YouTubeでムービーを公開して世界中の人々を楽しませる「YouTuber(ユーチューバー)」たちは、将来の職業として子どもたちから憧れられておりイギリスでは3人に1人が、日本では小学生4年生の3位にランクインしており、YouTuberの中にはハリウッドスターのように1年で何十億円も稼ぐ人たちがいます。しかし、ドイツの大学の調査によるとYouTuberとして人気になるには難しく、人気になれたとしてもYouTubeからの収入のみで生活するのはさらに厳しいとのこと。人気なのになぜ収入が厳しいのか、新しくYouTuberとして始めた場合にはどのような壁に当たるのかをBloombergが紹介しています。

‘Success’ on YouTube Still Means a Life of Poverty - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-02-27/-success-on-YouTube-still-means-a-life-of-poverty

‘Success’ on YouTube Still Means a Life of Poverty - YouTube

ドイツのオッフェンブルク大学のマティアス・バルトル教授の調査によると、ムービーを投稿しているYouTuberのうち、再生回数の上位3パーセント以上になると、再生回数が月に140万回を超えるとのこと。しかし、YouTuberとして始めた人たちのの多くはハリウッド俳優を目指す人たちのように一握りの人が成功し、多くの人は願いがかなわずに散っていきます。



YouTubeには投稿したムービーにより広告収入を受け取る制度「パートナープログラム」があり、この制度で生計を立てようとしているYouTuberの96.5パーセントは、平均的なアメリカの貧困ラインを下回る収入です。もし、軌道に乗ってチャンネル登録者数が上位3パーセントで再生回数が月140万回を超える人気YouTuberになった場合の年収は約1万6800ドル(約180万円)になると予想されています。しかし、この収入は、アメリカの貧困ライン収入1万2140ドル(約130万円)をやや上回るぐらいであり、アメリカの2人世帯の収入2人世帯の平均収入の1万6460ドル(約180万円)と比べると人気にクリエーターになれたとしても、あまり豊かな収入でないということがわかります。

ノースカロライナ大学アリス・マーウィック氏は「ケーブルテレビでのレギュラーを務めているなら、良い稼ぎになるでしょう。しかしYouTubeで出演してもそうはなりません。YouTubeで50万人のチャンネル登録者を持つことができたとしてもスターバックスコーヒーなどで働かざるを得ないでしょう」とコメント。



YouTubeは2005年に生まれ、当時の子どもたちは、毎日の生活でYouTubeの大人気YouTuberたちのムービーを視聴することを習慣として育ってきました。2017年のイギリスの世論調査によると、6歳から17歳までの子どもうち、3人に1人は、職業としてYouTubeの収入のみで生活するYouTuber、「フルタイムのYouTuber」に将来なりたいという調査結果が示されました。この結果は、医者か看護士になりたいという子どもの割合の3倍とのこと。



この将来設計をあまり良いものとは思っていないYouTuberがいます。人気YouTuberで、イギリスで毎年行われているYouTubeのコンベンション「Summer in the City」の創始者でもあるTom Burn氏の周りでもこの流行は起きており、いとこが「大学に行かずにフルタイムのYouTuberになりたい」と言ってきたとのこと。その考え方にBurn氏は「私は『そんなバカげたことを言うんじゃない』」と返し、Burn氏は、「YouTuberは仕事としてやっていけるものと保証できません」と語っています。

PIXAR STUDIOS HAUL | Tom Burns - YouTube

バルトル教授の調査では、2016年のYouTuberの視聴数の上位1パーセントにあたる「トップレベルのYouTuber」は、1カ月に再生回数が220万回から4210万回以上とのこと。トップレベルのYouTuberは、スポンサー契約などのYouTubeだけではない「副収入」を得ているとし、所得の算出は複雑になると示されています。



以上のことから、上位3パーセントの「人気YouTuber」と上位1パーセントの「トップレベルYouTuber」の間には収入における大きな差があることが予想できます。



YouTubeの広告収入のアルゴリズムは時代と共に変化して詳細は公表されていませんが、バルトル教授は平均して再生回数が1000回につき1ドル(100円)の収入を得られると算出しています。一方で「私は再生回数が1000回につき35セント(約37円)のYouTuber数人と5ドル(約540円)のYouTuberと契約している」と、インフルエンサーマーケティングの調査会社ヒューゴ・オブ・エージェンシーのハリー・ヒューゴ氏は語っており、YouTubeの広告収入はユーザーにより異なっているという実態があります。



YouTubeの広報担当者は、「YouTubeはスポンサーシップや視聴者側が課金してコメントで自分をアピールする『Super Chat』の機能を導入するなど、クリエイターたちの収入が多くなるように働きかけています。前年の2017年と比べてチャンネル登録者数10万人を超えたクリエイターの比率は40パーセント増えている」とコメント。メールでは「YouTubeではこれまでクリエイターたちの並外れた成長を見続けてきました」と回答しました。

バルトル教授の調査によると2006年のYouTubeの全再生回数のうち、63パーセントが上位3パーセントの人気YouTuberのムービー再生回数により占められていました。そして、10年後の2016年ではその占められている再生回数の割合が63パーセントから約90パーセントに上がっています。一方で2016年から活動を始めた後発の新人YouTuberたちの85パーセントは、1カ月につき最大再生回数が485回と少ない再生回数です。つまり、YouTuberの市場は、上位の人気YouTuber同士が競い、後発のYouTuberが参入しても昇格が難しい「寡占」状態といっても良いでしょう。



YouTuberとして活動するには、ハリウッド俳優のようなオーディションはなく、スタジオに観客はいません。ハリウッドの近くにいる必要はなどはなく、スマートフォンとインターネットがあれば理論的に始められます。しかしYouTuberにもプロと新人の階級があります。人気YouTuberのCaseyNeistatと同じ配信機材をそろえようようとすると3780ドル(約40万円)の費用がかかるとのこと。

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グランドキャニオン大学の学生のアッシャー・ベンジャミンさんは自分のYouTubeチャンネルのムービー作成のために、460ドルをつぎ込んでそろえたビデオカメラと三脚を使い、毎日ムービーを投稿しています。ベンジャミンさんは150件以上のムービーを公開しており、自分が食べたものやルームメイトを出演させる内容でムービーを投稿しています。ベンジャミンさんは、この活動について「どこで終わらせるかわからない。仕事か他の何かにつながればかっこいいし、見ていてほしい」とコメント。ベンジャミンさんは2018年の始めからチャンネル登録者が増え、150人を超えたところです。

YouTubeは2018年1月に、広告収入制度で支払うチャンネルの基準を変更。YouTubeで広告収入を得られるチャンネルは、「チャンネル登録者数が1000人以上」で「過去12か月の総再生時間が4000時間以上」という条件を満たすチャンネルです。この条件により、チャンネル登録者と再生時間がゼロで始める後発の新人YouTuberは、広告収入を頼ってフルタイムのYouTuberを目指すのはさらに難しくなっています。

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後発のYouTuberとして新たに参入したい場合、多くの人気YouTuberを生み出した手法である、日常のムービーを投稿するビデオ・ブロガー(vlogger)のジャンル「People and Blogs(人々とブログ)」を避け、ゲームコントローラーを手に取り「Game(ゲーム)」ジャンルのムービーを作成して投稿するのが成功確率が高いだろう、とBloombergは伝えています。