ダッジ・チャレンジャー(写真はイメージ)CZmarlin/ Wikimedia Commons

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 フェラーリでもポルシェでもない、アメ車によって達成された史上最悪のスピード違反。時速100キロ制限の中央自動車道を235キロで突っ走り、実に135キロもの速度超過――。

 3月1日、スピード違反で逮捕されたのは、会社員の白井良宗容疑者(41)。

 ことの発端は、2016年1月29日午前4時15分頃、東京都国立市の中央道上り線を時速235キロで走る普通乗用車を、オービス(自動速度違反取締装置)が捉えた。制限時速100キロの中央道を235キロで走っていたのだ。史上最高速での逮捕だという。しかも、この車輌は、過去に5件のスピード違反を繰り返していたとも。オービスに撮られたその写真には、車両からフロントのナンバーは取り外され、白井容疑者はオービスに向かって中指を突き立てていたというから、呆れる。

ダッジ・チャレンジャー(写真はイメージ)CZmarlin/ Wikimedia Commons

 運転していた車は、クライスラー社のダッジ・チャレンジャー。クライスラーといえば米国ビッグスリーに数えられる自動車メーカーの1つだったが、現在はイタリアのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(本社は英国)の傘下だ。とはいえ、ダッジ・チャレンジャーはアメ車を代表する車と、アメ車販売会社は言うのである。

「あくまで報道された写真で見る限りですが、おそらく14年まで発売されていたチャレンジャーSRT8だと思います。当時のチャレンジャーの最高モデルで、排気量6.4リッターのV型8気筒エンジン。大排気量ですから、470馬力あり、トルクも太く、スピードも300キロくらいは出ます。ハリウッドのアクション映画にもよく使われていますからね。『ドロドロドロ……』というアメ車らしいエンジン音で力強い、いわゆる“マッスルカー”の代表格です。当時の新車価格で700万円ぐらいでしょうか。それにしても、車体がグリーンというのは珍しいし、フロントリップが紫というのも……。こんなに目立っては、捕まってもしょうがないんじゃないですか」

「警察にケンカを売っているとしか…」

 自動車専門誌の編集部員は意外性に驚く。

「意外でしたね。フェラーリやポルシェならともかく、アメ車というのは。しかも正規輸入されていないダッジ・チャレンジャーを入手するには、並行輸入しかありません。暴力的ともいえるスピードがウリの車ですから、新車であってもさらにパワーアップの手が加えられていることがありますし、中古ならなおさら。この車、どのくらいの性能だったんでしょうか? 現行のチャレンジャーには707馬力を誇るものもありますが、全開で発進すると、バイクのようにウイリーするほどのパワーがあります。そうなったら、ハンドル操作は効きませんから、非常に危険です。それを会社員が運転していたというのに、闇を感じますね。逮捕された写真も、なぜか笑っていましたし。もっとも、時速235キロって、すごいスピードに思われるかもしれませんが、国産車であってもそれなりの車なら、リミッターをカットしてしまえば出てしまいます。それを普通の車好きは、峠を攻めたり、高速の飛ばせるところで飛ばす、ということはありますけど、あえてオービスのあるところで235キロも出すというのが異常です。いまどき、カーナビにもオービスの位置情報は入っていますからね、警察にケンカを売っているとしか思えません」

 交通ジャーナリストの今井亮一氏も呆れて言う。

「出しも出したり……。オービスによる取締は、ナンバーを元に車の所有者を割り出し、その住所へ呼び出しの通知を送るわけです。警察にはオービスから、どんどん違反車の写真が送られて来るわけですから、違反者の割り出しから始めなくてはならないようなこうした案件は、後回しになることがあります。その間に、“ナンバーを外していれば捕まらない”とでも思ったんでしょうね。しかし、中指まで突き立てられたら、警察だってナメられたまま黙っちゃいません。犯行から2年以上かかっているわけですが、逮捕して、実名を晒し、予備軍を震え上がらせようとするのは当然でしょう」

歴代の速度超過は…

 ちなみに史上最高速の違反というからには、歴代ランキングはどうなるのだろうか。警察庁に訊いてみると、

「そういった統計は、まとめていません。今回発表したのは警視庁ですが、新聞等は『過去最悪の速度超過と“みられる”』と報じていますよね。間違いないと思いますが、明確に歴代の記録を調べてのことではありません」

 過去に報じられた、めぼしい速度超過を挙げると――、

 17年7月、教員採用されたばかりの20代の女性教諭が関越道を時速169キロで走行。免停と罰金9万円の略式起訴に加え、学校からは戒告の懲戒処分を受けた。「トイレに急いでいた」という。

 16年9月、市職員が東北道を時速192キロで走り、92キロオーバーで逮捕。1審で懲役4月執行猶予3年の判決を受け、刑が重すぎると最高裁まで争ったが確定し、公務員法により失職。

 10年10月、無職の男が自動車販売店の試乗車を使って、愛媛県内の自動車専用道を70キロオーバーの時速141キロで走行している動画がYouTubeにアップされていたことから発覚。動画には速度メーターはむろん、車外の景色、追い抜いた車なども映っており、警察は動画を解析して男を割り出した。「海外の友人に車を見せたかった」という男は、書類送検に。

 05年1月、阪神タイガースの筒井和也投手(当時23歳/16年に引退)が山陽道を時速183キロで走行。球団から罰金50万円、当面の対外試合出場の禁止と、自動車運転の禁止を申し渡される。ちなみに当人の球速は、最速151キロだった。

 03年7月、北海道の道央道でフェラーリに乗った会社員が時速183キロで走行。パトカーが約1キロ追って、現行犯逮捕。「仕事の打ち合わせに急いでいた」という。

 前出の交通ジャーナリスト今井亮一氏は、

「今回のスピード違反はかなり悪質だと言えます。高速道でのスピード超過は40キロ以上で刑事罰である罰金となり、50キロ以上ですと最大10万円の罰金もしくは6月以下の懲役が下されます。そして減点は12点の一発免停です。それは51キロオーバーでも、100キロオーバーでも変わりません。ただ、今回の場合は、警察も罰金では済まさないでしょう。執行猶予も初犯は通常3年ですが、4年になるかもしれません。また、余罪が5件あるということですので、写真も撮られているのでしょう。これらを一緒に立件するかどうか、それによって免許取り消しの可能性も出て来るでしょう。スピード超過は、飲酒運転や危険運転致死などに比べて、非常に軽いとも言えます。これを契機に法定刑の厳罰化が進むかも知れませんね」

 こんな無謀な運転をする輩の免許は、取り消したほうがいい。ただし、故意の135キロオーバーと不注意からの10キロオーバーとを、一緒に厳罰化されては堪らない。はた迷惑な“チャレンジャー”である。

週刊新潮WEB取材班

2018年3月4日 掲載