PGAフェニックスオープンでのリッキー・ファウラーのショット。後ろには多くの観客が見つめている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

米国アリゾナ州TPCスコッツデールで2月に開催された、PGA TOUR(米国男子ゴルフツアー)フェニックスオープンは松山英樹の大会3連覇がかかっていたが、第2ラウンドスタート前に棄権して大会3連覇はならなかった。

しかし、PGA TOURで最大の観客数を誇るこの大会は、1週間で延べ70万人近くの観客を集めた。日本の男子ツアーは、日本ゴルフトーナメント振興協会によれば、2017年の年間入場者数(総ギャラリー数)が29万2805人(国内24試合、アジアツアー共催の2試合を除く)だから、たった1週間で日本の男子ツアーの入場者数を大きく上回る観客を動員している。PGA TOUR恐るべしである。

日本の男子ツアーとは規模がケタ違い

2017-18シーズンの試合数は49、賞金総額3億6300万ドル(約400億円)で、日本の2018年男子ツアーJGTO(日本ゴルフツアー機構)の試合数25、賞金総額35億円755万円と比ぶべくもない。

そんな日米のツアーの格差が大きい中で、昨年12月JGTOと米国PGA TOURが提携することを発表した。基本契約の概略は以下の4項目だ。

・JGTO及びPGA TOURは個々の発展を相互に支援するためにより緊密かつ戦略的に協同する。
・将来を見据えた日本国内におけるPGA TOURとの共同開催の実施
・PGA TOURのノウハウ提供(トーナメント運営、選手教育、その他)
・各々のツアー及び選手のマーケッテングやプロモーションについて相互に支援する。

日本側には、米国側のビジネスモデルや選手教育など、参考にすべきことがたくさんあると思うが、米国側のメリットは何であろうか。

2月に来日したPGA TOUR副社長でグローバル・ビジネス・アフェアーズの肩書を持つタイ・M・ヴォータウ氏にインタビューする機会が得られたので、PGA TOURが目指すものや、JGTOとの連携の狙いについて聞いてみた。


東京・虎ノ門のPGA TOUR アジア支社オフィスで取材に応じたヴォータウ氏(筆者撮影)

ヴォータウ氏は1999年から2005年まで米国LPGA(女子ゴルフ)ツアーのコミッショナー、2006年からPGA TOURに転じている。現在IGF(国際ゴルフ連盟)の副会長でもあり、オリンピックのゴルフ競技にも関わっている。

PGA TOURの中で、ヴォータウ氏の役割は、米国以外の地域での、メディア、企業のスポンサーシップ、ライセンスおよび、その他の収入の流れを含む、すべてのビジネスラインにわたってツアーの国際戦略のすべてを統括する役割を担っているとのことである。

PGA TOURというと賞金総額やツアーで活躍する選手が話題となるが、その組織として事業規模をヴォータウ氏に確認してみた。年間売上は10億ドル(約1100億円)でスタッフ数は750名とのことである。その売上のベースとなるのは世界200カ国以上で放映されているツアーの放映権料、ツアースポンサーからの収入、トーナメント収入から成り立っており、毎年3〜5%伸長しているという。

JGTOとの提携については、「JGTOと良い関係であったが、提携してからさらに交互に情報交換が緊密になって、双方にメリットが出てきた。JGTOが成功することはPGA TOURが成功することに繋がる。JGTOが強い組織になって良い選手を育成し、PGA TOURで活躍するようになれば、注目され、スポンサー企業やツアー中継への関心も高まり、ウィンウィンの関係の構築ができる。PGA TOURとしてできることは何でもしたい」と前向きな答えであった。

日本企業とPGA TOURの関係性は深い

推察するに、ゴルフでは世界で2番目大きい日本市場の価値を認めて、また日本の経済力を支える企業が、PGA TOURの価値を認め、スポンサー企業となることも期待しているのではないか。テレビ放映権料について、当然金額は明かさないが、日本でPGA TOURを放送しているNHK、ゴルフネットワークは重要なパートナーであると発言していた。また、SONY、HONDA、BRIDGESTONEなどの日本企業がPGA TOURを支えている大きな協賛企業であると感謝していた。

具体的に提携として「現在、秋に韓国、中国、マレーシアでPGA TOURが開催されているが、日本での開催も視野に入れて、JGTOを含め、スポンサー企業などを探して調整していきたい」と今後のスケジュールの詳細は語らなかったが、日本での開催も前向きに検討していることを明かした。

日本でも世界のトップクラスの戦いであるPGA TOURがみられる日が近いことを予感させる。日本での開催となれば、ゴルフファンの増加や日本ツアーの選手にも刺激になることは間違いない。

また、PGATOURは米国外でもカナダ、ラテンアメリカ、中国でも開催しており、ホームページでもその情報を発信している。これらのツアーの上位選手が、PGA TOURの下部ツアーのWEB.COM TOURへの出場権を得られる流れができている。

日本のJGTOの、世界での今後の位置づけがどうなるのか。PGA TOURの一つとして組み込まれる可能性も捨てきれない選択肢であると思う。選手にとっては、ゴルフというスポーツが野球やサッカーと同様にグローバル化し、自分の価値を高めるために、世界ランキングの100位以内の選手が集まるPGA TOURを目指す道が明確に開かれることは良いことである。ツアー選手の集まりであるJGTOとしても前向きに検討するのではと思う。

PGA TOURが今後、目指す方向についてヴォータウ氏は「ツアーのさらなる成長を目指している。成長することで、例えば力を入れているチャリティー活動世界に広げ、子どもたちがゴルフに接する機会を増やしていきたい。子どもたちがゴルフをプレーする機会や、ツアーをテレビや会場で見てもらえれば、ゴルフのファンが増えてくる。世界でゴルフを広げていきたい。特にアジアでゴルフの振興に力を入れていきたい」と米国市場だけでなくグローバルでツアーの発展を目指しているとのことである。

2020年の東京五輪での盛り上がりも確信

東京五輪のゴルフ競技についても「ゴルフが盛んではないブラジルのリオであれだけ成功したので、ゴルフが盛んで、ファンも多い東京では、更に注目されて成功を収めることは間違いないと確信している」と話した。

「Play more, watch more」と日本のゴルフファンへメッセージをもらったが、日本でPGA TOURに高額の放映権料を払っているNHKとゴルフネットワークへの配慮も忘れないビジネスマンの顔も持っていると感じた。インタビューは虎ノ門にあるPGA TOURのアジア支社のオフィスで実施したが、ちょうどインタビュー終了後、アメリカンフットボール(NFL)のスーパーボウルの生中継をしている時間帯だった。インタビューが終わると早速スタッフとテレビ中継に見入っていた。

ゴルフビジネスの中心にいるヴォータウ氏だが、米国人にとってスーパーボウルは特別なイベントであることを改めて感じた。PGA TOURが改革により、2013年からプレーオフの開催を9月に移動したのも、他のスポーツイベントであるNFLやNBA(バスケットボール)との兼ね合いとも聞いている。スーパーボウルへの米国人の食いつきを見ると、大胆に、全体のスケジュールも変えてまで、生き残りをかけるゴルフビジネスの厳しさを垣間見た気がする。

日本の男子ツアーはPGA TOURとの提携を良いきっかけとして、スポーツビジネスの中で自らの立ち位置を明確にしていかなければならない。野球、サッカーや他のスポーツとの競合だけでなく、レジャー産業としても次世代に支持されないと生き残りが厳しいことを強く感じた。