積水ハウスの役員人事が波紋を呼んでいる。1月24日の取締役会で和田勇前会長が提示した阿部社長の退任案が、賛否同数により流れとなり、逆に和田会長の解任動議が提案された。和田氏本人を除く出席者10名のうち賛成が6名、反対が4名になり、和田氏は辞任せざるを得なくなった。

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 会長と社長が真正面から激突する伏線となった事件は、昨年発生した。複雑な事件を敢えて簡記すると、所有権者に成りすました「地面師」(注1)に、積水ハウスがまんまと騙されて、63億円を詐取されたというものだ。

 不動産取引のプロである筈の積水ハウスが、「地面師」にあっさりと騙されて大金を詐取されるという、理解し難い話であるが、詐欺事件の調査報告書の内容を点検してみる。

 報告書によると、積水ハウスは17年3月下旬に土地売却の情報をキャッチし、4月20日に中間業者を挟んだ売買契約締結に関する社内稟議を決裁した。(1) 5月上旬になって、本物の土地所有者を自称するものから、「売買契約はしていない」趣旨の内容証明郵便が届いた。「別人との取引で偽造されている」という内容の文面も届いた。(2) 6月1日、積水ハウスの担当者が建物に立ち入ろうとした際に、何者かに通報されて駆け付けた警察官に、任意同行を求められるという事態が発生していた。

 (1)の事例の際に、積水ハウスの関係者は「怪文書」とみなし、再調査を行なう等の対応を取っていないか、再調査に疎漏があった。(2)の事例の際にも、「取引を妨害しようとする人たちの仕業」と判断して、契約を続行したという。

 どんな業界の人でも、(1)や(2)の様な事例に直面した場合には、相当慎重な確認作業を行うだろう。組織人として当然行われるべき再確認がなぜ、今回徹底されなかったのか?百戦錬磨の不動産取引のプロである積水ハウスは、多様な事例に対応するノウハウの蓄積があったのではないか?

 公表された上記経緯だけで判断することには無理があるが、高額な不動産取引には、様々な妨害行為が付きものだ。(1)も(2)も「地面師」グループが関わるある種の自作自演で、積水ハウスの判断を過ちに誘導したのであれば、推理小説のような筋書きすら感じてしまう。不動産取引というのは、百鬼夜行のような、おどろおどろしいものの様である。

 会長の交代が円満ではなかったことが判明した2月19日に、和田元会長は日経新聞の取材に応じている。取材を受ける態度はともかく、主張している内容は如何にも未練がましい。阿部会長はその時点で「時間が取れない」として取材に応じていない。対照的なご両者である。情報開示や企業統治に課題があるとの指摘を、積水ハウスの職員はどう受け止めたであろうか?

 (注1)地面師とは「他人の土地を自分のもののように偽って第三者に売り渡す詐欺師」(大辞林)