で出荷したい――。そんな漁協関係者の熱い思いが伝わってくるようだ。

●多い日で1日400〜500本の水揚げ

関ぶりはいったいどれだけの水揚げがあるのだろうか。日々、大分県漁協組合佐賀関支店では300隻の漁船が稼働しているが、関ぶりの一本釣りに向かうのは40〜50隻だという。秋から3月が漁期とされている。

「このあたりでは関さば、関あじだけでなく、関ぶり、関たい、関いさきと良質な魚が揚がります。ぶりは今の時季、多い日だと400〜500本の水揚げがあります。平均すると100〜200本ですかね。5キロ以上のものを関ぶりと呼んでいますが、大きいものでは12〜13キロになります」(佐賀関支店関係者)

関ぶりは、ネット上では大分の業者が販売しているが、東京の鮮魚店などではまだまだ見かけない。関さばや関あじ並みに全国区のブランドになるのはいつだろうか。 
(文=山田稔/ジャーナリスト)