ダイエーは店舗が津波で孤立した状況を想定した訓練を実施(東京都江東区の本社)

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 津波で孤立した店舗が限られた通信手段と現場の判断で、来店客や従業員の安否確認や早期の営業再開を適切に実行できるか―。ダイエーは2月上旬、和歌山県沖での南海トラフ地震発生を想定した訓練を実施した。東日本大震災から7年。BCM(事業継続マネジメント)の整備は進んでも、行動に結びつけるには、事前の心構えが重要になる。

 日曜8時、和歌山県内7店舗の店長が田辺SC店(和歌山県田辺市)に会議のため集まっていたところ、最大震度7の地震が発生。20分後には一部店舗に津波が到達して停電し、電話はつながらない―。こうした「想定」と店舗用の震災対策マニュアルを元に、店長らが討議。“唯一の通信手段”となったIP無線を使い、東京都江東区にある本社と連絡を取った。

 地震から2時間後。「安否確認できた従業員は87人です」。店長の報告に、本社の“対策本部”から「確認できていない人は何人いるのか」と質問が飛ぶ。さらに1時間後には田辺SC店の店長が「従業員から『屋上駐車場で営業したい』との声があった」と報告し、商品の供給や釣り銭の確保について打ち合わせた。

 ダイエーの和歌山県内7店舗は海の近くに立地している。災害時には道路の寸断や渋滞、交通規制などで、近隣地域から迅速に駆けつけられず、店舗が孤立する可能性があることから今回、訓練を実施した。

 東日本大震災当時、ダイエーの近澤靖英社長はイオンの執行役を務めており、被災地に入り現地責任者として指揮を執った。沿岸にあるイオンの店舗の中内には、東日本大震災の発生後に丸1日間、本社と連絡が取れなくなった店舗があった。「本社の判断を仰げない状況で、店長や従業員が安全な場所までお客さまを誘導したり、商品を配ったりしていた」と現場の機動力を振り返る。

 イオンの津末浩治グループ総務部長は「判断する訓練」の重要性を説く。災害時には来店客や避難者の安全確保などについて、正しい情報をつかみ、現場で決断すべき状況も出てくる。冷静に対処するためには、ハード面だけではない備えもカギを握る。
(文=江上佑美子)