素材業界にもビジネスモデルの転換が迫られる(イメージ)

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 米経営学者のリタ・マグラス氏がかつて提唱した「セメント・as・a・Service」。セメント世界大手のメキシコ・セメックスを例に挙げ、セメントをサービスのように供給するビジネスモデルを褒めたたえた。

 IT業界で普及するSaaS(サービスとしてのソフトウエア)の素材版といえる。素材業界は「トン当たりいくら」の売り切り商売がほとんどだが、月間や年間での定額制で素材を供給するビジネスモデルの誕生が、少しずつ近づいている。

 三菱ケミカルホールディングス(HD)でチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を務める岩野和生執行役員は「材料メーカーと契約すれば、化学品を使った顧客の製品の品質まで、つまりサプライチェーンの一歩先まで保証するビジネスモデルが確実に出てくる」と予言する。 

 例えば、機械用潤滑油版のas・a・Serviceは、センサーを顧客の生産設備に設置して稼働状況を常時監視する。潤滑油が足りなくなったら潤滑油メーカーが補充する。

 この仕組みを採用すると、必要最低限の潤滑油しか使わなくなるため、製品自体の使用量は減る。ただ、顧客にとって“設備保守委託”で品質を担保できるメリットがあり、割高なサービス料金でも検討に値するはずだ。『モノからコトへの転換』がBツーB(企業間)主体の素材業界でもようやく本格的に動きだしそうだ。

 ただ、顧客の設備にセンサーなどを導入してデータを取得するハードルは高い。それでも少しずつ試行が始まっている。

 旭化成は2017年11月に商船三井と共同で船用回転機器トラブルの予兆検知の実証事業に乗り出した。自動車専用船やタンカーのポンプなどに振動センサーを設置して状態を監視する。一見、畑違いと思われるが、旭化成が長年の化学プラント運転で培った解析技術が使われている。

 今は直接、素材ビジネスにつながるわけではない。しかし、実証を通じた相手との関係構築などのノウハウは来るべきビジネスモデル転換に生きるはずだ。

 自動車など他の業界と同様、素材各社も大転換期にある。「2030年にどんな顧客が勝ち残るのか。付き合いのある日本の顧客が全社勝ち残れるとは限らない」(化学大手幹部)と厳しい見方。

 長期視点に立てば、素材業界は付き合う相手を変えていかなければならない。日本中心からグローバルへ、大手だけでなく新興企業とも関係を深める必要がある。

 「パートナーにとってメリットがあると思われなければ組んでもらえない」(同)と自らのビジネスモデル転換の成否が先々の雌雄を決することになる。
(文=鈴木岳志)