ゲームがもたらす障害や依存症状について考えてみた!

みなさんはゲームをどのくらい遊ぶでしょうか。スマートフォン(スマホ)のゲームでも、家庭用のゲームでも構いません。1日にどのくらいゲームに触れているか計算してみたことがありますか?

筆者は自他ともに認めるコアゲーマーで、子どもの頃からゲームに夢中のまま何十年も遊び続けています。それはもはや暇つぶしのための娯楽の域ではなく、積極的に「投資」を行い膨大な知識を蓄え思想を構築していく「趣味」の領域として遊んでいます。

恥も外聞もなく書いてしまえば、筆者は1日に12時間近くもゲームに費やしている日があります。それはオンラインゲームであったり、スマホゲームであったり。フリーライターという不定期な仕事柄、取材や執筆の予定がない日にはひたすらゲームパッドを握りしめている日もあります。

そんな筆者にとって、とても耳の痛い話題が昨年末に報道されました。それは世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を疾病の一種として定義し国際疾病分類に盛り込む方針であると伝えたことです。筆者は憤慨するでも驚くでもなく「まあそうだろうなぁ」と諦めるようにそのニュースを流し見ていましたが、果たしてゲームは病気を引き起こす「害」なのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はそんなゲームによって引き起こされる障害や依存症状について考えてみます。


ゲームは楽しい。しかしその先には危険な香りも……


■ゲームに依存性はあるのか
WHOが2017年12月に公表した「International Compendium of Diseases」の草稿によれば、「中毒性行動障害(Disorders due to addictive behaviours)」の項目において「ギャンブル障害(Gambling disorder)」と並ぶかたちで「ゲーム障害(Gaming disorder)」を精神疾患の1つとして分類すると明記されています。そしてその行動パターンは「個人的、家族的、社会的、教育的、職業的または他の重要な機能領域において重大な障害をもたらすほど重大である」とも記述されており、非常に依存性が高く深刻な障害であるとしています。


WHOによる草稿の該当箇所


当然ながらこの草稿に反発したのはゲーム業界です。米国のゲーム業界団体であるESA(Entertainment Software Association)はプレスリリースにおいて声明を発表し、「熱狂的なスポーツファンやあらゆる種類のエンターテインメントの消費者と同じように、ゲーマーは情熱を持って時間を費やしている。ゲームは40年以上にわたり、ビデオゲームを楽しむ世界の20億人以上の人々を魅了している」、「ゲーム依存を疾病に指定することでうつ病を始めとした本来精神疾患とされているものが些細な疾病に位置づけられる危険がある」と独自の見解を述べ、WHOの方針に強く反対したのです。

しかしどうでしょうか。本当にゲームには依存性や中毒性は存在しないのでしょうか。単なる筆者個人の見解に過ぎませんが、ゲームには中毒性とまではいかないにしても強い依存性は存在すると感じています。それはコアゲーマーを自称する筆者だからこそ感じるものなのです。


ESAによる反論。どちらの意見が正しいのだろうか


ゲームの依存性を語る上で、これまでに起きてきた長時間のゲームプレイが引き起こしたと考えられる事故は無視できないでしょう。軽く検索しても、古くは2002年10月の韓国・中央日報が報じた死亡事故をはじめ、数多くの死亡事故や重篤な事故のニュースが見つかります。


中央日報によるオンラインゲームプレイヤーの死亡事故を伝える2002年の記事


毒物による障害を伴う中毒とは違い、いわゆる依存もしくは嗜癖(しへき)と呼ばれる症状は「物質使用を繰り返し、使用量が増加し、使用できない状態となると重篤な症状を呈し、使用に対する押さえがたい衝動が高まり、身体的・精神的悪化に至る状態」とも定義されており、まさにゲームをやめられない、やめるとまたゲームを遊びたくなる禁断症状といったものが当てはまるように感じられます。

WHOが危惧し警鐘を鳴らす依存性がこの点であるのは間違いないところです。一方でESAが反論する論旨は「ゲームは他のスポーツ同様に愛され楽しまれている」といった表現に終始しており、禁断症状に近い熱中性や依存性がないという根拠を示していません。むしろ依存性や熱中性があるからこそ、人々はESAが言うようにゲームに熱狂し、魅了され、情熱を持って時間を費やしてきたのではないでしょうか。

一般には、それは障害と呼ばれるほどの重篤な症状に至ることはないのかもしれません。しかし本当に20億人という人々がゲームをプレイしてきたのならば、その熱中度合いにもかなりの個人差が出てくる可能性があります。日本では課金ガチャを主体としたスマホ向けゲームが流行り、プレイヤーの射幸心を煽った結果何十万円もつぎ込んでしまうような事例が大きな社会問題ともなりました(こちらの過去記事を参照)。この心理的な状態・状況の継続を「障害」と呼ぶのかは別としても、「依存」や「嗜癖」と呼ばないのはむしろ不自然だとすら感じます。


かつてネット上で炎上騒ぎを起こしたオンラインゲームの開発画面。人々の依存性はむしろゲームメーカーによって誘導されてきた可能性すらある


■ゲームを悪者にしてはいけない
WHOによる「International Compendium of Diseases」の草稿は、今年5月に正式に総会へ提出され6月には公表を予定しているとのことです。これによって突然ゲーム規制が厳しくなるといったようなことはないと思われますが、仮に草稿に大きな修正が加えられないまま「障害」として認定されれば、各国のゲーム業界団体などは今以上の自主規制やガイドラインの厳格化を図らなければいけない状況が生まれるかもしれません。また、日本のスマホ向けゲームで主流となっている課金ガチャも射幸心を煽りすぎるとの指摘が常にあり、ゲーム障害の認定によってその風当たりがますます強まることは必定でしょう。

みなさんはこの問題をどうお考えになるでしょうか。実のところ筆者は「障害の認定もやむなし」とすら感じています。ゲーム(ビデオゲーム)は間違いなく楽しい遊びであり、遊び方さえ間違わなければ素晴らしいコミュニケーションツールとして機能します。しかし遊びに夢中になるあまり理性的な判断ができなくなって課金しすぎてしまったり、学校や仕事を休んでしまうようになっては完全に逆効果です。筆者自身、過去にそういった経験をしたり依存的な感情になったことがあるからこそWHOの主張を認めるところなのです。

ゲームを悪者にしてしまうかどうかは誰かが決めることではありません。ゲームをプレイするユーザー自身の行動が決めるのです。ユーザーが現実を忘れ依存的に遊び続けてしまえば、それは「悪いもの」になります。しかし節度を持って遊ぶことができれば、それは健全なレクリエーションの1つにすらなり得るのです。

WHOが障害と認定しようとしまいと、ゲームは常に理性的に、入れ込みすぎないように楽しむことを心掛けたいものです。


みなさん、ゲームはほどほどに楽しみましょう


記事執筆:秋吉 健


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