「Thinkstock」より

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 キャリアと恋愛は、20代女性からの相談の2大双璧です。私は産業医であって、恋愛コンサルタントではないはずなのですが、心と体の不安を抱えた若者が相談にやってくれば、むげに断ることはいたしません。

「好きでもない仕事ばかりしていていいのか」
「同期はぼちぼち結婚し始めているのに、私だけがやりがいのない仕事に追われていて、これではなんのために生きているのかわからなくなる」
「このままでは一生ひとりで生きていくことになるのではないか」

 こんな漠然としたあせりを抱く女子からの相談が、最近とくに増えています。

●突然の過食症

 新卒で金融機関に勤務して9年目、32歳のK.S.さんの例を紹介します。

 すでに、同期入社の女子は本格的に付き合っている相手がいるか結婚を控えた人ばかり、という年齢になりました。そんななか、彼女は大学時代からずっとお付き合いしていた人と、就職後しばらくして別れてしまい、そのあとは特にそれらしい出会いもないままです。彼女は几帳面で仕事もできるがゆえに、新人の頃から難しい仕事を任せられることが多く、そのうえ人がいいのでついつい仕事を引き受けすぎてしまいます。平日は22時以降に退社する毎日です。

 数カ月前あたりから、彼女の食生活パターンに異変が起こりました。夕食が夜遅くなるため、会社でお菓子などつまみ食いをします。仕事が終わり、帰宅途中にコンビニエンスストアで夕食を買うのですが、仕事からの解放感もあってうっかり買いすぎてしまいます。お弁当を2個、菓子パン、アイスクリームなどなど。そんなに大量なのに、家に帰ってから食べ始めると止まらないのです。結局、全部食べてしまってから後悔します。

 このままでは体重が増えてしまうという恐怖が襲ってきて、のどの奥に指を入れて戻して安心します。大量に食べて嘔吐するのは、典型的な過食症の症状です。会社のイントラネットの広報欄に、「心身ともに健康上の不安がある場合は産業医に相談を!」と書いてあったのを見て、私のもとにやってきました。

 彼女と面談すると、「このままの生活では結婚することもなく、ずっと一人ぼっちかもしれない。会社の部署内には中年男性しかいないから出会いなんてない。そんなことを考えると怖くてたまらない。そんな気分のときに次々と口に食べ物を詰め込んでしまうんです」と涙を浮かべながら語り始めました。

 この方のように過食症までいかなくても、将来への不安や私生活の不安のために仕事に集中できないと訴える女性は、男性に比べるとずっとたくさんいます。

 その一方で、欲張りな女子社員のなかには、「男性医師と出会うための方法を教えてください」、さらには「先生、男性医師を紹介していただけませんか」と私に名刺を差し出す人もいます。それはそれなりに肉食系で大変結構なのですが、残念ながらお相手の紹介はできません。そう言ってお断りすると、「じゃあ逆に、男性医師と出会うためにはどんなパーティーに行けばいいのでしょうか」とさらに前のめり気味にかぶせてきたりもします。それは全然逆ではありませんし、私は恋愛コンサルタントではありません。

●行動活性を上げる

 では、ハイスペック女子のパートナー男子は、果たしてどういう人たちなのでしょうか。いろいろな方のお話をお聞きするなかで特徴的だと思うのは、女性がキャリアをつくる過程で自然に出会っているケースが多いことです。たとえば、大学の同級生同士や社内恋愛でのお付き合いなどは、よくあるようです。いわゆる同レベルのカップルです。

 先ほどのK.S.さんですが、結局その2カ月後には不眠症状が悪化し、残念ながら休職を勧めざるを得ない状況になってしまいました。休職して治療を受け、少しずつ状態が安定してくると、復職に向けての準備が始まります。

 私はいつも、行動活性を上げるために少しずつ勉強や趣味の活動を始めるよう、復職の準備段階に入った患者さんに対して指示をすることにしています。また、生活が過度に乱れていないか、また睡眠が十分とれているかなどを確認するために、生活記録をつけていただきます。彼女のある日の記録を見ると、「勉強会に出席」と書いてありました。仕事に関連する分野の勉強会に自発的に参加しているということでしたので、もう安心です。

 産業医は、社員の復職後もフォローアップのための面談を行います。復職後3カ月ほどたったある日、K.S.さんと面談をしました。仕事がとても楽しくできています、と以前とは別人のような笑顔で話をしてくれました。実は最近になって勉強会仲間の彼氏ができて同棲を始めました、という早業つきです。平日は会社と自宅の往復だけ、週末はテレビとネットにしか興味がない女子に出会いがないのは当然です。彼女のお相手は、彼女にぴったりなハイスペック男子でした。

●キャリア構築に取り組む

 20代から30代にかけての時期は、性別にかかわらず、自分のキャリア構築に全力をあげて取り組まなければなりません。仕事をがんばる以外に、社会人大学院や資格取得のための講座などに通う人が多いのもこの年代です。婚活ハイスペック女子たるもの、ハイスペック男子と同じ行動をとってキャリア構築に取り組むことにしてはいかがでしょうか。そこらの婚活パーティーなんかに出るよりも、よっぽどいい人脈がつくれるのではないかと思います。

 自分のことをハイスペックだと言うつもりはないのですが、私自身を振り返ってみれば、合コンで出会った人とお付き合いしたことはありませんでした。やはり、大学、大学院や勉強会の輪が広がって、という感じだった気がします。学びの場では素顔が出やすく、相手のお人柄もよくわかります。そしてもちろん、勉強すること自体が自分自身のキャリアへの投資にもなるのですから、まさに一石二鳥でしょう。

 今年こそ婚活、と考えているハイスペック女子は、社外の学びの場をスケジュールに入れてみてはいかがでしょうか。
(文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表)