2月28日、Apple Watch Series 3用のスノースポーツに特化したアプリが登場した(筆者撮影)

2017年9月にアップルが発売したApple Watchの最新機種「Series 3」。バッテリー持続時間18時間は前機種と変わらないが、GPSと高度計、そして単体でのモバイル通信をサポートしており、「iPhoneを持たずに過ごす時間を人々に与える」新しい価値を提供するようになった。


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これまで、Apple Watchはフィットネスやワークアウトを中心とした機能で市場を喚起してきたが、2018年の注目は医療分野になる。アップルは昨年9月の発表イベントで心臓病の研究やユーザーの頻脈を検出するアプリ「Apple Heart Study」を米国向けに提供している。

加えて、2018年春に配信されるiOS 11.3では医療情報を自分のiPhoneに集約できる機能を提供するほか、アップル自身も従業員とその家族向けのかかりつけ医を春から開設し、同社のデバイスやサービスを生かしたコンシェルジュのような医療サービスを目指すという。

iPhone以上に身につけ続けるApple Watchは、スマートフォンではできなかった新しい分野を開拓しているまっただ中だ。

スノースポーツに特化したアプリが登場

そうした中、2月28日にApple Watch Series 3で活用できるスノースポーツに特化したアプリが登場した。Slopes、Snoww、Zonesなどがアップデートにより、スキーやスノーボード中のカロリー計測や滑走速度(平均・最高)、滑走数、滑走時間、水平距離、高度差を記録できるようになったのだ。

アップルはApple Watch標準のワークアウトアプリに「スキー」や「スノーボード」を用意していないが、同社は既に、GPSやモーションセンサー、心拍センサーを組み合わせたスノースポーツのアルゴリズムを完成させており、アプリ開発者は独自のアルゴリズムを作らなくても、Apple Watch向けのスノースポーツ計測アプリを完成させられる。

Slopes、Snoww、Zonesは、こうしたスキーワークアウトのAPIを活用している。

例えばSlopesを試してみると、リフトの時間、滑走コースの3Dモデル、最高速度、消費カロリーなど、今まで自分でも数字で知ることがなかったデータを手に入れることができる。具体的には、最高速度は54.3km/hで、最高高度は2668m、最長のゲレンデの距離は5.2kmで742m下山し、65キロカロリー消費したことが分かった。

グローブを脱がずに扱うことができる

その間に撮影した写真も自動的に表示され、スキー体験を「ただ楽しかった」だけではなく、より克明に記録に残すことができる。ちょうど、平昌オリンピックのスキー滑走をテレビでデータとともに観戦していた時期なだけに、手首に付けた小さなデバイスで自分のデータが手に入ることは驚きであり、楽しい体験だった。


ゲレンデでスマートフォンを扱うのは大変だ(筆者撮影)

スマートフォンで十分ではないか、という意見もあるかもしれない。たしかに今のスマートフォンは防水対応が当たり前になり、ゲレンデに持って行くにはぴったりのデバイスである。筆者が訪れたゲレンデもケータイの電波が届くエリアで、一緒に訪れた友人とのコミュニケーションも取れるし、写真も撮影できる。


自分の行動を正確にトラッキングできる(写真:iPhone画面をキャプチャ)

しかし、スマートフォンを扱うには、特殊なものでない限り、いちいち防寒用のグローブを取り外さなければならない。マイナス10℃以下と気温が極めて低いゲレンデ上では3分もスマートフォンに触っていれば手が真っ赤になってしまうし、凍える指先はいくら気をつけてもミスタイプを連発する。タッチパネルに反応する特殊な手袋をしていた場合にも、ミスタイプは免れない。

一方Apple Watchは手首のグローブをめくるだけで、すぐに情報を見られ、音声でメッセージへの返事ができる。そこに加えて、初めてのゲレンデでも、自分がどのリフトにいて、どのコースにいるのか表示してくれるアプリがあり、その便利さに驚かされた。

筆者がそんなスキー体験をしたのはレイクタホだ。サンフラフランシスコから北に4時間ほどクルマを走らせたところにある巨大な湖には、周囲を取り囲むようにして15のスノーリゾートがある。1960年にオリンピックが開催されたスコーバレーは中でも著名だ。そんなスコーバレーの独自のアプリ「Squaw Valley | Alpine Meadows」も、前述のApple Watchを用いたスノースポーツのAPIを活用している1つだ。

「デジタルによってスノーリゾートの体験は変わる」と積極的なデジタル投資を行っている同社のデジタルマーケティング担当副社長、トレイシー・チャン氏は、Apple Watchアプリの活用に期待を寄せる。

「いま我々は、リゾートにイノベーションをもたらそうとしている。再生可能エネルギー100%化とともに、アプリの活用はその戦略の中核にあります。今自分がどこにいて、次にどこに行けば良いのか、といったナビゲーション機能に加え、天候や雪質などのコンディションと安全対策、グループ間のコミュニケーション、そしてスキー場全体のリーダーボード機能などを提供し、ゲレンデでの体験を共有し、再訪したくなるような楽しい場所へと変えています」

ゲレンデでの体験が完全に変わった

GPSを内蔵したApple Watch Series 3は、前述のようにスキーのワークアウトによる消費カロリーの記録や速度・距離の計測だけでなく、今自分がどのリフトに乗っていて、どのくらいの位置にいるという情報や、自分がどんなレベルのゲレンデのどのあたりにいる、といった情報を手首で確認できる。


1時間弱の滑走で消費した熱量は226キロカロリーだった(写真:iPhone画面をキャプチャ)

例えば別々にすべっていた友人と合流したいとき、初めて訪れた場所でも自分のいる場所を電話やメッセージで伝える事ができるし、アプリであらかじめ友人を登録しておけば、スキー場のマップの上に友人がどこにいるのかをリアルタイムで表示できる仕組みだ。

前述のSlopeは、GPSの位置情報からスキーリゾートの名前は特定してくれるが、リフトの名前やゲレンデの位置までは表示してくれない。リゾート専用アプリならではの機能は、そのリゾートのホスピタリティをデジタルから実現していた。

ちなみに、SlopeにしてもSquaw Valleyにしても、滑走の記録はiPhoneの「ヘルスケア」アプリや「アクティビティ」アプリに記録され、その日のワークアウトとして、消費カロリーやエクササイズの時間として記録してくれる。

筆者が実際にSquaw Valleyで計測した1時間弱の滑走で消費した熱量は226キロカロリーと意外に多かった。良いエクササイズになっていたようで、10年ぶりにやったスキーだけに筋肉痛にならないようケアしておかなければならなそうだ。

今年は引き続き、寒波に見舞われている日本。みなさんもゲレンデに出かけて、Apple Watchを活用しながらアクティブに冬を楽しんでみてはいかがだろうか。