ウォッカブランド、アブソルート(Absolut)の場合、プロヴェナンス(来歴)とトランスペアレンシー(透明性)は広告キャンペーンだけの話ではない。同ブランドは現在、メディアの位置付けを「最小コストで買う商品」から「成長手段として戦略的な対象」へとシフトさせつつあり、冒頭のふたつの言葉もその変化におけるキーワードとなっている。

同ブランドの最新広告にはオールヌードの従業員たちが登場する。キャッチコピーは「包み隠さないウォッカ(vodka with nothing to hide)」。これはある意味、実に的を射た言葉でもある。アブソルートと親会社 ペルノー・リカール(Pernod Ricard)はFacebookやYouTubeなどにかかる経費について、その使途の明確な把握に努めているからだ。広告効果測定の透明性に欠け、フェイクニュースが蔓延しているとはいえ、複占状態にあるこの両巨人のオーディエンスはブランドにとって一も二もなく魅力的だと、アブソルートのチーフマーケティングオフィサー、クレイグ・ジョンソン氏は語る。

そして、この巨大プラットフォーマーとの協力関係について、より慎重な姿勢を取る真意を米DIGIDAYに語ってくれた。 彼らのアプローチは米日用品メーカー、P&Gのマーケティング部長マーク・プリチャード氏の好戦的姿勢よりも、英・オランダ系日用品メーカー、ユニリーバのマーケティング担当キース・ウィード氏の穏やかな態度に近いという。以下が端的にまとめたその抜粋だ。

――今回のキャンペーン実施に際し、メディア戦略のイニシアチブを自ら取ったと聞きましたが、それはどのようにして?



今回の「The Vodka with Nothing to Hide」キャンペーン実施に際し、グローバルメディア「プランニング」はすべて社内で行なった。適切なコラボレーター以外とは仕事をしないという考えのもと、我々と価値観や信念を共有すると信じるに足るサプライヤーと個々に話し合いを持った。つまり広く数を打つ散弾銃式ではなく、BuzzFeedやFacebookといった特定のパートナーと直接話しをしたんだ。今回は、パートナーの数を絞ることを第一に考えた。すべてにおいてこの手法を取るわけではないが、こちらの希望に対する最大限の効果を得るには、こうしたパートナーシップの形がベストの場合もあると思う。もちろん、弊社の消費者にダイレクトに伝える必要はあるため、プログラマティック(運用型広告)も利用はする。しかし、弊社が行なっているプログラマティック・バイイングでは現在、質の高いインベントリ(在庫)を重視している。

――無駄を減らすことで、アブソルートのリーチを増やすことができると?



より高品質の広告に特化することで、無駄の減少とリーチの増加に成功している。当然ながら、高品質には一般的にコストが伴うわけだが、高いリーチ数を確実に望める自信があれば、出費は惜しまない。今回のキャンペーンはその実例で、パートナーとCPV(広告視聴単価)でやっているのだが、コストはこれまででもっとも低く抑えられている。今回は費用対効果がきわめて高く、それはひとえに優れたサプライヤーとのパートナーシップのおかげだ。

――マーケターの責任はどの程度だと?



これはすべてに言えることだが、最大限の効果を引き出すには適正評価を利用する必要があり、それができるかどうかは、あくまで我々自身にかかっている。リーチ獲得の努力について言えば、デジタル空間も家庭外視聴やテレビと基本的に大差はないと思う。どのメディアにもいわば不正確な科学の部分はあるが、我々の尺度、「バイイング」パワー、そして協力関係を適切に活用して費用対効果の最大化に尽力する、という考えは変わらない。

――複占状態にあるFacebookやYouTubeにはトランスペアレンシーの問題がありますが、そうしたプラットフォーム上のメディアについて自信を持っているのはなぜ?



つまるところ、パートナーとの緊密な連携に尽きるからだ。たしかに、測定に関していえば、よりオープンなプラットフォームもある。しかし、コンテンツの効果の実体を正確に把握する最良の方法は消費者のフィードバックに耳を傾けることであり、それはコメントやシェアの場合もあれば、我々が独自に行う簡易リサーチから聞こえてくる声の場合もある。A/Bテストやトレンド分析を使えば、確かに素晴らしい知見は得られる。しかし、我々が本当に理解したいのは、自社のコンテンツが消費者の行動にどのように影響を与えているのかであり、知りたいのは我々のキャンペーンが消費者に響いているかどうかだ。そして、現在それができる唯一の方法は、メディアの種類にかかわらず、そこにいる人々との直接の会話だ。

――Facebookのアルゴリズム変更を受けて、彼らのウォールド・ガーデンにかける広告費がかさみかねないという懸念は?



消費者にリーチするため、投資に見合う価値の獲得に常に注力しているわけであり、「ニュースフィード変更後の価格上昇」は、もちろん懸念材料ではある。しかしFacebookが消費者にリーチできる優れたプラットフォームであることは間違いないし、したがってアルゴリズムの変更については心配していない。キャンペーンの実施に際し、Facebookが良いパートナーでない場合は、あるいは不安材料になるかもしれないが。何かしら「変化」があれば、そのときはもちろん対応することになるが、結局のところ、弊社の消費者とダイレクトのコミュニケーションが図れること、それに尽きる。Facebookがより善い市民であり、安全な環境を創出してくれる以上、我々はそれをサポートする。

――英酒造メーカー、ディアジオ(Diageo)は2018年1月、年齢認証に関する懸念からSnapchatへの広告配信を取り止めました。アブソルートはSnapchatに広告を掲載している?



現在、Snapchatとは一切仕事をしていない。Snapchatが歩み寄って、我々の規定に協調してくれるよう辛抱強く交渉している。いまは様子見の状態だ。

Seb Joseph(原文 / 訳:SI Japan)